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【社会】

新「共謀罪」消えぬ懸念 「考えを処罰」の本質変わらず

 六百を超える犯罪の計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、政府は今の臨時国会への提出は見送ったものの、来年の通常国会への提出を目指している。提出に反対する集会が九月下旬、東京都内で相次いで開かれた。政府はテロ対策を強調する名称変更などを検討中だが、共謀罪に詳しい弁護士らは「心の中で考えたことを処罰するという本質は変わらない」などと強く批判している。 (西田義洋)

 二十六日に東京・永田町の衆院第一議員会館であった市民団体主催の集会には二百九十人、二十九日に東京・霞が関の弁護士会館であった日弁連主催の集会には二百人超が参加した。

 政府が提出を検討中の法案は、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更し、対象集団を政府が二〇〇三年に提出した法案の「団体」から、重大犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」に限定。犯罪の計画を話し合うだけでなく、現金自動預払機(ATM)から資金を下ろすなどの準備行為が必要などとしている。

 これに対し、日弁連共謀罪法案対策本部事務局長の山下幸夫弁護士は二十九日の集会で「共謀を計画に変えるようだが、話し合って合意するという本質は同じ。組織的犯罪集団も準備行為も警察がいかようにも解釈できる」と説明した。

 現在は「悪い考え」ではなく、「悪い行為」を罰するのが基本原則だが、重大犯罪は例外として、未遂よりも前の予備や共謀の段階で処罰できる。副本部長の海渡(かいど)雄一弁護士は「広範な共謀罪ができると、心の中で考えたことに誰かが合意すれば犯罪が成立してしまう」と述べ、原則と例外が大きく転換することに懸念を示した。その上で「国連からテロ対策として求められている措置はほぼすべて取られている。共謀罪を新たにつくる必要はない」と訴えた。

<共謀罪> 複数の人が犯罪を行うことを話し合って合意(共謀)しただけで罪に問えるようにする犯罪。犯罪行為は通常、具体的な被害が生じたり、犯罪行為に着手して危険が生じたりすることで罪に問われる。政府が過去に提出した関連法案では、4年以上の懲役・禁錮の刑になる犯罪を対象とし、殺人や強盗、盗み、傷害、詐欺なども含め対象犯罪は600超。政府は国連の国際組織犯罪防止条約批准のため、共謀罪などの国内法整備が不可欠としている。

(東京新聞)

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