ヤクルトの黄金時代を支えた古田敦也元監督(51)と、本紙スポーツ欄「悠々球論」でおなじみの野球評論家、権藤博さん(77)が対談、国際試合の戦い方などをテーマに話し合った。「侍ジャパン」の投手コーチとして、来年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた強化試合(11月10日から4試合)に臨む権藤さんに、古田さんが伝えた国際試合ならではの怖さとは……。
権藤 オリンピックとかアマチュア時代から出ているけど、緊張した?
古田 めちゃくちゃ緊張しましたね。自分が出たゲームでいうと、オリンピック(1988年ソウル大会)が最初で、そのあと99年、シドニー五輪の予選を兼ねたアジア選手権に出たんですけど、めっちゃ緊張しました。負けたら出られないって話ですから。
司会 予選も含めシドニー五輪からプロ選手の出場が解禁になりました。
古田 解禁といっても、アジア選手権は全員プロというわけではなくて、僕と松中(信彦さん=当時ダイエー)と松坂大輔(現ソフトバンク、当時西武)たちですね。助っ人みたいな感じで。
司会 古田さんらプロが出て負けるわけにはいかない。大変なプレッシャーだったでしょう。
■もうバクバクして、困ったな
古田 これで負けたらしょうがない、という気持ちではやっているんですけど……。国際試合というのは球場が静かで、これが一番困るんですね。プロ野球選手ってにぎやかな野球に慣れているでしょう。つねに応援歌が流れて「かっ飛ばせー」とか、声援もすごい。そのなかで僕ら選手はリズムをとっていく、ということがあるんですけど、国際大会って静かなんです。どんなサイン出そうかなんて迷ってるときに、何が聞こえてくるかというと、自分の心音なんですよ。もうバクバクして、困ったな、緊張するなあ、みたいな。
権藤 ふふふ。
司会 レギュラーシーズンや日本シリーズなどとは違う緊張があるということですね。
古田 日本シリーズも特に1戦目は勝つと負けるじゃ大きな違いですから、緊張しますけどね。
権藤 日本シリーズはリーグ制覇のご褒美みたいなものだけど、WBCなんかの一発勝負は負けたら終わりだからねえ。だから日本代表のコーチを引き受けるときはどうしようかと思ったもんね。おれが投げるわけじゃないけどさ。いつも腹はくくってるけど、12球団から12、13人、すごい投手ばっかり呼んできて、もしもということになったら、腹のくくりようがない、とも思っているんだよ。いい投手ばっかりでしょう。そこはもう普通にやったら負けるわけがない、と思ってやるしかないけどね。
古田 僕らの感覚ではやはり日本は強いです。だけどよそも強い。前回はプエルトリコに負けちゃいましたし、ドミニカ共和国に本気を出されたら簡単には勝てない。それと米国も。アジアなら勝てますけど、そこから先はこっちもうまいこといかないと、勝てないです。負けたときの責任を負うのが監督、コーチの仕事なんで。まあ、矢も飛んできますけどね。それはもうこっちが受け止めるから、選手はやってくれ。というだけでしょう。
司会 来年のWBCに向けた強化試合として11月10日から、メキシコ、オランダと4試合が組まれています。権藤さんも始動ですね。