ニュース

ワイヤレスゲート、「LTE over Wi-Fi」でIoT向け通信サービス

ワイヤレスゲート代表取締役の池田武弘氏(中央)と、モバイル・インターネットキャピタル代表取締役社長の山中卓氏

 ワイヤレスゲートとモバイル・インターネットキャピタルは、工場や病院、物流など業務・産業用途のIoT向け通信プラットフォームを提供する新会社「LTE-X(エルティーイー・エックス)」を設立した。2017年にも商用サービスを提供する。

LTE over Wi-Fiで閉域の独自ネットワークを構築

 LTE-Xでは、ワイヤレスゲートが出資するnCore(エヌコア) Communicationsの技術「LTE over Wi-Fi」を用いて、Wi-FiアクセスポイントをLTE基地局のように動作させる。Wi-Fiの物理的な無線通信の上に、LTEのプロトコルによる通信を仮想的に動作させるような形で、ワイヤレスゲートでは「LTEトネリング(tunneling)」と呼ぶ。独自のSIMカードを発行し、SIMカードを搭載するカメラやセンサーなどをWi-Fiアクセスポイントのエリア内に設置すれば、SIMの情報を使った認証など、Wi-FiでVPNを用いるよりも手軽かつセキュアな通信環境を実現できる。またWi-Fiアクセスポイントも安価で、エリア整備にかかるコストも抑えられる。その一方で、LTEのQoS(品質制御)により、機器ごとの通信速度のコントロールもしやすい。

 カメラなどのクライアント機器は今後登場する予定だが、ワイヤレスゲートの構築するネットワークは閉ざされたもので、クライアント機器はWi-Fiアクセスポイントに繋がると、そのままワイヤレスゲートのネットワーク設備に収容され、大手キャリアの設備には繋がらない。すでにワイヤレスゲートでは、L2接続のMVNOサービスを手がけており、自社でネットワーク設備を保有、運営していることから、そのノウハウを活用する。

 Wi-Fiアクセスポイントには、nCore製のエージェントソフトウェアをインストールする必要がある。

 このためWi-Fiアクセスポイントの電波が届く範囲のみがサービスエリアとなり、まずは工場や病院など屋内での用途がメインになる。車両運行管理などモビリティが求められるソリューションを実現するには大手キャリアとの相互接続が必要とのことで、今後検討される。

Wi-FiとLTEのいいとこ取り

 新会社のLTE-Xには、ワイヤレスゲートが51%、モバイル・インターネットキャピタルが49%を出資。資本金は2.5億円まで拡大する予定で、この資本金で新事業の投資をまかなう。ワイヤレスゲートの事業ではなく新会社として展開することで、パートナー企業の参画を募っていく方針であり、社長もあわせて公募する。

池田氏

 ワイヤレスゲート代表取締役CEOの池田武弘氏は、子会社を通じたIoTプラットフォームへの参入になると説明。これまで公衆無線LANサービスやMVNO型のモバイルインターネット事業を手がけてきた同社にとって、伸びしろのあるIoT分野に、他にはない付加価値を持ったサービスとして参入できるとアピールする。IoTとしては、容量が小さく、速度もさほど求められない通信サービスが想定されてきたが、映像の伝送などで大容量・高速なサービスへのニーズもあり、高速大容量で、より安価なサービスを実現することで、MVNOによるIoT向けサービス、あるいは大手キャリアのサービスに対抗していく考え。

 池田氏は、Wi-Fiのセキュリティ面での具体的なトラブル事例として、ネット上のWebカメラが誰にでも閲覧できるというケースを紹介し、LTE over Wi-Fiによって、Wi-Fiのセキュリティ問題を解決したいと意気込む。またコスト面でもメリットがあり、もしモバイル通信(速度3Mbps)で24時間、監視カメラを利用できるようにする場合、大手キャリアの料金は月額95万円になるが、同社ではその1/10程度の価格を目指すとした。

 ソリューションパートナーとしてNECネッツエスアイ、デバイスパートナーとしてharaproが参加する。またマイクロソフトのAzure IoT Suite、IBMのWatson IoT向けの通信プラットフォームのひとつとして利用される。

 モバイル・インターネットキャピタルの代表取締役社長である山中卓氏は、5年前、ワイヤレスゲートに出資し、その後、ワイヤレスゲートが上場したという経緯を紹介。ユニークな技術を結集して成功に結びつけたいと語る。