【10月5日 AFP】男子テニスのアンディ・マレー(Andy Murray、英国)は4日、禁止薬物「メルドニウム(Meldonium)」の対応を誤り、多くのアスリートが処分を逃れることになったとして、世界反ドーピング機関(WADA)を批判した。

 WADAが定める禁止薬物のリストにメルドニウムが今年1月に追加されて以来、四大大会(グランドスラム)通算5勝を誇るマリア・シャラポワ(Maria Sharapova、ロシア)を筆頭とする多くのアスリートから同薬の陽性反応が出ていた。

 しかし、4月にWADAはメルドニウムが体内に残る期間が正確に特定できないと発表。この結果、グレーゾーンが拡大し、禁止薬物に指定された2016年に同薬物を摂取したことが判明している選手であっても、処分を逃れるケースが続出した。

 シャラポワは4日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てが認められ、2年間の資格停止処分が15か月に短縮された。シャラポワに対するCASの裁定が発表される前、マレーは「処分が短縮されても理解できる。メルドニウムについてWADAがいくつか決定的なミスを犯したので、難しい状況になったのだと思う」と見解を示していた。

「多くのアスリートが無罪放免となった。その薬物が体内にどのくらいの期間残留するのかをWADAが特定しなかったからだ」

 薬物違反に対して厳しい姿勢をみせているマレーは、シャラポワを擁護している自身のメインスポンサーの一つ、ラケットメーカーのヘッド(HEAD)社を批判している。今年1月に行われた全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2016)のドーピング検査でメルドニウムに陽性反応を示したシャラポワは、禁止薬物に指定されたあとの大会期間中に同薬物を摂取していたことを認めた。

 心臓疾患の治療に用いられるメルドニウムは、摂取すると血流が増加することにより運動能力を向上させる可能性がある。

 女子テニスのバーバラ・レプチェンコ(Varvara Lepchenko、米国)は、メルドニウムに陽性反応を示したものの、禁止薬物に指定される以前に摂取したものだったとして、9月に出場停止処分が解除されている。

 女子競泳のユリア・エフィモワ(Yulia Efimova)は今年3月、メルドニウムの陽性反応により国際水泳連盟(FINA)から暫定的な処分を科された。過去に2度の薬物違反が発覚しているエフィモワは、暫定ながらも永久追放の処分が科されていたが、メルドニウムの体内残留期間が正確に特定できないとWADAが発表したことを受け、FINAは処分を撤回している。(c)AFP