組織は「愛情」の力で強化できるのか

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愛と仕事は、人生の多くを占める。しかしながら、職場で最も語られないことの1つが愛情である。両者を別々に考えるのではなく、「職場・ビジネスにおける愛情」を実践しよう、と本記事は提唱する。


 トルストイはこう断言した。「働き方と愛し方を知る者は、豊かな人生を送ることができる」。フロイトは言った。「愛と仕事……仕事と愛。それが人生のすべてだ」と。

 愛と仕事。

 トルストイとフロイトは、人間にはその両方が必要だと指摘している。しかし私は、その両方が「同時に」必要だと考えている。

 何世紀にもわたり、愛情の力や価値については、ビジネスの文脈の外で語られてきた。たいていの宗教や精神文化には、愛情に関する強い言及がある。心理学者は愛情を人類の繁栄に必要不可欠なものとして奨励し、芸術家と哲学者はその奥深さを探求する。

 それを踏まえ、私はある疑問を提起したい。地球上のほぼすべての人々が、人生のどこかの時点で、愛情は幸福の要であると語る。ならば、それを仕事という文脈において聞くことが滅多にないのはなぜだろうか。愛情は世界共通の「善」にもかかわらず、起きている時間のほとんどを過ごす職場には、なぜか「ふさわしくない」と誰もが合意しているかのようだ。

 これは、実におかしな状況ではないだろうか。そこで私は、コンサルタントのリンダ・ロブソンとともに、この現象について研究してきた。

 幸いなことに、組織における愛情の欠如はそれほどひどいわけではない。

 愛情について明確に言及している有名企業の例として、ホールフーズがある。創業者のジョン・マッキーは著書『世界でいちばん大切にしたい会社』の中で、愛情について丸ごと1章を割いて語っている。サウスウエスト航空も同様だ。同社のニューヨーク証券取引所の銘柄コードはLUV=Loveを指している。

 リーダーシップに関する著述はどうだろうか。最も広く読まれている指南書の1つ『リーダーシップ・チャレンジ』(ジェームズ・クーゼスとバリー・ポズナーの共著)は、次のように結論づけている。愛情は「人生の秘訣」であり、卓越したリーダーシップのための「最も知られていない秘訣だ」。高名なリーダーによる著書にも、ビジネスにおける愛情を提唱するものがある。慈善起業家ジョン・ホープ・ブライアントのLove Leadership、テーマパーク運営企業ハーシェンド・ファミリー・エンタテインメントの元CEOジョエル・マンビーによるLove Worksなどだ。

 ペンシルバニア大学のシーガル・バーセイドとジョージメイソン大学のオリビア・オニールによる組織研究では、「友愛の文化」は仕事の満足度、チームワーク、顧客満足度の向上と相関することが示されている(本誌2016年7月号「組織に必要な感情のマネジメント」を参照)。

 このように蓄積されゆく知見に加え、組織における愛情に関する我々の調査結果と提案も、以下に示したい。これらは金融サービス企業から非営利組織、優勝経験を持つスポーツチームまでを含む数々の組織における、さまざまなランクの幹部を対象に実施した研究に基づいている。

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