切りつけ事件を受けて男性利用者に手荷物検査を実施する警察

写真拡大

 1日1万5000人が訪れる東京・あきる野市のレジャー施設「東京サマーランド」で21日午後、若い女性8人がプールの中で切り付けられる連続傷害事件が発生した。犯人は午後1時、同2時の2回、犯行に及んだとみられるが、逃走中。親子連れやカップルでにぎわう夏休み中の憩いの空間に激震が走ったが、一度目の被害の後、営業を続けた同ランドの対応に批判が上がっている。

 事件は、1時間に1回3分間ほど高さ70センチの波が出現するプール「コバルトビーチ」の中で発生した。東京サマーランドの名物ともいえる人気のプールで、発生時は「身動きが取れないくらいの人がプールにいた」(利用者)という。

 午後1時からの回で2人、午後2時からの回で6人の18〜24歳の女性ばかり計8人が、水着の上から何者かに尻や下腹部をカミソリのようなもので切り付けられる無差別事件となった。中には10センチ超の傷を負った被害者もいたがいずれも軽傷。

 被害女性を目撃した利用客は「お尻を押さえて血がポタポタと垂れていたので最初、生理になってしまったのかと思ったが、同じようにお尻から血を流している子がもう一人いて、何かあったんだと思った。救護室に血だまりができていた」と語る。被害女性を2人見かけた別の客は「一人は目に涙をため、もう一人は『爪でひっかかれたと思ったら水着も切られてるし、血出てるし』と言っていた」という。

 1時の回で被害が発覚したにもかかわらず、2時の回も続行し、結果的に6人もの被害が出た。利用客は「3時の回から中止になったが、多くの人が中止を知らず、波を待っていて、5分前になって中止のアナウンスが流れた。待ってる人たちを警官が離れた場所から撮影していたので、犯人が紛れている可能性を探っていたのでは」と推測する。

 プールを出る利用客の手荷物検査を開始したのは2件目の発生から30分後の午後2時半ごろだった。「女性や子供、家族連れは免除されて、男だけ荷物の中身を全部出してポケットの中まで体をまさぐられて調べられた」(男性客)。入場時にも持ち込み禁止のビン、缶、危険物を所持していないか目視でチェックしているが、刃物の持ち込みを許してしまった。

 利用客に事件を周知せず、営業を続けた同ランドの対応には批判が上がった。利用客らは口を揃えて「親や友人から安否確認の電話やメールが来て事件を知った」「警察がプールサイドで聞き込んでいたけど痴漢だと思った」と、誰一人、館内放送で事件を知った人がいなかったのだ。

 運営会社は「あらぬ不安をあおって大混乱が起きると二次被害につながりかねず、警察と相談し営業を続けた」と説明。だが、犯人がサマーランド内に潜んでいないとも限らない中、最善策だったかは疑わしい。同社によると、これまでに事件を予告するような脅迫電話やメールは来ていないという。

 夏の楽しい思い出の場所での凶行は許されないが、危機管理が改めて問われそうだ。