「捜査機関や裁判所が反省して襟を正さなければ、また同じような冤罪事件が起こる」。

 約6年に及ぶ勾留・服役を経て再審無罪を言い渡された男性は16日の記者会見で、ずさんな捜査と裁判所の事実認定のあり方を改めて批判した。

 1審大阪地裁で、弁護側は「狭い家の中で、家族に気づかれることなく強姦することは不可能だ」と主張したが、判決では「14歳の少女がありもしない強姦被害をでっち上げることは考えにくい」と一蹴された。

 再審無罪の決め手の一つなった診療記録も、控訴審段階では検察側が「ない」と回答。弁護側が求めた関係者の証人尋問も裁判所に却下された。

 再審判決では、確定審での女性の被害証言を改めて検討。「強姦されて泣き叫んだ」とする内容について「周囲が気づかなかったのは不自然」と言及した。裁判長は「刑事裁判を担当する一人の裁判官として、被告人の言葉に真摯に耳を傾け、十分な審理を尽くしたい」と、反省とも取れるような言葉を口にした。

 弁護人を務めた後藤貞人弁護士は「裁判官に真実を見極める目はないとの前提に立ち、『私は無実』と訴える人の声に耳を傾けることが大事だ」と話した。