<水木先生への質問と回答>

質問1いがらし先生は本当に水木先生を原作者と認めていないのか?それはいつからか?
質問2いがらし先生は、なぜ今になって漫画「キャンディキャンディ」はご自分ひとりだけの権利と主張されるのですか?
質問3漫画『キャンディ』のキャラクターをいつ、どこで、だれが描いたとしても、それが『キャンディ』に登場するキャラクターである以上、その絵はすべて漫画『キャンディキャンディ』を背景として描かれていると思うのですが、このことについて、いがらし先生はどのように思われますか?(一般的に、原作者の<絵>の権利がその漫画本の中に記載されている<絵>だけにあるとはとても思えないのですが)
質問4キャンディキャンディを今後どうするつもりで裁判を続けておられるのか?
質問9いがらし先生・水木先生は、<お二人の「キャンディキャンディ」>として後世に残すつもりはないのですか?


*質問1.2.3について
*質問4と質問9は関連があるので、まとめてお答えします。
「創作者」であるからには、自分の作品が<後世>に残ってほしい、読み継がれてほしいという気持ちを持たない人はいないと思います。
しかし、悲しいことにこれだけはいくら作者が後世に残したいとがんばっても、どうしようもありません。残る作品を選ぶのは多くの人の愛を得た<選ばれた作品>と思います。
キャンディのように読者の間から、そのような声が聞こえてきたとしたら・・・それだけで作者冥利に尽きる、というもので感謝の気持ちで一杯です。

キャンディについては<昔のファンが大人になったな>と感慨にふけることはあってもそのこととビジネスは結びつきませんでした。わたしはいがらしさんほど商売にたけていないのでこちらから<売り込む>という発想はありませんでした。キャンディを今後どうしたいか・・・という点をふくめ、いがらしさんにもしファンの声が届いていたなら教えてくだされば、一緒に考えたでしょう。私は読者と接することも漫画家より少なく<ファンの声>もなかなか聞こえてきません。(わたしと接してきた読者は物語を深く読み込み、お手紙をくれる少数派で<グッズをつくってほしい>といったタイプではなかったので。むろん、そういったお願いなどは漫画家にいくでしょうが)

私の<キャンディ>に対する確信のような思いは<求められている良い作品なら、きっとまた風がふいてキャンディは舞い上がる>というものでした。事実、「なかよし」が<るんるん>の付録にしてくれたり、少しずつ取り上げられるようになってきていたところでした。
確かに<仕掛けること>も大切でしょう。
しかし、今回のことで<自然に流れるはずだった風>がとまり、澱(よど)んでしまったと私は思っています。
キャンディの今後については・・・・
まったく解りません。この裁判が長引けば、東映アニメもあきらめ、ファンのひとたちも引いてしまうかもしれません。事件はもっと多くの人に知られる所となり、これは東映サイドの言葉ですが「ダーティーイメージがついたキャンディのスポンサーを探すのがたいへんになり、再放送なども難しくなってくる」

しかし、今ならまだ・・・・・間に合うと思っています。高裁の結果がでたあと、いがらしさんが非を認め<キャンディを生かす>話し合いに応じたら・・・・・

キャンディを今後どうしたくて裁判をつづけているのか・・・
わたしには答えようのない質問です。
著作権がない、といわれつづけているわたしには<キャンディの今後についても口出しする権利はない>といわれてるのと同じことです。
まず、権利を(元の通り)回復して、不正を正し、いがらしさんが<今後何をしたいのか>話しあうだけです。
いがらしさんが話し合いに応じれば、ですが・・・・


質問10
両先生は、なぜ「講談社」との契約を解除されたのでしょうか?(それまでずっと講談社だったのになぜかと思いまして)

質問10
水木杏子HP<陳述書T 今までのこと>にくわしくそのいきさつを書いています。わたしとしては講談社との契約を個人的に残すこともできたのに・・・と、今はっきりいって残念ながらいがらしさんの<計画>に陥ってしまった、と判断しています。


質問11質問というよりもお願いになると思うのですが、いがらし先生・水木先生のお考えになる「事実」と「事実と異なる憶測・誹謗中傷など」の違いを教えていただけないでしょうか?

質問11
<事実>は言葉とおりです。自信を持って答えられること。証拠もあり、証人もいる・・・憶測は想像がまじります。事実はなかなか認証できません。この世の多くの事件が憶測をもって語られていると思います。新聞もニュースも<事実>が形として見えない以上、有識者の憶測にたよることになります。そこから真実を見抜ける人がわたしは<本物の目>を持つ人と思いあこがれます。
<誹謗中傷>は<事実>(証拠にそったこと)なら、誹謗ではなく<ほんとうのこと>なのでしかたがありません。しかし、どんな酷いことをしたひとにも尊厳はあり事実であっても<礼儀>は大切で、<いってはいけないこと>もあると思っています。


質問12いがらし先生、水木先生にとって漫画「キャンディキャンディ」とは何ですか?

質問12
青春時代の思い出がこもっている大切な作品です。キャンディはいろいろなものをわたしたちにくれた娘でもあり、恩人でもあります。


質問13プリクラの件があきらかになったばかりの頃、お二人は直接お話される機会がありましたか? また話し合いに応じなかった事実はありますか?

質問13
これも私の陳述書をお読みください。
それに書いていないこととしては、プリクラ事件のとき漫画家の先生が間に入ってくださいましたが、話し合うことはいがらしさんに拒否されました。(いがらしさんは反対のことをいっていますが)

いがらしさんの擁護派たちは<なんで水木は自分で話し合いにいかなかったか>と責められそうですね。乗り込んででもいくべきだった、と。
しかし、HPに書いたとおりそれ以前から不信感が芽生えていたのです。特に夫は大変疑っていました。
プリクラの件でわたしがひどく怒ったとき・・・わたしにとっての最後の賭けは・・・(いがらしさんにやましい所がなかったら、いつものように<らとちゃん、なに誤解してんのよ>)と電話してくると思っていました。
とうとうありませんでした。


質問14<著作物>に関わる「同人誌」「インターネット」のファン活動を両先生方はどのようにお考えになりますか?

質問14
作品を愛してくださるのは作者としてうれしいことです。
「同人誌」など個人の趣味の範囲なら問題はないようですが、それが本当に趣味なのか<趣味を装った営利目的>なのか境目がわからず、今法的にも問題になりつつあるそうです。わたしとしては個人的には<コミケ>での販売くらいなら、大目にみたいなと(作品のイメージを壊さないものなら)思っています。


質問15水木先生にお聴きします。原作つき漫画の「漫画家」について、どのように思われますか?

質問15
オリジナルであろうと原作がついていようと、「その作品を書きたい」と情熱をもやし、描くのならば愛着は同じでしょう。<原作を生かすこと>もすばらしい才能だと思ってきました。すてきそうな物語をオリジナルで描いても漫画としていかされていなくて(構成力の拙さで)もったいないと思える作品もあります。


質問17この裁判以前、お二人の原稿料(他、すべてのギャランティを含む)の比率に関して不満をお感じになったことはありますか?

質問17
ありません。6(いがらし)対4(水木)でずっと納得していました。
(何万部以上売れたら)5対5との約束事もありましたが、いがらしさんには人件費がかかるということで受け入れていました。
しかし、最近、井沢先生と話し合うようになって初めてその言い分に疑問を感じています。(中公文庫はいがらしさんの申し出により5対5になりましたがそれを一審で無理矢理その配分にしろといわれて、と言ってきたので名誉のため文庫の契約を解除しました)
また、いがらしさんが違反した契約書では印税は5対5になっていますが、わたしにとっては4でも5でも今更こだわりはありません。
いがらしさんと親しいマンガジャパンの弁護士が作ったのでそのままにしているだけです。しかし、いがらしさんのプロダクションに勝手に窓口手数料を20%取られていたことに対しては納得がいきませんね。



質問18 両先生にお聴きします。
いがらし先生も水木先生のどちらも関知なさっていない「キャンディグッズ」の<海賊版>に対してどのような処置をとるべきか、そこまでのことをお考えになっているのでしょうか?

質問18
大変困ったことと思いますが版元を離れたらどうしようもありません。そういったことをとりしまるのも版元の仕事です。
現在、<海賊版>よりわたしはいがらしさんが不正に出したグッズのほうが問題です。


質問19プリクラの件以前にお二人の話し合いの中で、キャンディグッズについてのご意見の違いはあったのでしょうか?

質問19
この件についてお答えする前に、お話しておかなくてはならないのはHPを開いたときと今とではわたしの考えが違うということです。
以前は<私の二次使用の考え方がいがらしさんにちゃんと伝わっていなかったのが原
因かしら・・・誤解があったのでは・・.と省みていました。
しかし、井沢先生への10年以上におよぶ<やりたい放題の侵害行為>が発覚するにつれ、事は<二次使用の使い方の考えの違い>などではなく、何とか原作者を封じ込め自由にビジネスをしよう、というものだったとの判断に至りました。
近々、発表することになると思いますが、10年前、いがらしさんが勝手に契約したイタリア版ジョージィからは<原作井沢 満>の名前が消えていました。それは意図的であった、と思っています。
出版社は原作者の名前を削除してもなんの意味もありません。

むろん、そのようなこともいがらしさんだけの考えではない、と擁護派はいうでしょうね。
わたしも(そうかもしれない)とも思います。
しかし、わたしたちはもう大人です。よこしまな考えの人がどう甘い誘いをささやいても断る判断力はあるはずです。

当初は、いがらしさんと二次使用について考え方がそれほど違っているとは思っていませんでした。
確かに<ビジネスをしたい>といういがらしさんの気持ちがわたしよりずっと強いことは分かっていました。しかし、私にとっても<二次使用のビジネス>くらいありがたいことはありません。働き者の娘が<親孝行>してくれる、といった感覚です。だからこそ<イメージを壊されず、みんなが喜ぶものを>と思っていましたが、いがらしさんのビジネス構想(まだ、講談社が二次使用権をもっていて、どこからの申し入れもない時、キャンディの使い方、売り込み方などについていがらしさんが<こう使いたい>という考え)を聞いているうちに、わたしにとって<顰蹙(ひんしゅく)物では・・>という考え方があり「それ・・・はちょっと・・・賛成できない」とは何回かいいました。それを今、取り上げているような気がします。
(なにをいっても水木は<だめ>といった、と)
繰り返しますが<相談>されていないのに<断れる>はずがありません。
そして、もし<相談>されていたら、なんでいがらしさんの考えを無視してことわれるでしょう。
それができるのなら、<講談社の契約解除>も<文庫>も、断っています。
この件では仲介にはいってくださった方が何人かいます。
そのうちのお一人にもいがらしさんは例の「水木がなんでも断るから!」と言い募ったそうです。
その方が、「じゃあ<なにを><いつ><どんな理由>で断ったか?」と尋ねられたところ、結局何も答えず、
「なんでわたしが名木田さんの許可をいちいちもらわなきゃなんないのよ!」と激しくいわれたそうです。

わたしは今、それがいがらしさんの本心であろうか、と思っています。

いがらしさんがいつの頃からこれほどまでに原作者を無視する気持ちになったのか・・・
わたしにはわかりません。
今、思うことは<原作者の権利無視>の姿勢であるなら二次使用について原作者の考えなど何があっても聞く耳はなかった、と思っています。

最後に

・・・・・・・
まだ、伝わらないこともたくさんあるでしょうが、以上がわたしの回答です。
いがらしさんの擁護派のひとのなかには<漫画の絵は漫画家のものじゃないか>という考え、また<二次著作者という判決にいがらし先生は腹立てた>という人たちもいるでしょう。(そういうひとたちは20年間、水木が原作者として処遇されてきたことなど念頭にないようです。)
水木が<訴えた>ことだけで反感を持っているひと、またHPであそこまで公表しなくても、と考えている人・・・・など・・・・感じます。
なんとか私の立場をわかってほしい・・・と願ってきましたが擁護派の方たちが子供の頃からいがらしさんを慕っている気持ちも分かります。<現実>をみたくない、という気持ちも・・・・・わたしも同じでしたから。
わたしは当事者ですから、だんだん現実を見極めてきましたが、いがらしさんのファンのひとたちは認めたくないこともたくさんあるでしょう。
そういった人たちに水木の立場をわかってほしい・・・と願うのはもう、あきらめました。

私はこれから<自分の考え>に従って行動します。
譲歩できる点は考えますが、できないところは拒否します。
いがらしさんの擁護派にとっては不快であろうかとも思いますが、いつの日かこの事件を捉え、水木の気持ちを少しでもわかってくださったら・・・・と願っています。


水木杏子
99.11.20