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【東京】

地域猫と歩んで10年 草分けの台東区に「最優秀」

地域猫活動について説明する高松係長=台東保健所で

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 野良猫を増やさず、「一代限りの命」を大切に見守っていこうという、住民らが共同で世話をする「地域猫」の活動を支援する自治体が増えている。その草分けの一つとされる台東区が、繁華街などでの十年以上にわたる活動が評価され、全国の自治体で働く獣医師の研究発表大会で「最優秀」に選ばれた。 (神谷円香)

 九月に都内で開かれた「全国公衆衛生獣医師協議会全国大会」で、行政が地元住民と温かい関係を築いた成功例であり、他の地域に取り組みが広がる後押しになると評価。十九組の中から選ばれた。

 同区では従来、上野・アメ横など飲食店が多い繁華街でネズミ対策として猫を放し飼いにする人が多かった。ふん尿や鳴き声への苦情が絶えなかったことから二〇〇五年度、台東保健所と住民で猫と人が共存できる対策を話し合う会議を始めた。

 当時から携わる獣医師の高松純子・同保健所生活衛生課係長は「猫を嫌がる人は苦情を言う。かわいがる人は動物愛護を唱える。双方の考えが衝突していた」と振り返る。

ボランティアが与えたエサを食べる地域猫(台東区提供)

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 初めの三年間は、一つ一つの店を訪れ、地域猫の考え方を説明して回った。〇八年度からは去勢手術に五千円、不妊手術に一万円を助成する制度と、猫の世話をする地域猫ボランティアの登録を始めた。

 商店街の目立たない植え込みなどにトイレを置いて、ふん尿の掃除はエサをあげる人が責任を持ってする。猫が街で暮らすことへの区民の理解が進み、苦情は減っていった。

 ボランティアは現在三百人以上。エサ代はすべてボランティアの負担でまかなっている。助成金を使って去勢・不妊手術した猫も昨年度までに三千百三十匹に上り、野良猫の数は大きく減ったとみられる。

 高松さんは「一度外を知った野良猫を家で飼うのは難しい。今いる猫は地域猫として見守り、少しでも不幸になる命を減らしたい」と話している。

 

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