2015年4月14日(火)

はさき漁協・外国人実習生 受け入れ定着の試金石

将来の人材不足に対応 環境整備、実績づくり

日本語講習に取り組む実習生たち=神栖市波崎
日本語講習に取り組む実習生たち=神栖市波崎

はさき漁協(神栖市波崎、石田洋一代表理事組合長)が4月から、県内で初めて受け入れた外国人漁業技能実習生の研修を進めている。実習生はインドネシアの16人で、6月から始まる漁船での漁業実習に向けて日本語講習に励んでいる。農業などで外国人実習生の受け入れが定着する中、同漁協も将来的な人材不足が見込まれることなどから、初の受け入れに踏み切った。「選ばれる地域を目指す」と、受け入れ環境の充実を図る構えで、今回の実績が今後の受け入れ拡大に向けた試金石にもなりそうだ。 (鹿嶋支社・三次豪)


はさき漁協によると、実習生は、水産高校や水産専門学校の卒業生で、面接試験に合格して来日した。母国でも約5カ月間の厳しい日本語講習を受けてきたため、簡単な文法などはお手の物という。

実習生が日本語講習を受ける教室には、元気な声が響く。「『日本へ行きます』と『日本に行きます』の違いは何ですか?」。微妙な助詞の使い方に踏み込んだ質問も飛び出す。講師を務める神栖市国際交流協会のメンバーは、間を取りながらゆっくりと質問に応じ、冗談も交えて和やかな雰囲気で講習が進む。

同漁協総務次長の宮本聡さんは「話す方はまだまだだが、聞き取る力は予想以上。若いからどんどん吸収する」と評価する。

実習期間は3年間で、最初の2カ月間の座学のうち、日本語講習が約1カ月、残りは漁業の知識や安全の講習のほか、銀行員から送金の仕方の講習などを受ける予定。

■選ばれる地域に
現在、外国人技能実習制度は全国に広まり、農業や製造業など幅広い分野で、受け入れ側の人手不足を補う仕組みとしても定着している。このうち県内の実習生受け入れは約7千人で、国内有数とされる。今回、漁業実習生の受け入れは県内初となったが、同漁協も受け入れの理由に「将来的な人材不足への対応」を挙げる。

一方で、実習生をめぐっては、賃金の問題や仲間同士のトラブル、受け入れ先からの失踪など、さまざまな問題も露呈している。

宮本さんは「5年後、10年後に『波崎に行きたい』と指名してもらえるようになるのが目標。実習生とのウィンウィンの関係をつくり『はさきスタイル』を構築したい」と、より充実した受け入れ環境を目指す。

■自炊に四苦八苦
漁業実習生は、波崎漁港そばの鉄骨2階建て宿舎で寝泊まりする。宿舎は、漁業会社など実習実施機関6機関の出資で総工費約1億3千万円かけて整備した。最大76人収容できる。

午前5時半に起床し、午後10時に消灯。2段ベッドが並ぶ4〜8人部屋に分かれて共同生活する。食費や光熱費、宿泊費は全て実習実施機関が負担する。実習生には初年度、手取りで月約10万円を支給する。

食事は自炊が基本といい、自炊に慣れていない実習生も多い。宮本さんは「インドネシアは外食文化で、特に都市部出身者は自炊に慣れていない。なぜか鶏の空揚げばかり作っている」といい、今後は料理講習などを取り入れて、実習生の健康管理に配慮する方針という。

■実習生の声 日本企業に勤めたい
実習生の一人、エドウィン・ウィチャクサナさん(18)はジャワ島出身で、水産専門学校を卒業した。親元を離れ、初めて踏んだ海外の地だが「さみしくない。友達がたくさんいるから」と笑顔で話す。「最初は日本人の皆さんと仲良くやれるか不安だったが、日本語の先生が優しいので不安がなくなってきた」といい、「実習が終わったらインドネシアで日本語の大学に入りたい。日本に来て、日本の文化をもっと知りたくなってきた。将来は日本の企業に勤めたい」と意気込む。

2016 年
 4 月 5 日 (火)

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