NHK経営委員に“お友達”ズラリ 安倍政権の露骨すぎる言論介入

 

「皆サマ」のNHKから「安倍サマ」のNHK

 

NHK会長の各種発言に対する政府の見解に関する質問主意書と答弁書

 

元委員が証言「NHK経営委はハイヤー付き追認機関」

 

NHK経営委員会議事録 放送法改正案

 

2015年

 

即刻辞任を強く求める要望書

 

会長のハイヤー代問題

 

最近のNHK会長

名前

前職

任期

島 桂次

NHK副会長

1989年4月〜1991年7月

川口 幹夫

NHK交響楽団理事長

1991年7月〜1997年7月

海老沢 勝二

NHK副会長

1997年7月〜2005年1月

橋本 元一

NHK技師長

2005年1月〜2008年1月

福地 茂雄

アサヒビール相談役

2008年1月〜2011年1月

松本 正之

JR東海副会長

2011年1月〜2014年1月

籾井 勝人

日本ユニシス特別顧問

2014年1月〜

 

(従軍慰安婦);「戦争をしているどこの国にもあった」(会長発言) / 3300人が「辞任を」

 

関連記事 / 論 説

 

 

 

 

「皆サマ」から「安倍サマ」のNHKにする気なのか。安倍政権が示したNHK経営委員の人事案には、首相の“お友達”がズラリ。経営委はNHKの最高意思決定機関で、会長の任命権など強い権限を持つ。来年1月に任期が切れる会長人事をにらみ、日本最大の放送機関を「安倍カラー」に染めようとする狙いはミエミエだ。秘密保護法案で国民の「知る権利」や「報道の自由」を奪おうとする中、安倍のさらなる露骨な言論介入は民主主義への挑戦である。

 

注;NHK=国内唯一の公共放送。1926年に社団法人日本放送協会として設立。放送法施行に伴い1950年、特殊法人となった。総務省(旧・郵政省)が所管。公式略称は(Nippon Housou Kyoukai)から「NHK(エヌエイチケイ)」と呼称される。外部の有識者らでつくる最高意思決定機関の経営委員会が、会長人事など重要事項を決定。日常業務は会長や理事が執行する。予算は国会の承認が必要。主な財源は受信料で、2010年度予算の事業収入約6786億円のうち約6550億円を占める。職員数は約1万500人。2014年度予算案と事業計画によれば、事業収入は前年度比150億円増の6629億円、事業支出は同60億円増の6539億円。受信料収入は同207億円増の6428億円。受信料値下げの影響を脱し、3年ぶりの黒字予算となった。90億円の黒字要因は、事業収入の97%を占める受信料収入が207億円増えるため。

 

<なぜ傍観しタレ流しているのか、この国の大新聞>

 

 NHKの経営委員は国会同意人事だ。衆参両院に提出された新任委員の顔ぶれは、JT顧問の本田勝彦氏(71)、哲学者の長谷川三千子氏(67)、小説家の百田尚樹氏(57)、海陽中等教育学校長の中島尚正氏(72)の4人。安倍とは全員親密な仲で、思想的にも極めて近い。よくもまあ、これだけ偏った考えの持ち主を集めたものだ。

 

 注;NHK経営委員会=放送法の規定で経営方針や毎年度の予算などの重要事項を決定するほか、会長や理事の任免も行うNHKの最高意思決定機関。委員は衆参本会議で同意を得て総理大臣が任命。12人で構成し、委員長は互選で選ばれます。任期は3年。

 

「本田氏は安倍支援の保守系財界人の集まり『四季の会』のメンバー。東大生の頃に小学3、4年生だった安倍氏の家庭教師を務めた。東大卒後に当時の日本専売公社に入社し、00年にJT初の生え抜き社長となり、06年まで務めました」(経済ジャーナリスト)

 

注;四季の会=「四季の会」は発足した葛西敬之・東海旅客鉄道(JR東海)会長が幹事役を務める財界人の集まり。葛西氏が東大法学部で机を並べ親友だった与謝野馨氏に「若手の有望株を呼んで勉強会をやろう」と持ちかけ、与謝野氏が当時、官房副長官だった安倍氏を引き合わせたのが始まり。当時、葛西氏が集めた人物は、次代の経済界を担う社長候補たち。東京電力の勝俣恒久氏、新日本製鐵(現・新日鐵住金)の三村明夫氏、三菱重工業の社長に就いたばかりの西岡喬氏など、財界本流の人々だった。前回、安倍氏が政権を投げ出した後も元首相を励まし続け、「再登板」を働きかけてきた。

 

 長谷川氏は「オンナは子を産み育てよ」がモットーで、少子化を口実に家父長制の復権を公然と唱える保守論客だ。

 

注;長谷川三千子(はせがわみちこ)=1946年〜。埼玉大学名誉教授、保守派の政治評論家。改憲・右翼政治団体「日本会議」代表委員。「わが国の憲法9条は、まさにそれを妨げるために占領者が与えたものであり、いまも日本はかつての戦勝国である米国に守ってもらって生き延びているのが現状」と論じる。また、日本会議機関誌『日本の息吹』2012年11月号で、安倍首相の自民党総裁再選(当時)を祝し、「戦後レジーム(体制)からの脱却」という首相の宿願にも触れ、「日本そのものを取り戻すための再挑戦―を応援したい」と述べている。また2014年1月6日の産経新聞コラムに、女性の社会進出が出生率を低下させたとし、男女共同参画社会基本法などを批判している。

 

 百田氏は「永遠の0」や「海賊とよばれた男」のベストセラー作家で、安倍も作品の愛読者のひとり。「探偵!ナイトスクープ」の構成作家という経歴から、単なる「おもろいオッチャン」と思ったら大間違い。いわゆる「自虐史観」を一貫して批判し、ある月刊誌で「安倍政権の最も大きな政策課題は憲法改正と軍隊創設」と言い切ったバリバリの軍国主義者だ。

また、雑誌『Voice』13年4月号では、「安倍政権では、もっとも大きな政策課題として憲法改正に取り組み、軍隊創設への筋道をつくっていかねばなりません」と公言している。

 

中島氏が校長を務める「海陽学園」は次世代のリーダー育成を掲げる全寮制の中高一貫校。副理事長を務めるJR東海の葛西敬之会長は、本田氏と同じ「四季の会」の一員だ。葛西氏は財界きっての原発推進論者で、NHKの松本正之会長に不満タラタラだという。

 

「『アイツは国益に反する放送をしてけしからん』とボロクソに言っている、と雑誌に書かれました。松本会長はJR東海の元副会長で、葛西氏自身が3年前にNHKに送り込んだ。脱原発に転じた小泉元首相が『NHKが震災後に放送した海外ドキュメンタリーを見たのがきっかけ』と発言したのも、元部下への不満に火をつけた。中島氏は、葛西氏の意向に従った“松本降ろし”の刺客でしょう」(財界関係者)

 

恐ろしいのは、これだけ保守色の強い面々がNHKの首根っこを掴んだことだ。会長選任には経営委員12人のうち9人の同意が必要だ。新任4人が反対すれば「拒否権」が発動される。

 

安倍やその取り巻きの意に沿わない会長は、簡単に葬られてしまう。

 

「つまり、安倍首相や偏った思想の“お友達”が、NHKトップの人事を左右し、公然と公共放送を乗っ取ろうとしているのです。狙いはひとつ。放送法第1条に定められた『不偏不党』の原則をかなぐり捨て、NHKの報道姿勢を権力の思うがままに操ること。安倍色に染まった会長の下で、原発推進の一大キャンペーンや、反中反韓の偏向報道だって始まりかねません。戦中の大本営発表を想起させる言論封殺の危機なのに、大手メディアの追及は鈍すぎます。民主主義の基盤である『言論の自由』を抹消する動きを、絶対に許してはいけません」(元NHK政治部記者で元椙山女学園大教授の川崎泰資氏)

 

安倍ファッショは、すでに始まっている(2013年10月28日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 注; 放送法第1条(目的)

 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

1.放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。

2.放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。

3.放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

 

 民主党の桜井充政調会長は10月29日の記者会見で、安倍晋三首相と親交がある小説家の百田尚樹氏らをNHK経営委員会委員に充てるとした政府の人事案に関し「かなり恣意的ではないか」と批判した。賛否は30日の党総務部門会議で議論し、11月5日の「次の内閣」会合で決定するとした。羽田雄一郎参院幹事長も会見で「公共放送の在り方を考えると、友達ばかりを集めるのは違和感がある」と述べた。

 

  共産、社民両党は11月7日、政府が提示したNHK経営委員会委員の5人全員の同意人事案に反対する方針を決めた。

 

共産党の志位和夫委員長は記者会見で、作家の百田尚樹氏ら新任4人について「安倍晋三首相と特定の関係があり、公共放送の私物化になりかねない」と指摘。再任の石原進JR九州会長は、原発再稼働を推進する過去の言動が反対理由と説明した。社民党の又市征治幹事長は会見で「保守色の強い人選で同意できない」と述べた。

 

参院は8日午前の本会議で、NHK経営委員に小説家の百田尚樹氏を起用する国会同意人事案について、与党のほか野党の日本維新の会、みんなの党の賛成多数で可決、同意した。

 

NHK経営委員の人事案は5人。新任は百田氏のほか、元埼玉大教授の長谷川三千子氏、海陽中等教育学校長の中島尚正氏、日本たばこ産業(JT)顧問の本田勝彦氏。再任はJR九州会長の石原進氏。

 

民主党は新任4人の人事案について「安倍首相に近い」などと反対した。共産党、社民党は5人全員に反対した。

 

衆院も同日午後の本会議で可決した。

 

NHK経営委員会は4月19日、佐賀市の佐賀放送局で「視聴者のみなさまと語る会」を開いた。参加者からは、就任記者会見での個人的発言が波紋を呼んだ籾井もみい勝人会長への批判が相次いだ。

同会は経営委員会のメンバーが直接視聴者から意見を聞くために定期的に開かれるもので、籾井会長は出席しなかった。今回は同会長の就任後初めての開催で、約20人の参加者からは会長発言を巡る質問と意見が集中。「放送人として適性を欠く。反省していると言われても、またやりかねない」などの声が出た。

全理事に日付空欄の辞表を出させたことについて、石原進委員(JR九州会長)が「会長は人事権は乱用しないと明言している」と説明すると、「それならなぜ辞表を集めたのか」と追及される一幕もあった。

ほかに職員給与の高さや、番組の再放送のあり方などに意見が出された。終了後、石原委員は「予想以上の厳しい批判で、国民全体の声と受け止めている。経営委に報告したい」と述べた。

 

NHK籾井会長に「NO!」 受信料支払い拒否100万件へ(2014年4月3日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 8年ぶりの野党の反対を自公与党が数の力で押し切ったNHKの2014年度予算案。籾井会長は胸をなで下ろしたに違いないが、水面下で、悪夢のような事態が進んでいる。昨年度上半期の契約総数は過去最高の3848万件に達したが、今年1月の籾井会長就任以来、ものすごい勢いで不払いが増えているというのだ。NHKに詳しいジャーナリストの小田桐誠氏がこう言う。

「10年前の番組制作費着服事件は、最終的に140万件の不払い騒動に発展しました。今回は同等か、それ以上になりそうです。NHKには当時の6倍に達する3万4000件の苦情が寄せられているうえ、契約の取り次ぎや未収回収を担当する営業局の幹部たちからも悲鳴に近い声が聞こえてくる。<籾井会長の発言はあの椿発言よりもひどい>と肩を落とす職員もいます」

■100万件突破は確実

 椿発言とは、当時テレビ朝日取締役報道局長だった椿貞良氏が、1993年9月の民放連の放送番組調査会で「非自民政権が生まれるよう指示した」などと語った問題。自民党が「偏向報道だ」と騒ぎ立て、テレ朝は椿氏を解任(その後辞職)することになるが、「確かに籾井発言はより悪質」と、前出の小田桐誠氏が言うのだ。

「椿氏は民放連という業界の組織で自由闊達な議論を行うための問題提起をしたにすぎません。一方、籾井会長の従軍慰安婦や特定秘密保護法に関する発言は、公式の記者会見でなされたもの。『個人的見解』なんて言い訳はまかり通りません」

 NHKは受信契約者が2回続けて支払い拒否すると、「不払い」にカウントする。今は2カ月ごとの口座振替が一般的なため、はっきりした数字が集計されるのは4カ月ごとになる。籾井会長の就任会見は1月25日だから、5月下旬には「不払い100万件」が明らかになりそうだ。

「NHKに受信料の支払い拒否を伝えたOB職員もいると聞きます。10年前の騒動では訪問集金のスタッフが粘り強く説得して回り、最終的に100万人以上が支払いを再開しました。その訪問集金は6年前になくなり、今回は回復に向けた手だてがない。10年前以上に深刻だと思います」(小田桐誠氏)

 百田尚樹氏、長谷川三千子氏ら経営委員の問題もある。このまま籾井会長が居座れば、取り返しがつかないことになるのではないか。

 

NHK経営委員 9条ひやかす作家 / 小学生時の家庭教師 / 安倍首相 露骨な人事案(13年11月7日配信『しんぶん赤旗』)

 

市民団体など「撤回を」

 

 NHKの経営委員会委員5人の人事案が、8日の衆参両院本会議に諮られます。その顔ぶれは「安倍首相に近い」と評されるため、ジャーナリストや学者、市民団体から「安倍首相のNHKへの介入につながる人事」だとして、撤回を求める声が上がっています。

 5人は、百田尚樹(ひゃくたなおき)氏(作家)、長谷川三千子氏(哲学者)、本田勝彦氏(日本たばこ産業顧問)、中島尚正(なかじまなおまさ)氏(海陽学園海陽中等教育学校長)、石原進氏(JR九州会長=再任)。

 百田氏は自身のブログで憲法9条への揶揄(やゆ)を繰り返し、雑誌の対談で安倍首相と「意気投合」。長谷川氏は右翼・改憲団体「日本会議」の代表委員を務め、昨年の自民党総裁選で「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人に、百田氏とともに名前を連ねました。

 本田氏は安倍首相の小学生時代に家庭教師を務めた深い間柄。中島氏の学園も安倍首相に近い財界人の肝煎りでつくられました。再任の石原氏は、昨年の総選挙時に「原発推進」を繰り返し訴え批判を浴びました。

 NHK経営委員は、視聴者の代表として公共放送の生命線である「公正・公平」を時の権力から守る役割を担います。しかし、菅義偉官房長官は記者会見で「(首相が)信頼する方にお願いするのは当然」だと述べ、安倍首相の“お友達”を据えたことをあけすけに語っています。

アベさまのNHK?

経営委員人事で何ねらう

秘密保護法や原発報道に影響も

 大手民放幹部らとの会食を繰り返し、メディアを手なずけてきた安倍首相。公共放送NHKには自らの意向に沿う人物で経営委員を固めようとする手段に出てきました。首相のねらいはどこにあるのでしょうか。

第1次内閣時も

 あるNHK職員はいいます。

 「この人事は安倍さんがNHKをコントロールしようとする第一歩。今回決まる委員も含めた経営委員がだれを会長に選ぶのかが、いちばん気になることです。政治権力に対抗して放送していくのが、ジャーナリズムの役目。焦点になっている原発、憲法、集団的自衛権などの問題を鋭く報道し続けられるかどうかにかかわってくる可能性があるからです」

 現在の松本正之会長(元JR東海副会長)の任期は来年1月まで。経営委員会は、執行部のトップである会長の任命権を持ち、12人の委員のうち、9人以上の賛成で選ばれます。安倍政権は一気に公共放送の2トップを手中にしようとしているのです。

 安倍首相は、これまでも露骨な形でNHKに介入してきました。第1次安倍内閣の2007年、富士フイルムホールディングスの古森重隆社長が突然、経営委員長に内定しました。経営委員長は委員会での互選というルールを安倍首相が無視し、「自身との関係の近さ」を決め手としました。

 経営委員長にすわった古森氏は、会合で「国際放送では国益を主張せよ」「選挙期間中の歴史もの(番組)の放送には注意を」と発言。自民党議員を励ます会にも出席するなど、安倍首相に応えた“実績”を残しました。

 2001年に日本軍「慰安婦」問題を取り上げたETV番組へ圧力をかけて改変させたのも、当時官房副長官だった安倍氏です。

国会で否決を

 永田浩三武蔵大学教授は、ETV番組のプロデューサーでした。永田氏は4日、神戸市で市民団体が開いたシンポジウムに出席。参加者に訴えました。

 「いま、NHKの秘密保護法についての扱いはきわめて小さく、自民と公明のやりとりをめぐる政局としてしか報じていない。首相の意を受けた経営委員が大量に入ってくるのを怖がって、すでにニュース報道がねじ曲がっているのではないかと思います」

 安倍首相の戦略に市民団体から批判の声が広がっています。「NHK問題を考える会(兵庫)」(貫名初子代表)は10月31日、NHK経営委員と衆参両院議長に対し「安倍首相の経営委員会人事をテコにしたNHKへの介入と支配に断固反対する」とした声明を送付しました。

 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」(醍醐聰、湯山哲守共同代表)も4日、「側近を大量にNHK経営委員会に送り込む安倍首相の専断的手法を許さないために同意人事の否決を!」と題した声明を発表しました。 

 

14年1月24日で任期切れを迎えるNHKの松本正之会長(69)は12月5日の定例会見で、「やるべきことはやった。1期3年の中で私の役割は果たした」と述べ、今期限りで退任する意向を示した。経営委員会は現在、松本氏の業績評価を含めて次期会長選びを進めており、松本氏は同日、浜田健一郎経営委員長に続投しない考えを伝えたという。

退任する理由について松本会長は「もともと就任のときに1期3年のつもりで受けている。それなりの成果も上げてきている」「やるべきことはやった」と説明した。

政財界から交代を求める声が上がっていたことについては「一切関係ない」と影響を否定。しかし、官邸首脳は数日前にも「松本氏には代わってもらう」と周囲に漏らしており、先の国会同意人事で安倍首相に近い経営委員が増えた現状を受けて、松本氏が続投を断念した格好だ。

 

NHKは次期会長人事で12月20日、日本ユニシス特別顧問の籾井勝人(もみいかつと)(70)を選出した(第21代)。会長の任免権を持つNHK経営委員会が全会一致で決めた。放送法は会長任命で委員12人のうち9人以上の賛成が必要と定めている。

会見した籾井氏は「外部から来ている人間の役割は決断と実行だと思う」と意気込みを語った。番組の偏向是正、国際放送強化、放送と通信の融合といった課題の解決は一筋縄ではいかず、籾井氏の「改革力」が問われることになる。

 籾井氏は三井物産出身で、主に鉄鋼関連の業務を担当。米国三井物産の社長や三井物産副社長を経て、2005年にITシステム大手の日本ユニシスの社長に就任した。

 

NHK新会長の籾井氏は25日の就任会見で、従軍慰安婦について「戦争をしているどこの国にもあった」と述べたうえで、日本に補償を求める韓国を疑問視した。従軍慰安婦問題を取り上げた過去のNHK番組に関連し、この問題に関する見解を問われ答えた。尖閣諸島・竹島など領土問題については、国際放送で「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左というわけにはいかない」と話した。

 籾井氏は従軍慰安婦問題について「今のモラルでは悪いんですよ」としつつ、「戦争をしているどこの国にもあった」としてフランス、ドイツの名を挙げた。「なぜオランダにまだ飾り窓(売春街)があるんですか」とも述べた。

 さらに「会長の職はさておき」としたうえで、韓国についても「日本だけが強制連行したみたいなことを言っているから話がややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っている。しかしすべて日韓条約で解決している。なぜ蒸し返されるんですか。おかしいでしょう」と述べた。その後、記者から会長会見の場であることを指摘されると、発言を「全部取り消します」と話した。

 特定秘密保護法の報道が少なく、姿勢が政府寄りとの指摘があることについて、「(法案は国会で)通ったこと。あまりカッカする必要はない」と、問題点の追及に消極的な姿勢を示した。

 「政治との距離」については「(政府と)相談しながら放送していく必要はないが、民主主義に対するわれわれのイメージで放送していけば、全く逆になることはない」との認識を示した。として早急に強化する姿勢を示した。

また、籾井氏は3年間の任期中に取り組む最重要課題の一つに国際放送の充実を挙げ、領土問題について「尖閣諸島(沖縄県)や竹島(島根県)について日本(政府)の立場を主張するのは当然」

放送法はNHKを含めた放送事業者に「政治的公平性」を義務づけている。NHKの会長がこのような発言をするのは極めて異例だが、過去には、経営委員長が国際放送の編集方針について「国益を主張すべきだ」と発言して問題になったことがある。

 

なお、NHKは籾井会長の就任会見での発言を報じなかった。

 

主なやりとり

――慰安婦を巡る問題については。

 戦時中だからいいとか悪いとかいうつもりは毛頭無いが、この問題はどこの国にもあったこと。

――戦争していた国すべてに、慰安婦がいたということか。

 韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか。ヨーロッパはどこでもあった。なぜオランダには今も飾り窓があるのか。

――証拠があっての発言か。

 慰安婦そのものは、今のモラルでは悪い。だが、従軍慰安婦はそのときの現実としてあったこと。会長の職はさておき、韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っているわけだが、日韓条約ですべて解決していることをなぜ蒸し返すのか。おかしい。

 

こうした発言に、経営委員側からは「外交問題に発展しかねない。選んだ側の責任も問われる。国際放送の役割についても事前に十分説明したのに、正しく理解していない」との失望の声がもれた。発言の真意をただし、今後の対応を検討するため、浜田健一郎委員長(元・ANA常務取締役。現〈株)ANA総合研究所取締役会長)は週明けにも籾井氏と面会する。

ある委員は「会見の場でああいう発言をするのは大人げない。内容もきちんとした歴史的知識を前提としておらず、見識がなさすぎる」と嘆く。別の委員は「信頼して会長に選出したのに。この調子では国会で予算が通るのか不安。とにかく一度反省してもらい、今の姿勢を改善してほしい」と話した。

 

1月28日には経営委もあり、各委員から直接追及されるのは必至だ。さらに14年度予算の国会審議も間近に控え、議員の質問攻めにあって同じ過ちを繰り返すことも懸念され、公共放送トップとしての自覚と説明責任が問われている。

 

日本共産党の山下芳生書記局長は25日、「日本軍『慰安婦』について軍の関与を認め謝罪した河野談話など政府の立場とも、歴史的事実とも異なるもので、公共放送の会長としての資格が根本から問われる」と述べた。

民主党の大畠章宏幹事長は26日、「不適切で偏向した発言だ。大きな影響力を与えるNHKの会長になった自覚がない」と述べ、通常国会で追及する姿勢を示した。東京都内で記者団に語った。

結いの党の江田憲司代表は「国民にいろいろな考えがある問題だ。公共放送の観点から適当ではない」と、発言を疑問視した。

生活の党の鈴木克昌幹事長は「反省を待つ」と述べ、対応を注視する考えを示した。

社民党の又市征治幹事長も「右派勢力と同じ見解で、公共性や政治的な公平性に反する。ジャーナリズムの危機にもなりかねない」と指摘したうえで、「歴史認識がなっていないと言わざるを得ない」と批判した。

一方、日本維新の会国会議員団の松野頼久幹事長は「報道機関の長として踏み込んだところがある」としたうえで、「目くじらを立てて、萎縮させるようなことを国会でやるべきではない」と述べた。

 

NHK会長の籾井氏の発言に対して、韓国の与野党は26日、論評などを出して一斉に批判した。

与党セヌリ党のスポークスマン、閔R珠(ミンヒョンジュ)議員は「人権に対する基本的な概念すら持ちあわせていない、無知の極みに達した発言だ」と非難。最大野党・民主党議員団スポークスマンの朴洙賢(パクスヒョン)議員も「日本の公営放送の最高責任者の妄言に驚きを禁じ得ない。軍国主義の影を追う安倍政権のラッパ吹きになるのではと心配でならない」とした。

韓国の外交省当局者は「安倍政権下にある日本の指導層の歴史認識が、どれだけ危険な水準に達しているのかを如実に示すものだ」と指摘した。

KBSテレビは、「妄言で物議を醸している」()などと批判的に報じた。

SBSテレビは、籾井会長が元慰安婦への補償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだと表明したことを「日本政府の立場をそのまま代弁した」と指摘し「安倍氏の考えと一致しているとの点で注目される」と報じた。

聯合ニュースは、安倍政権の言動に籾井会長の発言が重なり「韓日関係が崖っぷちに追い込まれたようだ」と評した。

韓国メディアの多くは、籾井会長の就任には安倍晋三首相の意向が反映されたとみられると強調している。

韓国では26日に91歳の元慰安婦の女性が亡くなったこともあり、日本批判が一層高まる気配が出ている。

亡くなった女性は16歳で韓国から中国へ連行され、旧日本軍の従軍慰安婦にされたという。戦後は韓国に戻り、清掃員となり、一人暮らしをしていた。少ない収入の中から募金活動に励み、奨学金基金への寄付はのべ9万2000ドル(約940万円)に上った。遺言により遺産は慈善組織に寄付される。11年、韓国政府はこれらの活動を評価、表彰した。

 

自民党の佐藤勉・国会対策委員長は26日、「NHK会長として発言すべき内容ではなかった。慎重に発言してもらいたい」と語り、他の幹部は、「困ったものだとしか言いようがない。本人が国会に出てきて説明することは必要になってくる」と述べ、籾井氏自身が説明責任を果たすべきだとの考えを示した。

また、同党幹事長経験者は「余計な話をした。外国からはNHKは国営放送だと思われている」と不快感を表明した。公明党幹部も「発言を取り消すのは無理だ」と指摘、幕引きは困難との認識をにじませた。

別の幹部は、「バカじゃないか、と思った。党の調査会も動かさなければいけない」と指摘した。同幹部は官邸の要請で午後に「官房長官が『問題ない』と言った以上、問題ない」と修正したが、予算や決算、総務の各委員会で審議する可能性について「(審議の)要求があれば応じざるを得ない」と述べた。

 

NHK予算は国会の承認を受ける必要があり、3月にも衆院総務委員会で審議が始まる見通し。籾井氏も答弁に立つ予定で、野党各党が発言の真意について説明を求めるのは必至だ。

 

市民団体「NHK問題を考える会(兵庫)(貫名初子代表)は26日、経営委員会と籾井氏本人に宛てた「放送法と歴史的事実に反する暴言に抗議し会長辞任を求めます」とした申し入れ書を、NHK神戸放送局に提出した。

 

「NHK問題大阪連絡会」の河野安士代表も26日、籾井氏に対し「記者会見での発言に抗議し、即時NHK会長の辞任を求める」とした文書をファクスで送付した。

 

市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聡・東大名誉教授は籾井氏の発言について「不偏不党、公正・中立といった放送法に抵触しており、会長には不適任」と指摘。会として27日午後、NHK視聴者部を通じて経営委に対し「籾井NHK会長の解任を求める申し入れ」と、籾井NHK会長に対し「会長職の自主的辞任を求める申し入れ」を提出した。

 

NHKの籾井会長は27日、「就任の記者会見という場で私的な考えを発言したのは間違いだった。私の不徳の致すところです。不適当だったと思う」と述べた。

野党から責任追及の声のほか、韓国メディアも厳しく批判しているが、籾井会長は「今からしっかり対応していく」とし、会長職務に専念する考えを示した。

 

菅義偉官房長官は27日、「籾井氏は最初(の会見)なので戸惑ったのではないか。会長として記者会見をするときに個人の発言はない。整理がついてなかったのだろう」と指摘したうえで、「個人として発言したものと承知している。籾井会長には社会的使命を担う公共放送のトップとして放送法に基づいて職務を遂行してくれることを期待する」と述べ、問題視しない考えを示した。

菅氏は、「会見の様子を私も(ビデオで)見た。本人は『コメントしない』とずっと言っていたようだが、どうしても、ということで、『個人としてであれば』と言った」と述べ、記者団から重ねて質問を受け、籾井氏が見解を語らざるを得なくなったと指摘。「その後で、(記者団に)『個人(の見解)というのはあり得ない』と言われ、『会長としてであれば取り消す』と言った。そこは問題ない」と説明した。

 

韓国外務省は27日、「NHK会長の『妄言』は、安倍政権下で日本の指導層の歴史認識がいかに危険な水準に達しているかを如実に示している」と政権との関連性を指摘して非難したうえで、「公平、不偏不党であるべき日本の公共放送会長さえ、歴史的真実をゆがめ、でたらめな主張を行ったことを糾弾せざるを得ない」と強く批判した。

 

同日、韓国の野党民主党の金ハンギル代表は「ドイツが他国にも(ナチスが行った)虐殺があったと弁明していれば今日のドイツはなかった。日本の妄言が続くほどに日本が戦犯国家にすぎないことが強調される」とこき下ろした。大手紙、朝鮮日報も「中立的な報道の象徴、NHKまで安倍に屈服」との見出しで、安倍首相がNHKの「掌握」を試みてきたと報道。中央日報は社説で「籾井会長の歴史観がNHKの公正性に影響を及ぼしかねないとの憂慮を払拭できない」と指摘した。

 

中国外務省の秦剛チンガン報道局長は27日、「従軍慰安婦は日本軍国主義が侵略戦争中に被害国の人民に対して犯した重大な犯罪だ」と批判したうえで、「発言は、(日本の)軍国主義による侵略の犯罪(の重大性)を弱めたり、否定したりする勢力が、日本に一貫して存在することを反映している」と述べた。

 

日本共産党の山下芳生書記局長は27日、国会内で記者会見し、籾井勝人NHK会長の発言について「日本軍の関与を認めて謝罪した河野洋平官房長官談話など政府の立場と異なり、歴史的事実にも反するものだ。公共放送の会長としての資格はないといわねばならない重大な発言だ」と厳しく批判、国会で発言の真意をただす必要性を指摘した。

山下氏は「放送法の1条2項には『放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する』と明記されている。この放送法の趣旨からみても発言は不適切だ」と強調。また、籾井氏が会見で「NHK組織のボルトとナットをもう一回締め直す」と発言したことにふれ、「会長の誤った歴史認識に基づいて締め直されたら、NHK全体が放送法の趣旨からはずれた組織になってしまうと大変危惧をする」と警鐘を鳴らした。

山下氏はさらに、籾井氏が、国際放送では明確に日本の立場、政府の立場を主張するのは当然だとして「政府が右ということを左というわけにはいかない」と言い放ったことを批判。「公共放送というよりも政府の代弁者であり、国営放送的な発想だ。この点でも会長の資格が問われる」と指摘。BBC(英国放送協会)も、政府の見解を批判的に紹介する報道を国際放送で行っている事実を示し、「そういう放送をすることが、公共放送、放送ジャーナリズムの信頼と権威を高めることになる」と語った。

 

アムネスティ・インターナショナルの東アジア調査部部長のロザーン・ライフは、27日、「このような発言は、第2次世界大戦前後に性奴隷として働くことを余儀なくされた多くの女性たちを侮辱するものだ。これらの女性たちが、性奴隷として働かされ、深刻な人権侵害にさらされたという真実は揺るがない。要職にある公人が、日本軍性奴隷制を容認する発言をすることは許されない。日本の公人が、これらの女性たちの苦しみを否定したり、釈明したりすることは、看過できない。性奴隷となったことにより、被害者たちは今もなお、健康障害、孤立、恥、そして貧困に苦しんでいる。公人であれば、弁明する前に、日本政府に対してこの問題解決に向けて取り組むよう、働きかけるべきだ。日本政府は全責任を認め、軍性奴隷制を明確に謝罪し、犠牲者に対して正義を与える必要がある」とのコメントをした。

 

籾井会長は27日、浜田健一郎経営委員長と面会し、「不適当な発言をして、非常に申し訳ないことをした」などと謝罪した。浜田氏は同日夜、「今回のことで会長の罷免は考えていない」と話した。さらに「本人の思想信条はわかるが、答える必要のない質問もあったのではないか」と指摘した。

 

放送行政を所管する新藤義孝総務相は28日午前、「政府の公的見解を報道することは国際放送の番組基準に照らしたものだ」と述べ、公正や中立性の観点で問題にならないとの認識を示した。

また籾井氏が従軍慰安婦について「戦争をしているどこの国でもあった」などと語ったことについても、新藤氏は「会長会見の場として整理がよくついていなかったのではないか。ただちに進退につながることではない」と問題視しない考えを示した。

一方、林芳正農林水産相は28日午前の会見で、籾井氏の発言について「公の会見の場でああいうことをおっしゃるのはいかがなものか」と苦言を呈した。

また、自民党の脇雅史参院幹事長は28日、「(記者会見で)答えたこと自体が適切でなかった。もうちょっと慎重さが必要だったのではないか」と苦言を呈したうえで「国会運営上、問題はない」と述べ、国会審議への影響はないとの見方を示した。

 

28日午後、安倍首相の施政方針演説に対する各党代表質問(衆院)で民主党の海江田万里代表は、「村山談話、河野談話を素に認め、戦前の侵略と植民地支配に反省の気持ちを率直に表明すべきだ」と主張したうえで、従軍慰安婦が「どこの国にもあった」とするNHKの籾井勝人会長発言に「河野談話を素直に肯定しない首相の思いが乗り移った」と指摘し、首相の見解をただした。

 

安倍首相は答弁し、「政府としてコメントすべきではない」と述べたたうえで、NHKに対し「いかなる政治的圧力にも屈することなく、中立、公正な報道を続けてほしい」と語った。

 

籾井会長は28日の経営委員会の冒頭で、慰安婦問題を「どこの国にもあった」などと発言したことについて「就任記者会見で個人的見解を述べたことは不適切だったと反省している」「放送法に明記されている『放送の不偏不党、真実および自律の保障』を尊重する」と述べ、会長職は続ける考えを示した。

浜田委員長は「議論が複数あることに個人的見解を述べたことは、公共放送のトップとしての立場を軽んじたものと言わざるを得ない」などと注意し、信頼回復に取り組むよう求めた。

委員会は非公開で、浜田委員長によると、籾井会長の個々の発言の是非については「思想信条を議論する場ではない」とテーマにはせず、委員からも進退に関する意見はなかった。一方で、「公人であるとの認識を持つべきだ」「日本に寄せられている諸外国の信頼を回復することが必要」といった厳しい発言があったという。

経営委は、2月9日で任期が切れる副会長の人事については、次回の経営委まで同意を保留することを決めた

 

NHKには、同日までに「公共放送のトップにふさわしくない」「歴史認識が間違っている」などいった批判的な意見が約1800件寄せられている。籾井会長は同日、全職員向けのメールで「視聴者の皆さんに誤解を招いてしまったことは申し訳ない。個人的な見解を放送に反映させることはありません」との異例のメッセージを送った。

 

人権団体のアムネスティ・インターナショナル日本は29日、「戦時下の組織的な性暴力を肯定し、国際法上の重大な人権侵害の責任を否定しようとするもの」などと抗議声明を出した。

 

「日本新聞労連」(MIC・議長=日比野敏陽(としあき)新聞労連委員長)も「公共放送の最高責任者として資質に著しく欠ける。会長職を辞任すべきだ」とする声明を発表した。

 

NHK職員で組織する日本放送労働組合(日放労)は28日、「見解の異なる視聴者からも受信料を集める立場からして、疑念を招くことは大きな損失。政治上の力学の介在は最も避けるべきだし、放送法の趣旨も脅かされかねない」との見解を出した。

 

28日行われた衆院本会議での各党代表質問で、海江田万里氏(民主)が、籾井会長の記者会見での(従軍慰安婦は)「どの国にもあった話だ」と述べたことについてただしたのに対して、安倍首相は、「政府としてコメントすべきではない。新会長をはじめ、NHKの皆さんはいかなる政治的圧力にも屈することなく、中立、公平な報道を続けてほしい」と答弁した

 

日本維新の会の中野正志参院国会対策筆頭副委員長は29日、野党7党の参院国対委員長が集まった非公開の会合で籾井会長の発言にからみ、「今だって韓国の女性5万人が性産業で働いていると(韓国政府が)はっきり言っている。中国では、100ドル、200ドルで『お持ち帰りどうぞ』と言われる。なぜ日本が戦前のことをいつまでも(言われるのか)」と述べた。

複数の出席者らによると、民主党が籾井氏の発言を国会で取り上げる意向を示したのに対し、中野氏は「発言は問題ない」との立場を示したうえで、「国会議員ではなく、個人の見解」と断って、持論を述べたという。中野氏は会合後の取材に発言の内容を認めた。

複数の他党幹部から「歴史的な従軍慰安婦と、現在の性風俗とはまったく関係ない。不穏当な発言だ」と批判の声があがっている。

 

30日行われた参院本会議での各党代表質問で、江崎孝氏(民主)が、「従軍慰安婦をめぐる籾井NHK会長の発言は、首相が自らの仲間を経営委員に送り、その結果招いた不祥事だ」だと、ただしたことに対して、安倍首相は、「経営委員の選任は首相が両院の同意を得て任命することとされ、民意を反映させる仕組みとなっている」と答弁した。

 

籾井会長は1月31日の2013年度補正予算案を審議する衆院予算委員会に参考人として招致され、民主党の原口一博元総務相が同日夕に質問した。民主党は、籾井氏を会長に選出したNHK経営委員会の浜田健一郎委員長にも出席を要求。浜田氏も出席した。

予算委は予算案の審議に入る前に、あらかじめ日銀など政府と関係がある機関の幹部らを参考人として出席要求しておく。この中にはNHKも含まれ、野党などが求めれば、各機関は基本的に応じるのが慣例となっている。

NHK会長の参考人招致は、当時の小野吉郎会長がロッキード事件で逮捕・保釈中の田中角栄元首相を見舞ったことが問題となった1976年以来38年ぶり(小野は辞任に追い込まれる)3人目。

籾井会長は委員会で、特定秘密保護法も含め「私見は全部取り消した。会見は私的なコメント」「皆さんに誤解と迷惑を掛け誠に申し訳なく思っている」と陳謝したが、就任会見で取り消したのは従軍慰安婦問題だけだったため、事実と異なる発言に議員から怒りの声が「(取り消したのは)従軍慰安婦だろう」とヤジが飛んでも、「私見は通らないので取り消した」と繰り返した。

NHKが国際放送で領土問題を取り上げる際に「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と会見で述べたことについて「赤と白で置き換えていただければ(いい)。右とか左とか、若干誤解を招くような表現になった」と答弁する

また「NHKのトップとして、放送法に基づき職責を全うしたい」と述べ、続投し会長としての責任を果たす考えを強調した。

原口氏は、特定秘密保護法について「もう言ってもしょうがないのではないか」との発言が、意見が対立している問題については多角的に論点を明らかにすることを求めている放送法4条に違反すると追及。籾井氏は「個人的な見解を放送に反映させることはない。公平に取り扱い、放送する」と言明した。 

天井を見上げたり、首を左右に振ったり落ち着かない様子で、厳しい質問にNHKが事前に準備したメモが差し入れられると、傍聴席から失笑が漏れた。質問を終えた原口氏は「公共放送の長の発言として極めて問題だ」と批判した。

原口氏は、いわゆる従軍慰安婦問題を巡る籾井氏の発言については追及しなかった。

 

原口氏 正しい姿勢だと思うが、それを伝える編集権を持つ籾井氏は、会見で「どのように伝えるか」と聞かれて「いちおう通っちゃったのですから、もう言ってもしょうがない」と。幅広い意見の検証や問題点の追及をもっとした方がいいのでは、という問いに「必要とあればやりますけれども、必要だと思わないのでやらない」。放送法4条の趣旨に大きく反する発言ではないか。

 

 籾井氏 先日の会見におきまして、個人の発言と断ったうえでお答えした部分について、「会長としての会見の場だ」との指摘を受けまして、その日に、その場で取り消したわけでございます。本当に皆さんに誤解とご迷惑をおかけしまして誠に申し訳なく思っております。

 

元経営委員の小林緑・国立音楽大名誉教授(音楽史)は「事前に準備してきたメモを読むだけで、自分の言葉がなかった。問題の深刻さを真摯(しんし)に受け止めて、視聴者に謝罪しようという姿勢を感じなかった。不信が広がった」と語った。

 

 

浜田健一郎委員長は、籾井氏の責任に関し「議論が複数ある事項について、個人的な見解を述べたのは公共放送のトップの立場を軽んじた行為で、立場を十分に理解してほしいと強く要請した。(経営委員会で)議論は若干あったが、現会長が適任と判断した」と語った。

 

みんなの党を除く7野党の幹事長・書記局長らが31日夜、都内で会談し、籾井会長について「不適任」との認識で一致した。出席者からは「辞任すべきだ」との声も上がったという。 

 

全国の医師ら10万4千人でつくる全国保険医団体連合会は31日、「多くの被害女性を侮辱する暴言で許されるものではない」として、辞任を求める要請書を籾井会長宛てに提出した。

 

籾井会長は、2月3日の衆院予算委に再び参考人招致された。31日の衆院予算委員会では就任記者会見での発言と矛盾した上、理解しがたい発言を連発、識者や野党から「トップとしての資質に欠ける」と批判が強まっている。

籾井氏は就任会見での一連の発言について、「公式会見の場で個人的見解を発言したことは不適切で、大変申し訳なく思っている」と、改めて陳謝した。みんなの党の佐藤正夫氏はNHKの経営改革への決意をただしたが、籾井氏は「次期経営計画はこれから検討する段階だ。しっかり研究した上で考えたい」と述べるにとどめた。 

籾井氏の辞任を求める要望書を提出している「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聡・東大名誉教授は「籾井会長は就任記者会見での発言の問題点を整理できていないまま、国会答弁に臨んだため、おかしな発言になったのだと思う。この点一つをとっても、明らかにトップとしての資質を欠いている。不用意な発言による混乱は今後も続くだろう」と指摘している。辞任要求は人権団体の「アムネスティ・インターナショナル日本」「日本マスコミ文化情報労組会議」などからも出ている。

 

NHK経営委員の作家・百田尚樹氏が3日、東京都知事選候補者の応援演説に立ち、持論を展開した。経営委員の政治活動を禁じる法律や規則はない。

百田氏はこの日、都内3カ所で、歴史観や国家観が近いという元航空幕僚長の田母神俊雄候補の応援演説に立った。

NHKの籾井勝人会長は同日、就任会見での政治的中立性が疑われる発言について国会で改めて陳謝したが、百田氏は特定候補の応援をすることについて報道陣に「思想信条の自由。NHK経営委員はあくまで放送法によって縛られています。つまり放送に関しては徹底して不偏不党、あるいは中立。僕のプライベートな行動まで縛る法律ではないですよね」と答えた。

朝一番の新宿駅西口では米軍による東京大空襲や原爆投下を「悲惨な大虐殺」と話し、東京裁判について「これをごまかすための裁判だった」と自身の歴史観を披露。「1938年に介石が日本が南京大虐殺をしたとやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからです」「極東軍事裁判で亡霊のごとく南京大虐殺が出て来たのはアメリカ軍が自分たちの罪を相殺するため」と持論を展開した。

また、第2次世界大戦での日本の真珠湾攻撃に触れ、「宣戦布告なしに戦争したと日本は責められますが、20世紀においての戦争で、宣戦布告があってなされた戦争はほとんどない」と話し、「(米軍の)ベトナム戦争の時も湾岸戦争の時もイラク戦争もそうです。一つも宣戦布告なしに戦争が行われた」「第2次世界大戦でイギリス軍とフランス軍がドイツに宣戦布告しましたが形だけのもんで宣戦布告しながら半年間まったく戦争しなかった」と主張した。

憲法についても言及。「憲法改正派です。今の憲法は戦争は起こってほしくないなあと願っているだけの憲法だと、私は作家としてそう解釈します」「絶対に戦争を起こさせない。そういう憲法に変えるべきだと僕は思っています」と述べた。

午後5時、秋葉原駅前。「戦争では恐らく一部軍人で残虐行為がありました。でもそれは日本人だけじゃない。アメリカ軍もやったし、中国軍もやったし、ソ連軍もありました。でもそれは歴史の裏面です。こういうことを義務教育の子どもたち、少年少女に教える理由はどこにもない。それはもっと大きくなってから教えれば良い。子どもたちにはまず日本人に生まれたこと、日本は素晴らしい国家であること、これを教えたい。何も知らない子どもたちに自虐史観を与える必要はどこにもない」と訴えた。

これに対しては「放送に携わるものが公の場で何を言ってもいいのか」との批判が起きているが、百田氏はこれに逆上、自身のツイッターに「アホか!不偏不党は放送に関してのみ。個人の思想信条は認められて当然。これがダメというなら、NHK経営委員などいつでも辞めてやる!」と書き込んだ。

 

 

菅義偉官房長官は4日午前の記者会見で、百田氏の応援演説をしたことについて、「個人の候補者を応援することは放送法に違反するものではない」と述べ、問題視しない考えを示した。百田氏は演説のなかで「南京大虐殺はなかった」などと発言したが、菅氏は「個人的な発言について政府としてコメントすることは控えたい」と明言を避けた。

菅氏は経営委員に推した理由について「幅広く評論活動とか、あるいは小説家として様々な出版をされて国民からも理解をされている。そういう点を踏まえて推薦をした」と説明した。

一方、政府関係者は「権限を持っている経営委員の発言なので、NHKの立場と思われかねない」と指摘。「法的に問題がないとはいえ、NHK会長の職務を監督することを考えれば評価は微妙だ」と懸念を語った。

公明党内には首相と百田氏の親密な関係から「腹の中は同じではないか」とみる向きもある。民主党の桜井充政調会長も4日の会見で、百田氏の発言を「常識的には考えられない」と批判した。

NHK経営委事務局は「ほとんどの経営委員は兼職が認められており、個人の思想・信条に基づいた行動は妨げられない」としている。

 

市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐(だいご)聡東京大名誉教授は「街頭演説など不特定多数の目に触れるところでの発言は、経営委員の見解として受け取られる」と指摘。党派性の強い選挙応援は不適切だとして、質問書を経営委などに提出する。

 

中国外務省の洪磊・副報道局長は5日、「南京大虐殺は日本軍国主義が犯した残虐な犯罪行為であり、揺るぎない証拠がある」と反論したうえで、「(発言は)国際正義と人類の良知への公然たる挑戦であり、歴史を逆行させる日本の指導者の誤った行動と脈を通じている」と非難した。

 

首相は4日の衆院予算委員会で、埼玉大名誉教授の長谷川三千子委員が男女共同参画基本法を批判したコラム(14年1月6日付「正論」―年頭にあたり 「あたり前」を以て人口減を制すを産経新聞に載せたことに対し、「仕事で活躍する女性も家庭に専念する女性も生き方に自信と誇りを持って輝ける社会を私は目指している」と釈明した。

 

4日、衆院総務委員会で上滝賢二NHK理事が籾井会長の発言をめぐり、約1万2300件の意見がNHKに寄せられたことを明らかにした。そのうち約7200件は批判的な内容。

また、同委員会に参考人として出席した籾井氏は、就任会見での発言のどこまでが個人的見解だったかを問われたが、明言を避けた。

批判的意見は「間違った歴史認識は問題」「公共放送の役割を理解していない」など。肯定的意見は「日本の立場をはっきり言及したことが大変良かった」など計3500件。支払いを拒否したいなど受信料に関する意見も3千件にのぼった。

同委員会では民主党の奥野総一郎氏が、籾井氏の会見での「特定秘密保護法」「靖国参拝」「番組編集権」「国際放送」の4つの事項に関する発言を挙げ、「どこを取り消すのか」などと10回にわたって尋ねた。高木陽介委員長(公明党)も質問に答えるよう促したが、籾井氏は「個人的見解については全部取り消しております」「ご理解をお願いします」などと繰り返し、質問への回答を避けた。「公的発言ということでいいのか」という質問には「そうは申しておりません」とかわした。

 

4日、NHKは6日に予定していた籾井会長の定例記者会見を13日に延期すると発表した。「日程の都合がつかないため」としている。

 

英フィナンシャル・タイムズ紙は4日、「安倍首相の介入でNHKの姿がぶれる」と題する記事を配信。「東京裁判は広島などで日本が受けた虐殺をごまかすためのもの」という趣旨の都知事選の応援演説での百田氏の発言を報じ、経営委員の言動が規則や法律上問題であるかを問う以前に、そのような歴史観の人物を選んだ安倍首相が世界をどう見ているのかが問題としたうえで、「首相が選んだ両経営委員の考え方により、日本で何がまともな保守主義と考えられているか、その境界線が試されている」と表現した。

記事を書いたジョナサン・ソーブル東京支局長は「多くの海外メディアが関心を持って見る のは、靖国参拝以降、右傾化に向かう安倍政権であり、NHKの一連の問題も、その一環として捉えられている。ひとつの放送局の問題ではない」と語った。

 

籾井会長は5日の参院予算委員会に出席し、民主党の有田芳生氏の質問に対して、「個人的見解を述べた部分については、あらためて取り消したい。秘密保護法や、靖国神社について言及したことも、すべて個人的見解だ」と釈明した。

また、1月30日のNHKラジオ番組で、原発問題を話そうとした大学教授がNHKから東京都知事選を理由にテーマを変えるよう求められたとして出演を取りやめた問題では「都知事選は原発問題が争点の一つになっている」などと説明した。

 

さらに、NHK経営委員の埼玉大名誉教授の長谷川氏が朝日新聞社で拳銃自殺した右翼団体元幹部を称賛した追悼文を発表していたことが毎日新聞の報道で表面化したが、これに関し、有田氏に認識をただされた首相は、「読んでいないから答えようがない」とかわした。有田氏は、作家の百田氏が東京都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくず」と非難したことも取り上げたが、首相は「聞いていないから答えようがない」と突っぱねた。

 

当時の朝日新聞は、野村氏の様子を、「中江利忠・朝日新聞社社長らと日本経済や俳句などを話題になごやかに懇談していたが、突然『朝日新聞と刺し違える』と何度も繰り返し、和服の中に忍ばせていた短銃2丁を取り出して発射し、前のめりに崩れるように倒れた」と報道している。

 

菅義偉官房長官は5日の記者会見で、長谷川氏が、右翼団体幹部を礼賛する追悼文を発表したとする報道をめぐり「経営委員が自らの思想、信条を表現することは妨げられていない。放送法に違反しない」と述べ、問題視しない考えを示した。

保守派の論客として知られる長谷川氏をNHK経営委員に推した政府の判断については「わが国を代表する哲学者、評論家として活躍している。わが国の文化にも精通しているとの評価の中で政府が国会に(人事案を)提出した」とし、適正だったとの認識を強調した。

 

長谷川氏は、憲法9条を「日本国憲法の『平和主義』は、国家主権の放棄」(「産経」2013年4月30日付)だなどと繰り返し攻撃する一方で、安倍首相の主張を「敗戦後の日本をしばりつづけてきた枠組みを根本から見直す」(同紙12年10月3日付)ものだと絶賛している。

 

右翼・暴力団に詳しいジャーナリストの溝口敦さんは、「私が暴力団の大物組長を取材したとき、野村元会長が取り巻きのように組長側にいたことがあった。何度も暴力事件を引き起こした人物を賛美する長谷川氏がNHKの経営委員にふさわしいわけがない。他の経営委員や会長も言動が問題になっている。結局、安倍首相にはこの程度の“お友達”しかいないということだ」と指摘した。 

 

民主党の榛葉賀津也参院国対委員長は5日の記者会見で、安倍政権がNHK経営委員に起用した長谷川三千子、百田尚樹両氏について、国会招致を求める方針を示した。参院総務委員会で集中審議開催と招致を要求する。

榛葉氏は両氏について「あまりにもバランスを欠き、放送法に抵触する可能性がある。(安倍晋三首相の)任命責任と同意人事で賛成した方の責任は極めて重い」とも語り、両氏の起用を決めた安倍政権を指弾した。

 

5日、国会内で講演した田中均元外務審議官は「NHK経営委員なる方がいろんなところでいろんなことを言っている。残念なことだが、外国(米国)のイメージは日本の信頼性が落ちているということだ。日本の国益を害している」と苦言を呈した。

 

中国外務省の洪磊報道官は5日、NHK経営委員を務める小説家の百田尚樹氏による「南京大虐殺はなかった」との発言を「日本軍国主義が侵略戦争の中で犯した残虐な犯罪行為で、国際社会では定説となっている」と非難する談話を発表した。

洪氏はその上で、「日本国内の極めて少数の人たちが歴史を抹殺しようとしており、歴史を逆行させる日本の指導者と通じるものがある」と強調した。

 

民主党など野党は6日の参院総務委員会理事懇談会で、NHKの籾井会長の歴史認識を巡る就任記者会見の発言などについて、総務委で集中審議を行うよう要求した。

民主党などは、ともに百田、長谷川両氏の言動も問題視しており、籾井氏と合わせ3人の参考人招致を求めた。

 

民主党は6日、放送法とNHK問題に関するプロジェクトチーム(PT)(座長・原口一博元総務相)の初会合を国会内で開いた。原口氏はPT終了後の記者会見で「言論のとりでを守るのに必要な法改正につなげることもプロジェクトの目的だ。政権と公共放送の距離は一つの論点になる」と述べ、経営委員の選任の在り方を念頭に、放送法改正も検討する考えを示した。

 

7日、安倍内閣は、鈴木貴子衆院議員(新党大地)の「NHK会長は公の場で政治的問題に自身の意見を述べることは許されるか」とする質問主意書への答弁で、慰安婦問題などをめぐるNHK会長の発言のあり方について「一般論として、一個人の立場から公の場で意見を述べることは当然ありうるが、その際には会長の地位にあることも踏まえた適切な言動が求められる」とする答弁書を閣議決定した。

 

NHKの籾井会長は7日の参議院総務委員会で、就任会見でのみずからの発言について、「個人的な見解を述べた部分はすべて取り消したい」と述べたうえで、放送法に沿って、不偏不党や公平公正を守り、公共放送の使命を果たしていく考えを示した。

この中で、社民党の又市幹事長は、NHKの籾井会長の就任会見に関連して、「歴史認識については、個人的な見解というのはあるかもしれないが、番組の編集方針については、編集責任者である会長の個人的見解というのはありえないのではないか」とただした。

これに対し、籾井会長は「NHK会長としての発言と個人の見解を整理しきれないまま発言してしまい、誠に申し訳ありませんでした。個人的な見解を述べた部分は、すべて取り消したい。具体的には、国会で指摘のあった従軍慰安婦の問題と特定秘密保護法、靖国参拝、番組編集権、国際放送の5項目だ」と述べ、改めて陳謝した。

そのうえで、籾井会長は「今後は公共放送のトップの自覚を持ち、放送法に沿って、表現の自由を確保しながら不偏不党、公平公正を守り、公共放送の使命を果たしていく所存です」と述べた。

 

在日米大使館の報道担当官は7日、毎日新聞の取材に、百田氏が東京都知事選の街頭演説で「南京大虐殺はなかった」などと語ったことについて「責任ある立場の人物は、地域の緊張をさらに悪化させるような発言を控えるよう望む」とコメントし、自制を促した。

また、百田氏が同じ演説で、原爆投下東京大空襲を「大虐殺」と位置づけ、東京裁判を「これをごまかすための裁判だった」と主張したことについては「ばかげた意見」と批判した。

在日米大使館(東京都港区)の報道担当官は8日、米政府の公式の統一見解とした。

 

自民党は10日午前の衆院予算委員会理事会で、民主党が求めたNHK経営委員の百田尚樹、長谷川三千子両氏の参考人招致も「個別の委員を呼ぶべきではない」と拒んだ。

 

籾井会長の発言問題で、2月10日夕までにNHKに寄せられた視聴者の意見の総数は1万5千件を超え、そのうち籾井氏の辞任を求める意見が約3300件を数えた。

都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくず」と呼ぶなどした百田氏に対しても約1200件の意見が寄せられ、その大半が厳しい意見だった。男女共同参画社会基本法を批判するなどした長谷川氏に対しても約800件の意見が寄せられ、やはり大半が批判的な内容だった。

 

米紙ワシントン・ポスト(電子版)は2月11日、歴史認識をめぐるNHKの籾井勝人会長と百田尚樹経営委員の発言を「破壊的な歴史否認主義だ」と問題視し、安倍晋三首相は2人の見解を明確に非難すべきだと主張する社説を掲載した。

同紙は「(従軍慰安婦は)どこの国にもあった」などとした籾井氏らの発言を取り上げ、「日本政府はなぜ明快に糾弾する気になれないのか」と安倍政権の姿勢を批判。「百田氏を指名し、籾井氏の起用を立案した(とされる)のは首相だけに、首相の責任は特に重い」と強調した。

 

みんなの党の浅尾慶一郎幹事長は12日、百田氏による東京都知事選の応援演説の発言を在日米大使館が批判していることについて、「発言がNHKの認識ではないと説明する責任がある。相手が納得するような形にならないなら、辞めていただくしかない」と述べた。

 

安倍首相は12日の衆院予算委員会で、NHK経営委員の百田尚樹氏が、東京都知事選での特定候補の応援演説で、他の候補を「人間のくず」などと発言したことについて、「ある夕刊紙は私のことを、ほぼ毎日のように『人間のくず』という風に報道しているが、私は別に気にしない」と皮肉混じりに答弁したうえで、百田氏の発言については「直接確認したわけではない」と述べ、「個人的に行ったことについて、政府としてコメントすべきではない」と論評は避けた。

 

「ある夕刊紙は…」愛読者の安倍首相、日刊ゲンダイを批判?(2014年2月13日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 安倍首相が12日の衆院予算委員会で、NHK経営委員の百田尚樹氏が都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくず」と表現したことを野党議員に追及され、「ある夕刊紙は私のことをほぼ毎日のように〈人間のくず〉と報道しております。私は別に気にしませんけどね」と笑いながら受け流した。

 どうも日刊ゲンダイを指しているようだが、権力批判や監視が命題のジャーナリズムとは違い、公人である百田氏の「くず」発言を笑いでゴマカすのには疑問が残る。もっとも、本紙は首相のことを「ボンクラ」「嘘つき」とは表現したが、一度も「くず」とは報じていない。

 麻生副総理と同様、熱心な本紙読者として知られる安倍首相。今後は2人一緒に細心の注意で熟読してもらいたい。

 

NHKの経営委員会(委員長=浜田健一郎・ANA総合研究所会長)が12日開かれ(非公開)、自決した右翼活動家を追悼文で礼賛した埼玉大名誉教授の長谷川委員と、東京都知事選候補者の応援演説で他の候補者について「人間のくず」などと発言した小説家の百田委員から事情を聴取したうえで、「公共放送の使命と社会的責任を深く自覚し、一定の節度を持って行動していく」などとする経営委員の言動についての見解をまとめた。同時に委員が「職務以外の場において、自らの思想信条に基づいて行動すること自体は妨げられるものではない」とする見解も確認。浜田健一郎委員長は終了後、記者団に対し「両委員の言動は服務準則違反に当たらない」との認識を示した。

ほかの経営委員からは「外から疑われない配慮も必要だ」「発言の際には相手に対する敬意も持つべきだ」「個人の思想信条の表明は自由とはいえ、NHKが損失を被った場合は責任が生じるのではないか」といった意見が出たという。

両氏の服務準則違反は否定した浜田氏だが、両氏や籾井勝人会長の言動を問題視する意見もあるため、「適度な緊張感を持ちながらNHKの経営に邁進(まいしん)するのが執行部と経営委の役割。そういう意味では、現在の状況はあまりよろしくない」と指摘。また、記者から「車の両輪であるべき」とされる執行部と経営委との関係について問われ、「今、機能していない」とも述べた。

長谷川委員は「自分の研究・執筆活動の基本姿勢は、常に根本から物事を考えて、反対意見にも耳を傾け、常識的な公式見解を疑ってみる目を持つこと。それが公正中立を旨とするNHKの経営委員会の役に立つと信じている」などと説明。百田委員も「個人的信条に基づいた行為は問題ないと考えているが、人のことを『くず』と呼んだのは、褒められた発言でなかった」と釈明した。

 

経営委員会が開かれている東京都渋谷区のNHK放送センター前では、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動(全国行動)が呼びかけた(2月1日に続いて第2回目の)抗議行動が行われ、籾井会長と百田、長谷川両経営委員の辞任を求めた。

行動には、「安倍首相の任命責任は重大」「NHK職員がんばれ!」などの思い思いのプラカードをもった80人が参加。「籾井会長は被害者に謝罪せよ!」「籾井会長、百田、長谷川両委員は即刻辞任せよ」とシュプレヒコールをあげた。

参加者がリレートークも行われ、NHK経営委員を2期務めた小林緑・国立音楽大学名誉教授も「首相の個人的なお友達ばかりが経営委員になったことはこれまでありません。一番のねらいはNHKの支配です。私もできる限り発言していきたい」と発言した。

また、韓国の元「慰安婦」女性の証言を翻訳・出版した女性は「元慰安婦の方々などの血のにじむような証言で歴史の事実を知りました。公共放送を私的に使う3人の方は辞任してください」と訴えた。

 

百田氏は12日、「民主党が百田尚樹の国会招致を要求していたが、自民党が拒否したらしい。実に残念や! 国会に出て、思う存分、喋りまくって、前代未聞の国会答弁をしてやろうと思ってたのに−。本当にがっかりや」と、ツイートした。

 

 

菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、NHKの最高意思決定機関・経営委員会が「一定の節度をもって行動していく」とする見解をまとめたことについて、「政府としてコメントすることは差し控えたい」としたうえで、「経営委員会は放送法に基づいて、その責務を果たしてほしい」と述べた。

また、百田氏のツイッターについて、「経営委員の個人的な問題に政府がいちいち口をはさむことはない」と語った。

 

安倍首相は13日の衆院予算委員会で、百田氏の「人間のくず」発言を、問題視しない考えを改めて示した。首相は経営委が経営委員について12日まとめた「経営委員としての職務以外の場で自らの思想信条に基づいて行動すること自体は妨げられない」「一定の節度を持って行動していく」などとする見解を紹介し、「NHKには放送法にのっとって取り組んでもらうことを期待している」と述べた。放送行政を担当する新藤義孝総務相も「委員は個別放送番組の編集業務を執行できず、個々の思想信条が番組に反映されることはない」と述べた。

一方、経営委の浜田健一郎委員長は予算委で、12日午後までに百田氏の発言に対して約1400件の反響がNHKに寄せられ、その8割が批判的意見だったと明らかにした。

 

籾井会長は13日、就任会見(1月25日)後の1週間延期されていた初めての定例会見を開いた。前回、私見として話した内容をすべて取り消すとしたうえで「済んだこと」「就任会見のことはあまり聞かないでいただきたい」と質問を拒む場面もあった。

籾井氏が質問に対して感情をあらわにしそうになると、土井成紀広報局長など事務方がとっさに回答したり、差し出されたメモを読み上げたり。事態の悪化を食い止めようと、職員が「一丸」となって2回目の会見を乗り切った。

具体的な取り消し部分を問われた籾井会長は「再び個人的見解に触れることになるので差し控えたい」と述べた。7日の参院総務委員会で従軍慰安婦問題▽特定秘密保護法▽靖国神社参拝▽番組編集権▽国際放送の5項目を取り消したことを指摘され、「国会でうそを言うわけにいかない」「国会で申し上げた通り」と認めた。就任会見で「オランダに飾り窓がある」と従軍慰安婦がいたと受け取れる発言について、「誤りでは」と事実関係をただす質問が出た。籾井会長はこれにも「控える」と回答しなかった。

質問のたびに、隣の上滝賢二理事から10回以上メモが渡され「個人的な意見は差し控えたい」と繰り返した。

最後は「大きく学んだことは私見を述べてはいけないと教えていただいたことだ」と、皮肉を込めて話し、軽く一礼して会見場を去った。

NHKによると、12日午後5時までに籾井会長の発言に対し、視聴者から電話やメールで約9600件の批判的意見が寄せられた。また、東京都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくずみたいなもの」と批判した百田委員については約1400件、長谷川委員については約1000件が寄せられており、ともに約8割が批判的な意見だった。NHKは「定例会見の通例」として動画撮影を認めなかった。

 

  

左;記者会見中に天を仰ぐNHKの籾井会長/右;同席したNHK職員から指示を受ける籾井会長

 

◆主な一問一答

 −就任会見での「個人的見解」。どこを取り消すのか。

 「既に取り消したところを説明することは再び個人的見解に触れる」

 −国会答弁で「記者が執拗(しつよう)に質問したのでつい述べた」と話した。

 「私は個人的な意見は申し上げないと言ったが、執拗に質問されたと理解している」

 −就任会見当日のNHKの7時のニュースで、発言が報道されなかった。

 (土井成紀広報局長)「報道の判断として対応した。それ以上でも以下でもない」

 −会長は判断に関わっていないのか。

 (土井局長)「申し上げる必要はない」

 −現場と話をして改善したいのか、報道陣の対応に問題があると考えるか。

 「コメントを控えます。報道陣に問題があると言えば皆さんが怒り狂うでしょうし、私自身に問題があるともなかなか言いづらい」

 −経営委員二人の意見についても「節度を持って行動する」との見解が出された。「放送法に準ずる」という公共性について、どう考えるか。

 「公平公正、不偏不党、表現の自由と書いてある。経営委員のことについてコメントする立場にないでしょう?」

 

自民党は14日、総務部会などの合同会議で、百田氏や籾井会長の発言をめぐり協議した。東京都知事選の応援演説で東京裁判に疑問を呈するなどの発言をした百田氏について「公共放送の信頼を損なう」といった批判があり、引き続き議論する方針を確認した。

出席した籾井氏は「自分が会長に選ばれた意義をしっかり踏まえて臨みたい」と続投に理解を求めた。会議では「批判をあおり、NHKが萎縮してはいけない」との擁護論も出た。

 

NHKがケネディ駐日米大使のインタビュー取材を米国大使館(東京都港区)に申し込み、調整を進めていたところ、百田氏の東京裁判や南京大虐殺をめぐる発言を理由に大使館側から難色を示されていたことが14日分かった。

NHK広報部は「取材・制作の過程に関わることについては回答を差し控える」とコメント。米国大使館は「大使のスケジュールはお話ししないことになっている」としているが、経営委員会委員の発言の影響が、報道の現場に及んでいることが明らかになったのは初めて。

 

籾井K会長が2月12日の経営委員会で、「取り消しているし、どこが悪いのか。素直に読めば理解できるはずだ」という趣旨の発言をしていたことが18日わかった。経営委内部では「反省していない」との声があがっている。

複数の関係者によると、委員会の最後に、ある女性委員が会長発言の影響について「受信料不払いなどのリスクにどう対処するのか」と質問。籾井会長は「営業が頑張る」と答えたのに対し、具体案を尋ねられた後、「(発言の)どこがおかしいのか」「会見の記録全体を見てもらえればわかる」という旨の持論を述べた。別の委員から「そういう物言いはおかしい」と反発する声があがり、浜田健一郎委員長がぶぜんとして「終わります」と委員会を打ち切ったという。

会議終了後、委員からは「浜田委員長が注意した意味がない」と懸念する声が出た。

 

自民党は18日の総務会で、2014年度NHK予算案を了承した。 

総務会には、NHKの籾井勝人会長が出席し、いわゆる従軍慰安婦問題に関する自身の発言について、「いろいろご迷惑をおかけした。今後は、しっかりと公共放送の会長として取り組む」と陳謝した。

 

籾井会長や百田氏の発言をめぐり米大使館が同局のケネディ駐日米大使インタビューに難色を示している問題で、籾井会長は19日の参院総務委員会における民主党の吉川沙織氏に対する答弁で、「取材や制作の過程については答えを差し控えたい」と述べ、発言による現場への影響について明言を避けた。

13日の定例記者会見で、自身の発言で大使館などへの取材が困難になっているケースについて「ないと思う」と説明していたこととの整合性もただされたが、籾井会長は「お答えできない」と同様の答弁を繰り返した。

 

日本共産党の吉良よし子参院議員は19日、籾井会長らを招いた総務委員会で発言の真意をただし、まともな答弁のできない籾井会長の辞任と、反社会的言動を行っている2人の経営委員の罷免を求めました。

吉良氏は、取り消した理由について「放送法に基づいて誤った認識だったからか」と問いただしたが、籾井会長は「不慣れな会見で、不適切な発言だったから取り消した」とだけ語り、不偏不党を柱とする放送法と、会長の持論との矛盾については答えなかった。

吉良氏は、そもそも戦前の国営放送が国民を戦争へと導いた反省から戦後の放送法が生まれたとして、「NHKの公共放送としての命は放送の政府からの自立にある」と指摘。「公共放送の原点を否定するような発言をした籾井会長は、NHK会長の任にふさわしくない」と主張したが、籾井会長は、視聴者の厳しい意見や海外の反響も理解していると述べた上で「会長職としての信頼を得られるよう努力する」と辞任を否定した。

吉良氏は、会長が辞めないのなら罷免する権限は経営委員会にあるとして、浜田健一郎経営委員長に認識をただしたのに対して、浜田委員長は「公共放送のトップとしての立場を軽んじた」と述べたものの、罷免については否定した。

吉良氏は、経営委員の百田、長谷川両氏の言動―公共の場で他者を「人間のくず」呼ばわり、反社会的人物の礼賛―を挙げ「個人の思想信条の域を超えています。こういう人物に公正・公平な判断ができるのか」と批判し、政府に「即刻罷免を」と求めた。

 

19日、百田、長谷川両経営委員の一連の問題発言に抗議・罷免を求めて、女性たちの首相官邸前・緊急リレートークがあった。「安倍首相の任命責任は重大」「歴史をゆがめる発言を許すな!」など書いた手作りのプラカードや横断幕を持った参加者たちは、「安倍首相はNHK介入をやめよ!」と訴えた。

リレートークトップバッターの新日本婦人の会の笠井貴美代会長は、一連の問題はNHKに介入し歴史観を同じくする者を任命した安倍首相に重大な責任があると指摘。「歴史をねじまげ、戦争やテロを賛美し、女性の人権をおとしめる人物を公共放送の意思決定機関に居座らせ続けることは、絶対に許されません。一日も早く両氏を罷免することを強く求めます」と訴えた。

ほかにも6人の参加者がハンドマイクで訴え。「なんのための公共放送なのか。戦争の反省に立ってできたNHKが、戦争を賛美する人たちを選ぶなんて許されない」「国際社会で孤立するなかで子どもを産み育てたくはありません。真実を報道できる公共放送であってほしい」と発言した。

 

籾井会長が1月25日の就任初日に理事らに辞表を預けるよう求め、会長の人事権を強調していたことが21日、分かった。現在までに任期途中で辞任した理事はおらず、辞表は籾井氏が預かっているとみられる。

関係者によると、1月25日午前、臨時役員会が開催され、籾井会長は就任のあいさつなどとともに「あなた方は前の会長が選んだ。今後の人事は私のやり方でやる」という趣旨の発言をし、辞表を預けるよう出席者に求めた。

 

21日、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」など7市民団体は東京都内で記者会見し、共にNHKの経営委員で、都知事選で応援演説した百田氏と、就任前に右翼の自殺を礼賛する追悼文を寄せた長谷川氏の罷免を求める要望書を、安倍晋三首相に提出したと発表した。申し入れ書では、2人の罷免を求める理由は、「公正、不偏不党の立場に立って、誠実にその職責を果たす」とした服務準則などに違反しているためとしている。

 

日本共産党の塩川鉄也衆院議員は21日、総務委員会で、NHKの政府からの独立についての認識をただし、この問題を理解しない籾井氏に対して辞職を求めた。

塩川氏が「個人的見解そのものを変えたのか」とただすと「ここで言うことは控えたい」と答え、本音は変わっていないことを浮き彫りにしました。

塩川氏は、放送法の目的は「健全な民主主義の発達に資すること」だと指摘。根本には国策を放送し戦争に加担した戦前のNHKの反省があるとし、「戦後政治の原点は、侵略戦争への反省を踏まえた日本国憲法だ」「民主主義の発展に貢献するNHKが政府からの独立を求められるのは当然だ」と主張した。

それに対し籾井氏は「戦前の反省に立ったかどうかは分からないが、今の形になった」などと述べた。

塩川氏は「安倍政権に迎合するような一連の発言は『政府からの独立』という立場と相いれない」と重ねて追及。籾井氏は「そういうことはない。政府からは何の指示も受けていない」と答弁した。

塩川氏は「(国際放送について)政府が右というものを左というわけにはいかない」という籾井氏の認識について改めてただしたが、「この場でコメントは控えたい」と繰り返すだけだった。塩川氏は「政府からの独立、公権力からの自立について無理解な籾井氏に、NHK会長の資格はない」と強調した。

 

籾井会長が、2月12日の経営委員会で「記者会見のテキストを全部見てほしい。私は大変な失言をしたのでしょうか」と持論を述べていたことが22日、分かった。

籾井会長は就任会見直後に会見での発言を「個人的意見だった。視聴者、各方面にご迷惑を掛けた」として撤回したが、経営委では自身の発言を肯定していたと受け取られかねない。

12日の経営委では、委員の一人が一連の事態への対策を質問。議論の最後に、美馬のゆり委員(公立はこだて未来大学 システム情報科学部教授)から「組織における危機的事態だ」と指摘された籾井会長は、「大変申し訳ない。発言の真意とはほど遠い報道がなされた。会見の記録を通読してほしい」と改めて陳謝した。受信料収入の減少や海外メディア向けの対策を聞かれると釈明に終始し、「会見の記録を見てください」と回答。美馬委員が「全部読んだ」と答えると、籾井会長は「それでもなお大変な失言をしたというのでしょうか」と、美馬委員に疑問を投げかけた。

今後の対応を再度尋ねられると、「放送で信頼を回復していくことが長い目で見た方向。収入減は営業でカバーする。対策をどうするかは正直よく分からない」。唐突に今後の就任会見のあり方について語り出し「その日(就任当日)(記者会見を)行うことは今後避けたい。やり方はもう少し検討させてほしい」と述べた。

 

籾井会長が、1月25日の就任初日に会長、副会長を補佐する理事10人全員に辞表の提出を求め、実際に提出させていたことが25日、分かった。衆院総務委員会で、参考人招致された理事全員が、事実を認めた。 経営委は当初、12日の議事録は28日にNHKのホームページで公開する予定だったが、世間を騒がせたとして、発言部分のやり取りを25日に公開した。

25日の衆院総務委に理事全員が参考人として招かれることが、24日夜までにNHK側に通告があり、25日早朝、籾井会長と理事たちは都内の放送関連施設に集まり、答弁内容の打ち合わせをした。午前に開かれる衆院総務委では、塚田祐之専務理事ら10人の理事全員に、籾井会長に辞表を提出させられたかどうかが質問される予定だった。

理事からは「国会では本当のことを言うべきだ」「ウソはつけない」などの意見が相次いだ。「人事案件であり、言うべきでない」と反対したのは1人だけだった。

籾井氏は「事実を話さざるをえない」との認識を示しつつも「おれに合わせて欲しい」といった趣旨の発言をした。理事から、会長と理事の立場は違うと意見も出て、大勢は決まった。

各理事に手渡された答弁用の紙には「理事としてのお考えでお答え下さい」と書かれていたという。

 

浜田委員長は「会長の努力を見守りたい」と述べ、3月に予定されるNHK予算の国会審議を乗り切り、事態収拾を図りたい考えを示した。

籾井会長は当初、理事に辞表の提出を求めたかどうかについて「人事上の問題であり、コメントを差し控える」と述べ、回答を避けていた。だが、理事らが日付を空欄のまま署名・押印した辞表を提出したことを明らかにすると、「事実をそのまま述べた。それはそれで結構」と述べ、事実であることを認めた。辞表提出を求めた狙いには答えなかった。

関係者によると、籾井会長は就任当日、理事らを前に、人心一新を図るかのような発言をし、理事に不安が広がっていた。任期満了前に辞任した理事はいない。籾井会長は2月で任期満了を迎える専務理事2人の再任を決めており、この日の委員会で「3月末という大事な時期を控え、2人の専務理事の力は必要と感じた」と再任の理由を述べた。

 

過去のNHK会長では、福地茂雄氏が就任時に理事らに要請し、辞表を集めたとされる。ただ現在とは、NHKが置かれた状況は大きく異なっていた。「当時はインサイダー疑惑などの不祥事が続き、視聴者による受信料不払いが懸念されていた。福地氏が辞表を集めたのには、『役員みんなに経営責任がある』という意味があった」。

また福地氏は任期中、若手職員の意見を積極的に取り入れ、営業の現場で成果を出した、たたき上げの職員を抜擢(ばってき)した。「福地氏は部下と融和的だったが、籾井氏は敵対的な関係しか作れていない」と、ある元NHK経営委員は話す。

 

籾井会長は、任記者会見での歴史認識をめぐる発言の責任を取って辞任するよう民主党委員から求められたのに対し、「放送法に基づいて公共放送の使命を果たしていくことで責任を全うしたい」と述べ、引き続き職務にあたる考えを強調した。

 

籾井会長に対し、会長の任免権を持つ委員会は25日、「言動を慎んで欲しい」と異例となる2度目の注意をした。一方、籾井体制を支える10人のNHK理事たちは同日、国会で答弁し、籾井氏に辞表を提出させられたことを、籾井氏の意向に反する形で明らかにした。

浜田健一郎委員長はこの日の経営委で、籾井氏に「就任会見以降、事態収拾にあたっている状況で再度誤解を招く発言をされたことは、ご自身の置かれた立場に対する理解が不十分といわざるをえません」と注意した。

籾井会長は「(1月25日の就任記者会見での発言について)真意とはほど遠い報道がなされ、真意、気持ちを理解してもらいたい一心で申し上げた」と釈明した。

 

 2月12日の第1207回NHK経営委員会で行われた、籾井会長の発言に関わる議事内容の一部(2月25日公表)

 

私からも一言申し上げたいと思います。放送法を守り、公平・公正な放送を行っていくという真意・気持ちを理解していただきたいという一心から発せられた一言であったとお聞きしました。しかしながら、就任会見以降、NHKとして事態の収拾にあたっている状況において、経営委員会で再度、誤解を招く発言をされたことについては、ご自身の置かれた立場に対する理解が不十分であると言わざるを得ません。一刻も早い事態の収拾に向けて、役職員一丸となり、誠心誠意、取り組んでいただくよう経営委員長として重ねて要請いたします。

 

 籾井会長からは、「一同一丸となって、誠心誠意努めてまいりたいと思います」と発言があった。

 

経営委は当初、12日の議事録は28日にNHKのホームページで公開する予定だったが、世間を騒がせたとして、発言部分のやり取りを25日に公開した。浜田委員長は「会長の努力を見守りたい」と述べ、3月に予定されるNHK予算の国会審議を乗り切り、事態収拾を図りたい考えを示した。 

 

籾井会長は、26日の衆院予算委員会分科会で、1月25日の就任初日に理事10人全員から辞表を取り付けたことについて、「辞表を預かったことで、(理事が)萎縮するとは思っていない。一般社会ではよくあること」と述べ、問題はないとの認識を示した。

新藤義孝総務相も「罷免するために辞表を得たわけではないと理解している。日付が入っていないので、辞表そのものに効力はない。心を合わせて頑張っていこうということ」と述べ、籾井会長を擁護した。

連日国会に参考人として招致される状態が続いていることについて、籾井会長は「異常な事態と認識している」と述べた。

 

日本郵政の西室泰三社長は26日、籾井会長が就任初日に理事全員に辞表を書くよう求めていたことに対し「私は、今まで勤めたのは3社目(東芝社長・東京証券取引所会長)で経済団体の活動もやっているが、(辞表の提出要求は)一般社会で常識的に行われているとは思っていない」と指摘した。

 

日本放送労働組合(中村正敏・中央執行委員長)は26日、籾井会長ら執行部に早期の事態収拾を求める声明をホームページで公表した。

声明は、籾井会長の就任会見から1か月が経過しても混乱が収束していないと指摘。「国会での議論も先鋭化しており、(NHKの)予算審議に影響が出かねない、

大変懸念すべき状況となっている」と強調した。

さらに籾井会長が理事全員に辞表を書くよう求めていた問題などにも言及。「取材や営業の現場で厳しい対応を受けることが増えている」と職員への影響にも触れ、編集権の在り方などについて「(執行部に)具体的な公式見解をあらためて示すよう求める予定だ」とした。

 

佐々江賢一郎駐米大使は26日の記者会見で、歴史認識をめぐる問題が日中・日韓関係の悪化に拍車を掛けていることに関し「(インターネット上では)双方の若い世代の間で不必要な感情のやりとりが見られる。古い世代には相手の感情を害するようなことをしないよう国を指導していく責任がある」と述べた。

南京事件を否定するなどした百田氏らの発言に懸念を示したとみられる。佐々江大使は「中国があらゆる機会を捉えて日本批判のキャンペーンを行っていくであろうことは想像に難くないが、感情的にならず冷静に対応していく必要がある」と強調した。

 

籾井会長は27日の衆院総務委員会で、就任初日に10人の理事全員に辞表を書くよう求めたことについて、民主党・福田昭夫議員が「理事全員が辞表提出を(国会で)認めたのは、株式会社と違って会長解任権のない理事が会長不信任を決議したのと同じ意味だ」と追及した。

これに対して同会長は、「役員としての覚悟を持ってもらうために、そういうことをお願いした。ただし、その辞表をむやみやたらと使って役員を脅すようなことはいたしません。取りも直さず、私の意向はどうであろうと、彼らが自由に自分の思っていることを言ったわけだ。これは私が何も強制していないことの証ではないかと思う」と述べた。また、「民間でこういうことをやることは特別なことではない」と話し、問題はなかったとの認識をあらためて示した。

福田氏はまた、籾井会長の就任会見でのいわゆる従軍慰安婦や特定秘密保護法をめぐる発言について、「発言を取り消し、反省しているというが、考えは全く変えていない」などとして辞任を求めたが、同会長は「私ももう71歳なので考えを変えるのは難しいが、自分の考えを番組に反映させることはない」「これまで以上に信頼の得られるNHKになるよう全身全霊で努めていきたい」と述べた。

民主党の奥野総一郎氏の会長発言に端を発した今の危機的状況についての質問には、「何らかの形で視聴者の皆様に説明する機会を設けたい。今はこういう状態なので、もう少し待って国内外に発信したい」と述べ、説明責任を果たす考えを示した。

経営委員の長谷川氏が、就任前の2005年に番組への不満から受信料の支払いを一時拒否した問題について、浜田健一郎委員長は「本人も反省している。問題はない」との認識を示した。菅官房長官も同日の記者会見で「経営委員として問題になるとは考えていない」と述べた。

維新の三宅博氏が、辞表の提出を求められた感想を出席した3理事に尋ねたところ、いずれも「指示に従った」と述べたが、森永公紀理事は「正直驚きました」と心情を語った。 

 

3月1日、武村元官房長官はTBSの番組「時事放談」の収録で、NHKの籾井会長の歴史認識などをめぐる発言をきっかけに混乱が続いていることについて、早期に決着を図るべきだと強調しました。

同氏は、「一番がっかりしているのは、NHKのスタッフ全員ではないですか、こういう人がリーダーにきて戸惑ってもいるし、信頼を置いて従っていこうという気持ちになれないのでは」と、述べ、連日国会で答弁を求められるなど、籾井会長の問題が職員全体のやる気に悪い影響を与える、と指摘し、早期に決着を図るべきだと強調したうえで、籾井会長の進退についても、「自ら判断すべきだ」と述べた。

 

籾井会長は3月3日の参院予算委員会で、理事10人全員から日付の入っていない辞表を集めたことについて、「自覚を持っていただきたかった。私が来たばかりだったので、『フレッシュな気持ちでみんなで一緒にやろう』という気持ちでお願いした」などと釈明した。

1月の就任記者会見での従軍慰安婦問題について「戦争しているどこの国にもあった」などと発言したことに関しては、「(記者から)質問を受けたため、そういうことを『言わされた』というのは言いすぎだが、そういうことで申し上げた」と語った。

 

弁護士や大学教授らのグループが3日、従軍慰安婦問題などをめぐる籾井会長の発言によって、公正な報道への信頼が裏切られたとして、会長宛てに辞任要求書を郵送した。辞任しない場合、一時的に受信料の支払いを停止するとしている。

辞任を求めているのは、大阪弁護士会の阪口徳雄弁護士や神戸学院大の上脇博之教授ら20人でつくる「NHKのあり方を考える弁護士・研究者の会」。

要求書は籾井会長の言動が番組編集に与える影響について、「(NHKの役職員が)会長の意向を忖度(そんたく)して報道する危険性が十分ある」などと指摘。就任会見以降の会長の発言や全理事に辞表を提出させた問題について、「NHKのニュース番組で何ら報道されていない」と批判している。

同会代表を務める神戸学院大法科大学院の上脇博之教授は、「籾井会長からは反省が全く感じられない。政府からの独立した放送が不安視される事態だ。公共放送のあるべき姿を訴えるためにも支払いを一時停止せざるを得ない」と話したうえで、支払い請求の裁判になった場合に備え、法的な検討も行っていると語った。

 

3月6日に放送予定のNHK総合の報道番組「クローズアップ現代」に、キャロライン・ケネディ駐日米大使が出演することが5日、分かった。テーマは「日米関係はどこへ〜ケネディ駐日大使に聞く〜」で、5日放送の同番組内で予告した。

番組の公式ホームページによると、安倍晋三首相の靖国神社参拝に端を発し、歴史認識などをめぐってぎくしゃくしている日米関係の行方について、ケネディ大使にインタビューする。

関係者によると、NHK経営委員で作家の百田尚樹氏による東京裁判をめぐる発言などを理由に、ケネディ大使への取材が難航していた。

 

籾井会長は3月6日の定例記者会見で、就任初日に、理事全員から辞表を取り付けた理由について、「それ(辞表取り付け)によって、醸し出す緊張感で一丸となってやっていくつもりだった」などと持論を展開した。

「私は外からきた人間。みんなと一体となるためには緊張感が必要だった」と説明。かえってそれが互いの信頼関係を損なうのではとの指摘には、「信頼関係はパッとできないし、不信も生まれない」と否定した。

さらに2005年に三井物産から日本ユニシス社長に就任した際、役員から辞表を取らなかったことを明かした。その理由を民間企業の役員(1年)の方がNHK理事(2年)より期限(任期)が短い点を挙げ、「マネジメントスタイルはいろいろある」と述べ、独自スタイルを強調した。人事権は「乱用しない」と繰り返した。自身の発言で業務が停滞している責任については、報酬返上や辞任の考えはないとしている。5日夕までに一連の発言などについてNHKに寄せられたメールや電話は約3万件に上り、うち約1万9000件が厳しい意見だった。

また、NHKの放送技術研究所や関連団体の不祥事が相次いでいることについて、籾井会長は「きわめて遺憾」と述べた。NHKの関連団体を対象に、外部の弁護士からなる会長直属の調査委員会を設置し、経理の適正化や再発防止に取り組む考えを示した。

 

NHK経営委員会は3月11日、籾井会長に対し、浜田健一郎委員長から2度注意を受けたことについて、「誠に遺憾である」との文書をとりまとめ、手渡した。NHK予算の国会承認を目前に控え、視聴者から寄せられる厳しい意見を受け止め、経営を行うよう促したもの。

浜田委員長は委員会終了後、「多様な意見がある中で、申し合わせができたことは意味がある」と述べたが、委員から辞任を求める意見があったかどうかにはコメントを避けた。

申し合わせは3項目。他は、委員会が一刻も早い事態の収拾に向けて、監視、監督機能を果たしていくことと、来年度NHK予算について、視聴者に対する説明責任を果たし、年度内の国会承認を実現すること。

 

NHKは、3月17日付で経営企画局の湧川高史(わきかわ・たかふみ)副部長を秘書室長に充てる人事を発表した。秘書室長は局長クラスのポストで、異例の昇進。現任の大槻悟秘書室長は同日付で人事局主幹に異動する。

湧川副部長は、1月25日の就任記者会見で失言した籾井会長に付き添い、国会や定例記者会見で質問への答弁書を渡したり、そばで助言したりした。

秘書室長は会長を含め役員の業務を調整するのが主な仕事。NHK幹部は「(湧川副部長は)会長と一心同体で国会対応をしてきた。秘書室長は理事らに、にらみを利かせる重要なポスト。会長の意向を反映させやすくするために一番信頼できる人物を据えたのだろう」と指摘している。

 

籾井会長は12日の参院予算委員会で、就任会見での従軍慰安婦などをめぐる発言を重ねて謝罪した上で「視聴者にも何らかの形で、きちんとおわびする機会を持ちたい」と述べた。自身が番組に出演して謝罪するとみられる。

 

NHK経営委員の構成をめぐり民主党の小西洋之氏が12日の参院予算委員会で、東日本大震災の被災地である東北地方の代表者がいないのは、人選の際に「全国各地方が公平に代表されることを考慮する」と規定した放送法に違反すると指摘したうえで、安倍首相に近い長谷川三千子、百田尚樹両経営委員を罷免するよう要求した。

小西氏は、安倍政権下で戦後初めて、経営委員会から東北代表者が不在となったと強調。「東北を代表する委員の代わりに、自分の友達を選んだ」と述べ、長谷川氏らの交代を迫った。

 

籾井会長は13日の衆院総務委員会で、「受信料の収納に影響が出たら、営業部門のみに対応をまかせるのではなく、私自身も含め、よい放送に加え、役職員一丸となって営業活動もやっていきたい」と述べ、自らも営業活動を行う意向を明らかにした。

同会長は、理事全員に辞表を書くよう求め、国会で「一般社会ではよくあることだ」と答弁した問題で、同日の衆院総務委員会で自身が社長を務めていた日本ユニシスでは役員に辞表の提出を求めていなかったことを明らかにした。

籾井会長は「私の知っている限りでは(日本ユニシスでは)そういうことはなかった」と説明。その上で「(辞表の提出を)やっている会社もあると思うし、やっていない会社もある」と述べ、発言を後退させた。

同会長は放送法で2年と定められている理事の任期に言及し「いずれは1年に変えてもらった方がよろしいのではないか」と持論を述べた。

 

同会長の発言に対し、12日までに視聴者から批判的意見が約2万600件、肯定的意見が約5900件寄せられた。今後、受信料の不払い増加が心配されており、問い合わせなども含めた全体(3万1900件)の約3割が受信料について言及している。

 

籾井会長は14日、参院総務委員会に出席し、従軍慰安婦に関する自身の発言や運営手法への批判に関して、「現場の地域スタッフからは、契約や収納の業務に支障が出ており、早急に事態の収拾を図ってほしいという声が寄せられている」と述べ、受信料徴収などに影響が広がっているとの認識を示した。

その上で「(事態が)収まったら現場に行って営業を一緒にやることも考えている」と述べた。ただ、時期を問われると「今外に出て行くだけの時間を与えられていない。国会に呼ばれており、それが減ったらやる」などと語った。

 

日本共産党の吉良よし子参院議員は14日参院総務委員会で質問に立ち、放送法に反する暴言を繰り返す籾井K会長を罷免するよう、同会長を任命した経営委員会の浜田健一郎委員長に求めた。

吉良議員は、籾井会長が一連の暴言を「取り消す」と繰り返したものの反省の態度が見られないこと、会長就任直後に全理事から辞表を提出させたことは「きわめて強権的で常軌を逸した行動」だと指摘。「最も民主的であるべき公共放送のトップの要件を著しく欠いている」と、籾井会長の罷免を要求した。

浜田委員長は、籾井会長に2度にわたって「注意」し、11日の経営委員会の会合で「誠に遺憾」とする申し合わせをまとめたと答えたが、罷免については「(籾井氏は)その反省にたって職務を執行することを期待したい」と明言を避けた。

また、吉良議員の追及で、今回の籾井会長問題に関する視聴者からの意見が3万2300件を超え、2004年の不正経理事件時に寄せられた5800件を大幅に上回ることが明らかになった。

吉良氏は、Jリーグが“差別横断幕事件”で浦和レッズに厳しい処分を下したことをあげ、「Jリーグの村井満チェアマンは『(差別的横断幕を)掲げた側の考えではなく、受け手がどう感じるかに目を向けるべき』だと指摘。より公共性が求められるNHKこそ、受け手の国民が声を上げていることに真摯(しんし)に耳をかたむけるべきではないか」と強調。改めて、籾井氏を「罷免する決断を下すべきだ」と訴えた。

 

籾井会長は17日の参議院総務委員会で、14日の同委員会で「私が私的発言をしたことで、これだけ糾弾されている」と答弁したことについて、「不適切な表現を使ったことについて撤回させて頂くとともに、深くおわび申し上げます」と述べ、謝罪した。

 

籾井会長は20日の参院予算委員会で、理事に提出を求めた辞表の取り扱いについて「書いていただいた理事一人一人の真摯な気持ちを考えると、返すわけにはいかない」と述べ、辞表を返却する考えがないことを明らかにした。

籾井会長は「人事権を乱用するつもりはない」と繰り返し答弁しつつ「実際に辞めていただくときには(理事)本人とよく話した上であらためて辞表をもらう」とした。

放送法によると、理事の任期は2年。会長が理事を罷免する場合には、最高意思決定機関の経営委員会の同意が必要となっている。

 

籾井会長は25日の衆院総務委員会で、理事全員に辞表の提出を求めた問題などをめぐり「一連のことについては視聴者に対して説明するつもり。いずれ適切な時期を見計らってやりたい」と述べ、番組への出演などを通じて理解を求める考えをあらためて示した。

 

結いの党と共産党は26日、NHKの2014年度予算案に反対すると発表した。野党では民主党、日本維新の会、生活の党、社民党を合わせ反対は6党となった。みんなの党は賛成する。6党は従軍慰安婦をめぐる籾井会長の発言などを問題としている。全会一致で承認されないのは06年度予算に共産党が反対して以来となる。

共産党の穀田恵二国対委員長は26日の記者会見で、籾井氏に関し「公正中立の立場から逸脱し、改める態度が見られない」と指摘した。4月からの消費税増税に伴う受信料値上げも「国民の負担増になる」と批判した。

 

NHKの2014年度予算承認案は27日午後の衆院本会議で、与党などの賛成多数により可決、衆院を通過した。民主党をはじめ野党6党は、従軍慰安婦などをめぐる籾井会長の発言を問題視して反対。みんなの党は賛成した。全会一致で承認されないのは06年度以来。

 

NHKの2014年度予算案は3月28日、参院総務委員会で自民、公明、みんなの各党の賛成多数で承認された。日本共産党、民主党、結いの党、日本維新の会、生活の党、社民党の6野党が反対、衆院に引き続き全会一致の承認ではなかった。同案は週明けの本会議にかけられます。

 

日本共産党からは吉良よし子議員が討論に立ち、「NHKが不偏不党の立場を貫くためにも、すべての会派によって支持されることが何より大切であり、その立場で慎重に検討してきた」と説明したうえで、この点で籾井会長の一連の言動は、健全な民主主義の発達や政府からの独立を旨とする放送法の趣旨の「不理解を示すもの」と指摘し、予算案に反対した。

委員会で吉良議員は3月7日のドイツ紙「フランクフルター・アルゲマイネ」に、NHKについて「外国の報道人たちはちゃかして『安倍テレビ』と呼んでいる」という記事があると紹介。「国会で『自分の考えを取り消したわけではない』と言い募る籾井氏では(こうした報道は)払しょくできない」として改めて辞職を求めた。

籾井氏は「個人的見解を番組に反映させることはない」「放送法に基づいた放送をする」と繰り返し、辞職を拒否した。

 

NHKの2014年度予算は31日昼の参院本会議で、与党と一部野党の賛成多数により可決、承認された。民主党をはじめとした野党各党は従軍慰安婦などをめぐる籾井勝人会長の発言を問題視して反対。みんなの党は賛成した。全会一致とならないのは06年度以来となる。

NHK予算審議は野党が籾井氏の発言に反発して審議入りが25日と大幅に遅れ、27日に衆院を通過した。

野党側は参院で、慎重審議を求めて採決を4月以降に先送りするよう主張。与党は消費税増税に合わせた受信料値上げのために3月中の国会承認が不可欠だと訴え、最終的に野党も応じた。

 

籾井会長は4月3日の定例会見で、同局の今年度予算が国会で全会一致で認められなかったことについて自身の発言の影響を認め、4月中にNHK総合の番組で視聴者に向けて謝罪と説明をすると明らかにした。

放送は大型連休前の予定で、収録番組だという。その理由について「(適切な言葉を使えないので)僕は生放送には耐えられないでしょう。NHKの会長ですから、耐えられるだけのスキルを持ちたいと思っているんですが、正直言って無理かなと思っています」と説明した。

また、籾井氏が欠席していた3月11日のNHK経営委員会で、上村達男委員長代行(早稲田大教授)から就任会見での発言を「NHKのトップとして(発言の)中身そのものが間違っている」と指摘されたことについて、「忸怩(じくじ)たるものもあったが、ああだこうだ言っても意味がないと思い、何も言わなかった。議事録にそういうことが載ることも残念」と述べた。

 

NHKは4月11日、籾井会長が、13日午前11時から放送される総合テレビ「とっておきサンデー」内で、一連の事態について視聴者に説明すると発表した。

籾井会長が国会で約束していたもの。収録番組で、冒頭の十数分間、籾井会長が出演する。さらにNHKの新年度予算と事業計画についても説明する。

籾井会長に対しては7日現在、視聴者からの批判的な意見が約2万5200件に上っている。

 

籾井会長は13日、午前11時から放送されたNHKのPR情報番組「とっておきサンデー」(総合)に出演し、就任記者会見での発言などについて「不慣れだったため、会長と個人の立場を整理しきれず発言してしまった。国会審議で多くの質問を受け、視聴者に大変、心配をかけた。こうした事態を招いたことを反省し、深くおわび申し上げる」と述べ、陳謝した。

籾井会長は、視聴者から意見の届くコールセンターや、契約活動を担当する営業センターを訪れ、職員から視聴者の反応などを確認したことを、自身が映った映像付きで説明。「今回いただいたご批判やご意見を真摯(しんし)に受け止め、自らを見つめ直し、全身全霊で職責を果たしていくことを誓う」と述べた。

その後、籾井会長はNHKの今年度予算や事業計画について説明。消費税増税に伴う受信料引き上げに理解を求めた上で、災害対策や震災復興支援、国際放送の充実などに取り組むとして、「不偏不党を堅持し、正確、迅速で公平・公正な情報、豊かで良い番組を届ける。公共放送の原点にたち、視聴者の期待と信頼に全力で応えていく」と述べた。

 

就任会見などでの一連の発言について謝罪と説明をした件で、同日から14日夕方までに約270件の意見が寄せられていることが分かった。うち4分の3にあたる約200件が批判的な内容だったという。衆院総務委員会で民主党の近藤昭一議員が質問し、同局理事が答弁した。

 

市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、籾井会長が4月中に自ら辞任しない場合、受信料を半年間支払わないよう視聴者に呼びかける運動をスタートさせることを、21日、NHKの担当者と面会し、通知した。

運動の特徴は、受信料の「不払い」ではなく「支払い凍結」。籾井会長が辞めた場合は、支払いを再開するとともに、滞納分も支払うように呼びかける。

市民団体には「受信料を払う気になれない」「口座の引き落としを止めたいがどうしたらよいか」という問い合わせが殺到しているという。

NHKの事業収入6997億円のうち、受信料収入は6725億円と96%を占める。単純計算でも契約者の1割が1カ月間“支払い凍結”しただけで56億円の収入が途絶え、NHKの業務はマヒしてしまう。かつてNHKのドンと呼ばれた海老沢会長も“受信料の不払い”が急増したことで辞任に追い込まれている。

また、視聴者コミュニティが他の6つの市民団体と共同で始めた3氏の罷免、辞任を求める署名も4月15日現在の集計で3万筆を超えた。

 

籾井勝人氏のNHK会長辞任を求める受信料支払い凍結運動を起こします

NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ運営委員会

 

「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」4月末日を期限とした籾井会長の辞任を求め、期日までに辞任しない場合は、向う半年間、受信料の支払いを停止する、「籾井氏の会長辞任を停止条件とする受信料支払い凍結運動」を起こすことにし、昨日報道関係者に発信しました。

 具体的には、今月21日、当会代表がNHKを訪ね、13時半から、他の団体と共同で取り組んできた籾井氏ほか3名の辞任を求める署名簿を提出する面会に参加したあと、引き続き14時から視聴者部ならびに経営委員会事務局と面会して、 

1.4月末までに籾井氏が会長を辞任する、又は罷免するよう求め、

2.この要望が受け入れられない時は当面、半年間の受信料支払い凍結運動を起こすことを通知する、

ことにしました。

 

NHKは4月22日、理事2人を再任し、2人を新たに理事とする25日付の人事を発表した。籾井会長が1月の就任時に理事全員から辞表を集めて問題視され、国会で「人事権を乱用しない」と言明。執行役員に相当する理事人事の行方が注目されていた。今回は24日付で任期満了となる4人のうち2人の退任にとどめた形となった。

NHKの最高意思決定機関、NHK経営委員会の浜田健一郎委員長(66)は22日の委員会後、記者団の取材に応じ「国会での議論を踏まえた判断」と同意理由を説明した。理事人事の同意は全会一致が慣例だが、今回は2人の経営委員が保留し、混乱が続いていることをうかがわせた。

新体制では板野裕爾理事(60)と福井敬理事(58)が再任。板野氏は専務理事に昇格する。井上樹彦編成局長(56)と浜田泰人技術局長(56)が新たに理事に就く。

規模こそ任期満了の4人分にとどまったが、主要な担務を再任、新任の3人に集約させており、籾井会長の意思が色濃く反映された。再任された板野氏は元経済部長。会長就任時の発言などをめぐり、籾井会長と理事の関係が冷え込む中、会長を支持する一人。業績評価の観点から、再任への慎重論もあったが、籾井会長が押し切った。

この板野氏を放送全般を統括する放送総局長に据え、国際放送も担当させる。元政治部長の井上氏は、経営計画策定の責任者である「経営企画統括」、福井氏は「人事・労務統括」を担当。籾井会長は「適材適所を基本とした」とコメントを発表したが、経営委では、担務の説明を求める委員に対し「会長の専権事項で経営委の同意は不要」と返したという。

理事人事は経営委員会の同意事項で、慣例で委員会の3日前に提案されてきたが、今回は当日提案だった。籾井会長は経営委に「情報漏えいを避けるため」と説明したが、十分な審議時間が取れなかったため、経営委は「事前提案するよう」会長に申し入れた。

 

NHKが22日に発表した役員人事をめぐり、籾井会長が同日の経営委員会を前に、2月に再任したばかりの専務理事2人に辞任を迫っていたことが分かった。2人はこれを拒否。退任する理事の1人が経営委で籾井会長の罷免(ひめん)を求めるような発言をするなど、異常事態が続いている。

NHKと経営委の複数の関係者によると、籾井会長は22日の経営委で、「塚田祐之(経営企画)、吉国浩二(人事・労務)両専務理事に対し、『3期目(1期2年)だから後進に道を譲ってほしい』と辞任を求めた」と説明したという。籾井会長は21日、理事と個別に会っていた。

会長の要求に対し、「国会対応など予算業務担当の継続」を理由に2月に再任された両専務理事は辞表の提出を拒否し、理事人事の同意権をもつ経営委の判断に委ねる姿勢を示した。

籾井会長は自身の就任会見での発言をめぐる国会対応に追われ2人を再任したものの、3月末に今年度予算が承認されたことで態度を変えたと見られる。

だが、放送法55条で「理事に適しない非行」などがなければ任期中の理事は罷免できないため、籾井会長はクビ切りを断念。22日の経営委に示した25日付の人事案では担務は大きく変わったものの、任期切れの理事4人のうち2人の退任という小幅なものになった。会長の考えに近いとされる板野裕爾理事を再任、専務理事に昇格させ放送統括と国際放送統括という重要任務を担わせた。

 

NHKは22日付で、籾井会長について、記憶力と行動面に問題があると報じた週刊新潮に対し、「記事は事実無根」などとする抗議文を送り、文書での謝罪と記事の訂正を求めた。

同誌は4月24日号で、籾井会長の就任後の行動に対し、関係者の間では記憶力に問題があるという懸念が広がっていると報じた。また、精神科医や認知症の専門医に取材し、認知症の可能性についても触れた。

 

NHKの石田研一放送総局長は23日の定例記者会見で、籾井会長の就任時に会長から集められた辞表が21日に返却されたことを明らかにした。

他の理事も同様で、返却理由は特に説明がなかったという。

25日から放送総局長の担当を外れる石田氏は、公共放送の在り方について「世の中全体に極端な意見が分裂し、難しい時代を迎えているが、そういう中でも社会に共通する課題をとらえていくことが大切。自由な発想で、様々な切り口から物事の真相に迫ってほしい」と述べた。

 

籾井会長は幹部を集めた4月30日の理事会で、放送法が定める公平性の原則について、放送全体を通して判断すべきだとする従来の政府見解を踏み越え「一つ一つの番組で、それぞれやるべきだ」という趣旨の放送現場への要求をした。

理事会では番組内容を検証する考査報告があった。籾井会長は4月の消費増税で不安を抱える高齢者を取り上げたニュース番組に対し、「(税率が)上がって困ったというだけではニュースにならない」「買いだめは無意味だと伝えるべきだ」という趣旨の発言をした上で、低所得者への負担軽減策の議論も紹介するよう求めた。

部下の理事たちは、「努力しており、いろいろな観点を、様々な機会をとらえて報道している」などと反論したが、籾井会長はあくまで同じ番組内で違う意見を取り上げるべきだと主張し、理事会は紛糾したという。

 

百田尚樹氏が、5月24日に開かれた自民党岐阜県連の定期大会で講演し「軍隊を家に例えると防犯用の鍵」とした上で、軍隊を持たない南太平洋の島国バヌアツやナウルを名指しで「家に例えると、くそ貧乏長屋で泥棒も入らない」とさげすむような発言をした。

24日は岐阜市民会館で自民党県連関係者を前に講演。「しっかりした自衛権、交戦権を持つことが戦争抑止力につながる」と持論を展開した。

名指しされたバヌアツは「地球上で最も幸せな国」に選ばれたこともある穏やかな国。ツバルも、平和を愛する国とだけ国交をもつという方針を掲げている。

 

籾井会長は、民間企業の夏の賞与にあたる期末報酬140万円を自主返上する。最高意思決定機関であるNHK経営委員会が今6月10日開いた定例委員会で籾井会長から申し出があった。

NHK会長の報酬は放送法が定める標準報酬をもとに、経営委員会による業績評価を踏まえて総合的に決まる。期末報酬は年2回、上期と下期に支給され、標準額は各280万円。今回返上する期末報酬は13年10月〜14年3月の業績を踏まえて支給されるもの。籾井会長は1月に就任したため、在任期間に応じた期末報酬140万円を受け取るはずだった。

 

7月15日、NHK定例会長会見が都内の同局で行われ、籾井会長は、期末報酬約140万円を辞退した件で「私の個人の思いと判断。事実を受け止めてほしい」とし、「理由は述べたくない」とかたくなに明かさなかった。

また、一部週刊誌に、番組プロデューサーが安倍首相の資金管理団体に献金していたと報じられた件で、吉国浩二専務理事は「個人の行為でコメントしない」としたが、「一般的に寄付を全面的に禁止していない。個人の思想信条は尊重されなければならない。ただ、公共放送の職員としての規範に基づいて行動してもらう。そういう風にしてくれていると思っている」と語った。

さらに、写真週刊誌に7月3日放送の「クローズアップ現代」に出演した菅義偉官房長官に対し、国谷裕子キャスターが集団的自衛権について鋭く質問したことについて、秘書官からクレームが入り、籾井会長が菅氏に謝罪したと報じられた。この報道について籾井会長は「そういうことはまったくない」と全面的に否定した。

 

NHKの退職者が7月18日、籾井勝人会長への辞任勧告か罷免(ひめん)を求めて経営委員会に申し入れをした。7月中に退職者1千人の賛同を目指しており、呼びかけ人には「ニュースセンター9時」のメーンキャスターを務めた勝部領樹氏、元アナウンサーの山根基世氏、斎藤季夫氏ら著名なOBや元幹部を含む172人が名を連ねている。

申し入れは、籾井会長の就任会見での一連の発言などを批判し、「政府支持の姿勢で公的に発言した人物が、NHKのトップに座り続けているという異常な事態」などと指摘。NHKの現役職員も困難に直面しているとして、放送法に基づく罷免を求めている。

 

7月22日のNHK経営委員会で作家の百田氏が「ニュースウオッチ9」でキャスターが「(在日コリアン1世は)強制的に連れてこられたり、職を求めて移り住んできた人たち」とした発言を問題視し、番組編集を担当する理事らに、「日韓併合後に強制連行は無かった」などと意見を伝えた。

百田氏は25日、朝日新聞の電話取材に応じ、「戦時の徴用を強制連行と呼ぶとは、事実関係を調べた上での発言なのかと理事たちに質問した。今後の対応も求めていない」「放送が終わった番組について感想を述べただけ。放送前の番組に干渉したわけではなく、放送法に抵触しないのは明白だ」と話した。

放送法は委員の個別番組への干渉を禁じている。放送前に意見や注文をすれば、番組内容の改編につながる恐れもある。放送後の番組でも、その後の番組内容に影響が出れば、放送法に抵触したと判断される可能性もある。

 

8月21日NHKの退職者有志は、NHK経営委員会に対し、籾井会長に辞任を勧告するか罷免するよう申し入れ、その後に代表7人が記者会見した。

退職者が集いNHKの問題に意見を発するのは初めて。かつての職場のトップに辞任を求める呼びかけ人と賛同者を合わせた有志が1527人にのぼるのも異例で、その思いをつづったはがきやメール、ファクスも多数寄せられた。

 

有志たちは辞任・罷免要求の理由として、「政府が右と言うのを左と言えない」など発言し、その姿勢を変えていない籾井氏が会長にとどまることは、政府・政治権力から独立した放送機関であるべきNHKにとって、重大な脅威となっていると指摘。さらにいまNHKで働く人たちが、会長の存在によって特別の困難に直面しているとしている。

 

申し入れ後に会見したのは、池田恵理子(元ディレクター)、大治浩之輔(元盛岡放送局長)、川崎泰資(元ボン支局長)、小池晴二(元美術デザイナー)、小中陽太郎(元ディレクター)、永田浩三(元プロデューサー)、村上信夫(元アナウンサー)の各氏。

 

会見では「(申し入れの趣旨は)同じ職場で働いた者の共通の気持ちだ」(大治氏)、「やむにやまれぬ思いで行動をおこした。現役職員にOBの気持ちを伝えたい」(村上氏)、「職員はいま恥ずかしい思いをしている。NHKが“大本営発表”と揶揄(やゆ)されるのは許されないことだ」(永田氏)などの声があがった。

 

これに対してNHK経営委員会の浜田健一郎委員長は8月26日、「退職者の1割が署名したというのは、少ない数字ではない」との認識を示した。ただ、対応については「推移を見守る」と述べるにとどめた。

 

百田尚樹氏はツイッターで、9月20日に死去した土井たか子社民党元党首に対し、9月28日に「売国奴」などと批判したうえで「(土井氏が)拉致被害者の家族の情報を北朝鮮に流した疑惑もある」とツイートした。

 

9月28日

土井たかこが死んだらしい。彼女は拉致などない!と断言したばかりか、拉致被害者の家族の情報を北朝鮮に流した疑惑もある。まさしく売国奴だった。

9月29日

1988年、拉致された石岡亨さんが命懸けで書いた手紙が日本にいる有本恵子さんの両親の元に届いた。まさに奇跡だった。両親は藁もすがる気持ちで土井たか子に手紙のことを訴えた。土井は相手にせず、逆に手紙の存在を朝鮮総連に知らせた。2ヶ月後、石岡さん有本さんは死亡したと北朝鮮は発表した。

10月10日

記者会見とかで言わずに、国会に呼べよ!

 

社民党の又市征治幹事長は10月9日の記者会見で、「そんな事実は全くないし(発言の)根拠も明らかでない」と反論。百田氏に対しNHK経営委員を辞任するよう求めたうえで、「公共放送の経営委員でありながら、中立性をおとしめる言動が続いている。他党と協力して辞任を求めたい」と強調した。

 

2015年

 

作家の百田尚樹氏(58)が、2015年2月末の任期満了をもってNHKの経営委員(定数12)を退任する。政府は百田氏を含む4人の経営委員の人事案を2月上旬にも国会に提示、衆参両院で同意を得たい考えだ。

百田氏は2013年11月、前任者の残り任期を引き継ぐ形で就任。この間、2014年2月には東京都知事選の街頭演説で、南京大虐殺はなかったとの持論を展開。応援している候補以外の候補について「人間のクズみたいなやつ」と発言したほか、同年9月には死去した社民党元党首の土井たか子元衆院議長について、短文投稿サイト・ツイッターで「売国奴」などと表現するなど問題発言を繰り返してきた。

 

籾井会長は2月5日の定例記者会見で、戦後70年にあたり従軍慰安婦問題について番組で取り上げるかを問われ「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」と述べ、政府が2015年8月にも発表する「戦後70年談話」の行方を見て判断する意向を示した。

また従軍慰安婦に関する政府見解は見直す余地があるかを聞かれ、「その手の質問には答えを控える」と述べた。さらに、答えない理由について問われると「しゃべったら、大騒動になる」とコメントを避けた。

 

日本ジャーナリスト会議(JCJ)と市民団体「放送を語る会」は2月10日、政府の方針に従って番組を制作することを表明したにほかならないとして、即刻辞任を強く求める要望書を同局に出した。

要望書では、NHKが政府から独立した放送機関であることや、放送法に不偏不党や番組が何人からも干渉、規律されることがないと定められていることを明記したうえで、「政権党の意に従うと宣言したに等しい」としている。2団体は同日、NHK経営委員会にも籾井会長の罷免(ひめん)を求める要望書を提出した。

 

NHKの経営委員会は2月10日、籾井会長の定例記者会見での発言について協議した。放送の自律を放棄したかのような会長の発言には、批判的な意見が多かったが、籾井会長は欠席だったため、浜田委員長(ANA総合研究所会長)が近日中に、真意を確認の上、改めて協議する。

委員会は非公開。委員会終了後、上村達男委員長職務代行者(早稲田大教授)は記者団に「記録を見た限りにおいて遺憾だ」と述べた。この日は執行部側からの提案事項がなかったため、当初から籾井会長は欠席予定だったという。

 

NHKを監視・激励する視聴者コミュニティも10日、「NHKの信頼を貶めるこうした言動を平然と繰り返す貴職に残された道は会長職を辞すこと以外にありません。当会は一日も早い貴職の辞任を強く要求します」との申し入れと、(1)NHKの内部文書で、「従軍慰安婦」問題では「強いられた」「性奴隷」という用語は使わないと記しているのは、安倍首相の見解を考慮しているか、用語採否の判断の根拠は何か(2)5日の会見の模様はNHKのホームページ(要旨)に掲載されているが、「従軍慰安婦」問題をめぐるやりとりが掲載されていないのはなぜか―との質問を提出、回答を求めた。

 

日本ジャーナリスト会議によると、3団体を含む7つの市民団体が2014年から集めている籾井氏らの罷免要求署名数は、7万2000を超えたという。

 

籾井会長は2月18日、民主党の総務・内閣部門会議に出席し、従軍慰安婦問題を巡る政府見解と番組作りについて、「河野談話」や「村山談話」を日本政府の公式見解と認めた一方で、「今のところはいいと思います。将来のことはわかりません。(当時と)政権が変わってですね、その人が『村山談話はいらない』と言うかもしれない」などと述べた。

籾井会長は「この夏にかけて様々な発言やニュースが出てくる中で、(番組作りは)慎重でなければならない」とする一方、「こういう環境の中で、政府の方針に従って放送しますとか言うわけもない」と発言した。またお笑い番組での政治風刺を巡り、「個人名を挙げてネタにするのは品がない」との考えも改めて表明。出席した国会議員からは「NHK内で、会長の考えを忖度(そんたく)する動きが広がる」と指摘する声が上がった。

また、籾井会長の過去の言動に出席者から批判が集中。籾井氏が「こんなことで呼ばれるのはごめんだ」などとけんか腰でやり返す場面があり、出席議員との応酬は1時間余り続いた。籾井氏が就任後にNHKの理事から辞表を集めたことを出席者が非難すると、籾井氏は「なぜ蒸し返して1年前に戻るのか」「あなたが言っているのはへ理屈だ」などと反論した。

 

民主党の安住淳国対委員長代理は同日午前の記者会見で、NHKの籾井勝人会長が2月5日の会見で、慰安婦を番組で取り上げるかどうかについて「政府のスタンスが見えないので放送は慎重に考える」などと発言したことを踏まえ、「政府の顔色をうかがって放送をつくるような発言をしている」と批判。その上で、「この方がいる限りNHKが培ってきた国民の信頼は揺らぐ」と語り、「会長として失格だ」と、辞任を求めていく考えを示した。

 

秋田市の市民グループ「マスコミ問題を考える秋田の会」は2月19日、「戦後70年−NHKの今」をテーマにした学習会を市文化会館で開き、市民ら約140人が出席した。

元NHKプロデューサーで、籾井勝人会長の辞任か罷免を求めるNHK退職者有志に加わる武蔵大教授の永田浩三氏(60)が講師を務めた。

永田氏は、籾井会長の言動を取り上げ「18日の民主党の会合で、戦後50年の村山談話について『今のところいい。将来は分からない』と発言した。ここまで時の政権におもねり左右される公共放送のリーダーはいなかった」と批判した。

過激派組織「イスラム国」が殺害したとするフリージャーナリスト後藤健二さん(47)=仙台市出身=と、番組制作を通じて親交があったことを紹介。事件の一連の報道について「安倍首相は外交上の失敗をしているのにもかかわらず、メディアは今日まで失政を指摘できずにいる」と言葉に力を込めた。

 

NHK経営委員会が2月24日開かれ、籾井勝人会長の言動を巡って混乱が続く状況を受け、会長ら執行部に対し、事態を一刻も早く収拾し、来年度予算案について国会で全会一致の賛成を得られるよう最大限の努力をするように求める申し入れをした。籾井会長に対する申し入れは2014年1月の就任以来、2度目。ほかに「注意」も2度あった。

 

籾井会長が5日の定例記者会見で、従軍慰安婦問題を巡る番組作りについて、「正式に政府のスタンスがよくまだ見えない」などと話したことが国会などで問題視されたが、籾井会長はこの日、経営委に対して「慎重に検討していかなければならないという趣旨」と説明。経営委では「政府に追随するとは言っていないが、真意が伝わっていない。誤解を受けるような発言には気をつけるべきだ」といった意見が出て、申し入れを決めた。

 

2月末で退任する見通しの上村達男・委員長代行はNHKのガバナンス(統治)を強化するために、監査委員会の運用を改善するべきだとする意見書を提出。また、「NHKの独立は強いものに対する独立で、少数意見を尊重することが大切だ」と報道陣に対して話した。

 

籾井会長は2月25日の衆院予算委員会で、民主党の総務・内閣部門会議で国会を軽視する言動があったなどと批判されたことについて「私の発言が不快な思いをさせたとすれば誠に申し訳ない」と謝罪した。

民主党の後藤祐一氏は「籾井会長は国会を場外と表するなど、国会を軽視する発言があった」などと指摘。籾井会長は「私一人で対応したので、ある程度の興奮状態にあった。国会を場外と言ったのではなく、訂正をお願いしたい」と釈明した。

 

NHK定例会長会見が3月5日、東京・渋谷の同局で行われ、籾井会長が、度重なる波紋を呼ぶ自身の発言は、話し方に問題があるとした上で「話術の勉強を、アナウンサー室にも籍を置いて勉強させてもらいたい」と語った。

籾井会長は、2月5日の定例会長会見で、戦後70年の節目に従軍慰安婦問題を番組で扱う可能性を問われ、「まだ正式に政府のスタンスが見えないので放送は慎重に考える」などと発言。これが自主的な放送を放棄すると解釈され、国会でも追及されたが、籾井会長は「(着任後)政府から1回も干渉されてません。偏った放送はしていない。放送に関して、天地神明にかけてそういうことはない」と語った。

さらに、誤解を招く原因について「私に問題があると思っています。私の発言が、いらんことまで付け加えちゃう。これは僕の話し方の問題だと思っている。今から話術の勉強をアナウンサー室にも籍を置いて、勉強させてもらいたい。冗談じゃなくまじめに思っている。私のしゃべり方が乱暴で皆さんを誤解させていることは心から申し訳なく思っています」と語った。

 

籾井会長が1月9日に開かれた国際放送番組審議会で、慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について「国の方針ではない」と発言していた。

籾井会長が国際放送の自主基準「国際番組基準」の一部を引用し、「日本政府の方針を正確に伝えなさいと書いてあるが、はっきりした方針は意外とない」と述べた。その一例として慰安婦問題を挙げ、「安倍首相が安倍談話を出せばこれは国の政策だが、河野談話はそうではない」と発言したという。

 

3月5日の衆院総務委員会で高井崇志氏(維新の党)がこの発言を取り上げた。籾井会長は「(2月18日の)民主党部門会議で、河野談話は『今は有効だ』と肯定した。ここで何を言おうが、もはや関係ない」と述べた。審議会の発言について否定はしなかった。審議会の議事概要は近く公表されるが、2月13日に委員に配布された文案では、籾井会長の河野談話についての発言は省略されていた。

 

日本ジャーナリスト会議と視聴者団体「放送を語る会」は3月9日、記者会見などでの度重なる個人的発言が問題になっているNHKの籾井会長の罷免を経営委員会に求める集会を東京都内で開き、全国の市民団体から約140人が参加した。

集会では、経営委員会による籾井会長の罷免を求める署名が7万4000件に上っていることを報告。参加者からは「就任会見での発言から1年たっても進化していない」といった声が上がった。

 

籾井会長が2015年1月2日、私的に名門「小金井カントリー倶楽部」にゴルフに出かけた際、ハイヤーを利用し、その代金をNHKがハイヤーの会社からの請求に基づいて代金を処理していたことが3月14日、わかった。自治体などの公的機関では立て替え払いは公私混同の温床になるとして、行ってはならないとされている。

内部通報で発覚し、経営委員で構成されている役員の不正行為などをチェックする監査委員会が調査を始めた。同委員会は経営委員3人で構成。必要に応じて調査を行い、経営委員会に活動内容を報告する仕組みになっている。

籾井会長は1月2日、東京都内のゴルフ場を利用。公用車は使わなかったが、別途予約したハイヤーを使用し、数万円の料金をNHKに請求させた。その後、公私混同を疑う通報が局内から寄せられたため、監査委が籾井会長らから事情を聞いていた。籾井会長は「当初から自分で払うつもりだった」と話しているという。

籾井会長は、NHK監査委員会が調査を開始した後に、料金をNHKに支払った。

監査委は3月24日の経営委員会で調査結果を報告する。

 

籾井会長は3月16日、参考人として呼ばれた参議院予算委員会で、NHKを通して発注した車両を私用で使っていたことを認めた。民主党の小川敏夫議員の質問に答えた。

籾井会長は1月2日、NHKが利用するハイヤー会社の車両を、「代金は自分で払う」として利用。NHKへの請求に籾井会長の私用分が含まれていて、会長のもとに請求書が来た3月9日、秘書室を通じて代金を支払ったという。ハイヤー代金を一時NHKが立て替えたかどうかは、「監査委員会が調査中。存じ上げない」とした。

 

菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、籾井会長のハイヤー報道について、「私が承知する限りにおいては全く問題がない」との認識を示した。一方で、「しっかり説明する責任はある」とも述べた。

 

3月17日、籾井会長のハイヤー代問題で、役員が業務の際に使用する乗車伝票が作成され、会長の業務に伴う支出として経理処理されていたことが分かった。料金は4万9585円で、籾井会長が代金を自己負担したのは、監査委員会側から支払いを促された後の3月9日だった。

籾井会長は「請求が来て金額がわかった時点で払った」と16日の参院予算委員会で答弁しているが、実態は求められるまで払っていなかったことになる。監査委員会は当初24日に予定していた経営委員会への報告を19日に開かれる臨時経営委員会で行う。

籾井会長は1月2日、東京都渋谷区の自宅と小平市の小金井カントリー倶楽部をハイヤーで往復。車両は午前7時に出庫し、約12時間利用した。伝票上は業務内容として「外部対応業務」と記され、籾井会長名のサインもあった。

NHK幹部は「職員が業務用の伝票を誤って作成したため会長に請求書が届くのが遅れ、結果的に監査委員会の調査後の支払いになった」と説明。NHKが普段利用する会社のハイヤーになった点については、「緊急事態への備えや安全上の配慮から別の会社にはできなかった」としている。

 

籾井会長は18日、民主党の総務・内閣部門会議に出席し、「ルールを犯したつもりはない」と述べた。

階猛(しな・たけし)議員が、業務用ハイヤーの私的使用について質問。NHKで経理担当の福井敬理事は「セキュリティー上必要性がある場合や緊急でやむを得ない場合は例外的に使用を認めている」と回答。籾井会長の場合が該当するかどうかは「(監査委員会が)調べている」と述べた。

 

経営委員会は19日、監査委員会から調査報告を受けた。監査委は、ハイヤーの手配や経費処理をした秘書室の対応を「ずさんだった」と指摘、会長に対しても「適切な指示を出すべきだった」との意見をまとめた。

報告書によると、籾井会長は2014年12月26日、新年のゴルフ大会に参加するためハイヤーの手配を秘書室に依頼。2015年1月2日に東京都内の自宅から小平市のゴルフ場をハイヤーで往復した。その後、秘書室は業務用の乗車票に会長の名前を記して配車担当に提出。2月27日にハイヤー代4万9585円が、他の代金とともにNHKからハイヤー会社に支払われた。籾井会長は今月6日に監査委員から事実関係を聴取され、その後、秘書室長を通じて支払った。

監査委は私用目的でも、NHKが手配するハイヤーを利用することは「否定するものではない」とする一方、「受信料で成り立つNHKにとって公私の区別はきわめて重要」として利用の在り方を検討するようNHKに求めた。2014年1月に就任以来、休日にハイヤーを利用したケースは他にないという。籾井会長は「自分で代金を支払うことを事務当局に伝え、公私の区別はつけていた。疑いが持たれる事態を招いたことについては、心よりおわびする」とのコメントを出した。

 

高市早苗総務相は3月20日、衆院総務委員会で、民主党の奥野総一郎議員が、立て替え払いはNHKの支出を制限する放送法73条に違反するのではないかと指摘したことに関連して「NHKは受信料によって業務が支えられている。ですから業務の遂行以外の目的に支出してはならない」と述べたうえで、「NHKおよび籾井会長は、公共放送の社会的責任の重さに鑑みて、視聴者から疑念をもたれることがないように、再発防止にしっかり対応して頂くことが必要」とした。

NHKの上田良一監査委員は放送法違反ではとの指摘に「現時点でコメントを控える」とした。

 

維新の党の江田憲司代表は3月22日、神戸市内で講演し、NHKの籾井勝人会長の私的なハイヤー代がNHKに請求されていた問題に関し、「個人的にはあの人は辞めてほしい」と述べ、籾井氏の辞任を求めた。国会で審議中のNHKの2015年度予算案についても、「NHKは外郭団体がいっぱいあり、天下りし放題だ。受信料を取ってこんな野放図なことをやってる」と述べ、反対する意向を示した。 

 

高市早苗総務相は3月23日の参院予算委員会の答弁で、NHKの籾井勝人会長の国会答弁を監督官庁である総務省職員が手助けしていたことについて、「答弁を手伝うような行為は不適切であり、心よりおわびを申し上げる」と陳謝した。民主党の小川敏夫氏が「試験監督官が受験生にカンニングの指導、協力をしているように思える」と質問したのに答えた。

高市総務相によると、3月16日の参院予算委で籾井会長が答弁に窮した際に、総務省職員がNHK職員に放送法の解説本を開いて渡していた。総務相は「職員には厳重に注意した。再発することがないようにしっかり監督していく」と語った。 

 

NHKの経営委員会は3月24日、ハイヤー代金立て替え問題で、監査委員会の報告を了解し、コンプライアンス意識を徹底し、再発防止策を徹底するようNHKに求めた。籾井会長に改めて注意などはしない。

 

籾井会長は24日の参院予算委員会で「まったく身に覚えのない、公私混同のぬれぎぬを着せられた」と述べた。

 

籾井会長が関連会社2社の不正を契機に自ら設置した「NHK関連団体ガバナンス調査委員会」(委員長・小林英明弁護士)の調査費が約5500万円だった毎日新聞が4月2日付で報じた。

委員会は2014年3月末に設置され、調査期間は8月までの5カ月間。委員会は小林弁護士ら3人で構成。補助者として加わった5人の弁護士を含め、いずれも小林弁護士と同じ事務所に所属している。

毎日新聞が入手した調査報告書によると、委員会は2件の不正についての内部調査を、資料などを基に再評価した。また関連会社・団体を含む全役職員に呼びかけ提供された27件の不正の疑いについて、約150時間かけて関係者や資料を調べた。その結果はA4判49ページの報告書と、同15ページの提言にまとめられた。NHKの国会などでの説明によると、弁護士に対する支払いは時間制で計算されており、総額契約ではなかったという。

第三者機関による調査のあり方に詳しい弁護士は、報告書を確認した上で「資料を基にした表面的な調査が多い。その割に支払われた額は法外に高いのではないか」と指摘する。

 

籾井会長は4月2日午前の参院予算委員会での民主党の福山哲郎氏への答弁で、NHKの報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑に関し、調査委員会を設置する考えを示した。籾井氏は「やらせがあったかどうか、表現の仕方が適切か先入観を持たずに調査を進めている。大きな問題なので徹底的に行いたい。途中段階でも何らかの形で報告したい」と述べた。

籾井会長が関連会社2社の不正を契機に自ら設置した「NHK関連団体ガバナンス調査委員会」の調査費については「小林弁護士ら3人の他にも5人の弁護士と16人の事務職が担当し(調査費は)5600万円余り。税を引いた4600万円余りを弁護士事務所に支払った」と明らかにした。通常より多額だとの指摘については「事務所の報酬基準で時間制で払った」と説明。個々の弁護士らの単価については「個別の契約に関するため、個々の単価までの公表は控えたい」と述べた。

 

NHKが4月14日発表した役員人事をめぐり、籾井会長が2014年に続き、専務理事2人に任期途中での辞任を迫っていたことがNHK関係者への取材で分かった。2人は拒否し、続投することになった。

辞任を迫られたのは塚田祐之、吉国浩二の両専務理事。2人は任期が1年残っているが籾井会長から9日に後進に道を譲るよう求められたという。

現在、塚田専務理事は営業統括など、吉国専務理事は広報業務統括などを担当しているが、今後は受信料支払率向上を目指す「ターゲット80」の統括補佐となる。

両専務理事は2014年4月にも、再任後2カ月で会長から辞任を迫られ、拒否している。

 

自民党の情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)が4月17日、報道番組でやらせが指摘されたNHKと、コメンテーターが官邸批判をしたテレビ朝日の関係者から事情を聴いた。

個別の番組内容をめぐり、政権与党がテレビ局に直接説明を求めるのは異例。

調査会にはNHKの堂元光副会長やテレビ朝日の福田俊男専務らが出席。冒頭、川崎会長が「二つの案件では自律性を持って両局が対応するのが放送法の基本だ」と述べた上で「どういう形で対応したのか話を伺いたい」と話した

 

NHKの堂元光副会長(左端)やテレビ朝日の福田俊男専務(同2人目)らが出席し、開かれた自民党の情報通信戦略調査会。奥右はあいさつする川崎二郎会長=17日午前、東京・永田町の党本部

 

沖縄・名護市での米軍基地建設をめぐるNHKの報道に瑕疵(かし)があるとして、各地の「NHK問題を考える会」の代表や研究者ら97人が20日、NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、NHK報道の不公平・不作為を正すための審議を求める要望書を提出した。

それによると、辺野古沖の米軍基地建設に関するNHK報道には(1)反対する沖縄の民意を伝えない(2)海上保安庁、沖縄防衛局の「過剰警備」の実態を伝えない(3)翁長雄志県知事との対話を拒み続けたのは政府側だという事実をあいまいにし、ゆがめた(4)「発表報道」への偏り、適切な課題設定と情報提供の放棄―という「黙過できない重大な瑕疵、放送倫理からの逸脱、報道番組としての質の劣化」があると指摘している。

要望書には、ジャーナリズム研究者の桂敬一氏、NHKを憂える運動センター・京都の隅井孝雄共同代表、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティの醍醐聰共同代表らが名を連ねている。

醍醐氏は「やらせ問題ばかりに関心が集まっていますが、もっと大事な国政の問題について十分な判断材料を視聴者に提供しているのか、という疑問があります。報道機関の使命について、BPOも正面から考えてほしい」と語った。

 

テレビ東京の高橋雄一社長は4月23日の定例会見で、自民党が17日にテレビ朝日とNHKの幹部から番組内容に関して事情聴取した問題について、「政権政党の力を持っている方が、番組内容に関してテレビ局の人間に話をさせ、圧力があるとかないとか臆測を呼ぶこと自体、決して好ましいことではない。そういう状況はできるだけ避けていただきたい」と話した。

高橋社長は「個別の問題についてのコメントは控えたい」としたうえで、「取材の自由や言論にかかわるものについて、そうした(聴取の)場を設定されると、呼ぶ側の真意にかかわらず臆測を呼ぶ」と述べた。

 

日本テレビの大久保好男社長は4月27日の定例記者会見で、自民党の情報通信戦略調査会(川崎二郎会長)がテレビ朝日とNHKの幹部を党本部に呼び個別の番組について事情聴取したことについて「極めて異例なこと。テレビへの圧力との疑念を持たれかねない、という新聞各紙の指摘は、全く自然な指摘だと思う」と述べた。

また、同党がNHKと日本民間放送連盟でつくる「放送倫理・番組向上機構」(BPO)に、政府が一定程度関与する仕組みを検討する構えを見せていることについては「適正な番組作りに各局は努力している。もし番組内容に問題があれば、BPOが調査し、勧告や意見を出す。現在のBPOは十分に機能している」との見解を示した。

 

私用ハイヤー料金の経理処理問題で、NHK経営委員会は4月28日、籾井会長に対して厳重注意を行った。3月の監査委員会報告に基づくもので、2014年1月の就任以来、籾井会長が経営委から厳重注意を受けるのは3回目。

また、この問題でNHKは同日、秘書室長を訓告処分とし、ハイヤー手配などを担当する秘書室の管理職2人を厳重注意した。秘書室を統括する堂元光副会長も、籾井会長から注意を受けた。

 

4月28日の経営委員会議事録が5月15日公表されたが、籾井会長は「納得できない」「何が問題なのか」と抵抗し続けた様子が記されていた。

 

議事録によると、浜田健一郎委員長(ANA総合研究所会長)が「自身の支払いが終了していないことについて、適宜、注意を喚起し、必要に応じ適切な指示を怠った」と厳重注意を宣告すると、籾井会長は意外そうに「それは私に対する注意か」と発言。3月19日の経営委で、監査委員会の調査報告を了解したことを挙げて「われわれの中では終わっているはず」と述べた。

さらに「(監査報告の)どこに私に責任があると書いてあるのか」と抗弁。浜田委員長は会長の責任を指摘する監査報告の一文を読み上げた上で「NHKは高い公金意識が求められる特殊法人なので(民間会社とは)大きな違いがある」。別の委員も「会長としては結果責任をとらないわけにはいかない」とたしなめたが納得せず、最後は浜田委員長が「厳重注意は委員会の総意。これ以上は議論しない」と打ち切った。

この日の経営委では、2月の民主党総務・内閣部門会議で籾井会長が、怒号が飛び交う議論を展開したことも問題視したが、籾井会長は「NHKを傷つけたとは思っていない」と主張した。

 

NHK会長 籾井 勝人 殿

 即 刻 辞 任 を 強 く 求 め ま す

                               2015年2月10日    

                             放送を語る会・日本ジャーナリスト会議

 

 2月5日の定例記者会見で籾井会長は、「戦後70年目の節目に従軍慰安婦について番組で取り上げる可能性について問われ、『(慰安婦問題について)正式に政府のスタンスがよくまだ見えない。慎重に考えなければならない』などと述べた」(2/6 朝日新聞)と報じられています。 この会長発言は事実上、「番組は政府の方針に従って作る」ことを表明したことにほかなりません。

 また、総選挙公示を控えた昨年11月20日、政権与党である自民党がNHK・在京民放キー局各社に、「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」なる文書を送りました。出演者の発言回数、時間、ゲスト出演者の選定、街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏ることがないよう公平・中立、公正を求め、報道内容に対し、露骨に、事細かに干渉するものでした。

 ところがNHKは自民党を庇い立てして、この文書を受け取ったかどうかさえ明らかにせず、その後、籾井会長が記者と懇談したとき、この文書を「あの通りだと思う」と発言し、支持していたことが発覚しました。1月30 日の衆議院予算委員会で民主党の後藤祐一議員の質問に対し、籾井会長は懇談会があったことを認め、その時の発言について否定していません。

 この会長発言は、総選挙報道に関する政権党の露骨な干渉に対し、唯々諾々と従うことを表明したことにほかなりませんNHKが受信料だけで成り立っているのは、NHKが政府から独立した放送機関であるためです。

 会長の二つの発言は、日頃「放送法遵守」をお題目のように繰り返す籾井会長が、実は放送法第1条「放送の不偏不党、表現の自由の確保」、第3条「放送番組は、何人からも干渉され、又は規律されることがない」に全く無理解で、自ら「放送の自主・自律」を投げ捨て、政権党の意に従うと宣言したに等しいと言わなければなりません。

 NHKには全役職員が遵守すべき「NHK倫理行動憲章」「行動指針」があります。「いかなる圧力や働きかけにも左右されることなく、みずからの責任において、ニュースや番組の取材・制作・編集を行います」と決められており、NHK内部からも「籾井発言は、倫理行動憲章違反」との声が出ています。憲章に従って仕事をしてきた職員を侮辱するものでもあります。

 籾井会長が「放送の自主・自律」を堅持すべき公共放送・NHKのトップ失格であることは明らかです。

 7つの市民団体が取り組んできた「籾井会長、百田・長谷川両経営委員罷免要求」署名は、現在7万2千筆を超えています。籾井会長には、視聴者の声に耳を傾け、即刻辞任するよう強く求めるものです。

 

 

浜田健一郎NHK経営委員長並びに経営委員各位

籾井勝人会長の即刻罷免を強く求めます

2015年2月10日

放送を語る会

日本ジャーナリスト会議

 

 2月5日の定例記者会見で籾井会長は、「戦後70年目の節目に従軍慰安婦について番組で取り上げる可能性について問われ、『(慰安婦問題について)正式に政府のスタンスがよくまだ見えない。慎重に考えなければならない』などと述べた」(2/6 朝日新聞)と報じられています。 この会長発言は事実上、「番組は政府の方針に従って作る」ことを表明したことにほかなりません。

 また、総選挙公示を控えた昨年11月20日、政権与党である自民党がNHK・在京民放キー局各社に、「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」なる文書を送りました。出演者の発言回数、時間、ゲスト出演者の選定、街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏ることがないよう公平・中立、公正を求め、報道内容に対し、露骨に、事細かに干渉するものでした。

 ところがNHKは自民党を庇い立てして、この文書を受け取ったかどうかさえ明らかにせず、その後、籾井会長が記者と懇談したとき、この文書を「あの通りだと思う」と発言し、支持していたことが発覚しました。1月30日の衆議院予算委員会で民主党の後藤祐一議員の質問に対し、籾井会長は懇談会があったことを認め、その時の発言について否定していません。

 この会長発言は、総選挙報道に関する政権党の露骨な干渉に対し、唯々諾々と従うことを表明したことにほかなりません。NHKが受信料だけで成り立っているのは、NHKが政府から独立した放送機関であるためです。

 

 会長の二つの発言は、日頃「放送法遵守」をお題目のように繰り返す籾井会長が、実は放送法第1条「放送の不偏不党、表現の自由の確保」、第3条「放送番組は、何人からも干渉され、又は規律されることがない」に全く無理解で、自ら「放送の自主・自律」を投げ捨て、政権党の意に従うと宣言したに等しいと言わなければなりません。

 NHKには全役職員が遵守すべき「NHK倫理行動憲章」「行動指針」があります。「いかなる圧力や働きかけにも左右されることなく、みずからの責任において、ニュースや番組の取材・制作・編集を行います」と決められており、NHK内部からも「籾井発言は、倫理行動憲章違反」との声が出ています。憲章に従って仕事をしてきた職員を侮辱するものでもあります。

 

 籾井会長が「放送の自主・自律」を堅持すべき公共放送・NHKのトップ失格であることは明らかです。

 7つの市民団体が取り組んできた「籾井会長、百田・長谷川両経営委員罷免要求」署名は、現在7万2千筆を超えています。視聴者の声に耳を傾け、放送法55条に基づき、籾井会長を即刻罷免することを、経営委員会に強く求めるものです。

 

NHK会長 籾井勝人 様              2015年2月10日 

同報

NHK副会長、専務理事、理事各位

NHK経営委員会 委員長、委員各位

 

2月の定例会見における籾井会長の発言に関する申し入れと質問

NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 籾井会長にはNHK会長という重責を担われ、日々、ご多忙のことと存じます。

 去る2月5日に開催された標題の会長会見において記者から、戦後70年の節目にあたってNHKは「従軍慰安婦」問題を取り上げる可能性はあるのかと聞かれ たのに対し、貴職は、この問題に関する政府のスタンスがなかなか見えない、夏にかけて政府のきちっとした方針が分かるのがポイントだろう、という趣旨の発 言をされたと伝えられています。

このような発言は、もはや、放送の自主、自立に対する外部からの干渉、介入というより、NHKが進んで政府の方針に順応することを明言した放送の自主、自立の放棄宣言に等しいと言わなければなりません。

そこで、当会は以下のような申し入れと質問を致します。

 

申し入れ

 

1.こうした発言は、NHKの特定のテ−マに関する番組編成は、そのテ−マに関する政府のスタンスを忖度しながら定めることになるという貴職の意向、考え方を会見の場で表明されたものと言えます。

 しかし、いうまでもなくNHKはいかなる権力、特に時の政権からの独立を生命線とする公共放送であり、国営放送でも政府広報機関でもありません。

 このような公共放送のイロハをわきまえない貴職の上記の発言はNHK会長として、あるまじき妄言であり、厳重に抗議するとともに、謝罪の上、直ちに発言を撤回されるよう申し入れます。

 

2.上記のような貴職の発言は、約1年前の会長就任会見で貴職が語られた「政府が右というものを左とはいえない」という発言と同根のものであり、多くの視聴者や識者から批判をあびた、公共放送の長にあるまじき愚かな見識が貴職の脳裏に染みついていることを証明したものです。

 NHKの信頼を貶めるこうした言動を平然と繰り返す貴職に残された道は会長職を辞すこと以外にありません。当会は一日も早い貴職の辞任を強く要求します。

 

質 問

 

1.イギリスのタイムズ紙(電子版)は、入手したNHKの内部文書(国際放送用「オレンジブック」)を取り上げ、この文書の中で、NHKは原則として「従軍慰安婦」問題について説明を加えない、「強いられた」「性奴隷」といった用語は使わない、と記していると伝えました。

これについて貴職は昨年11月の会長会見で「オレンジブック」なる文書が存在することを否定されませんでした。そこで、伺いますが、「強いられた」という用語は使わないという指針は、安倍首相が国会答弁等で「強制的に集められた」「従軍慰安婦」はいないという見解を表明していることを考慮して作成されたものですか?

 そうではなく、NHKの主体的判断でそうした用語を使わないことにしたのであれば、そうした用語採否の判断の根拠(NHKの歴史認識)をお示し下さい。

 

2.前記の2月5日の会長会見における記者と貴職の質疑の模様はNHKのホ−ムペ−ジの「NHKトップト−ク」に掲載されていますが、「従軍慰安婦」問題をめぐる記者とのやりとりは一切、見当たりません。この部分を掲載しなかった理由をご説明ください。

 上記の質問に対するご回答を2月20日までに別紙宛に文書でお送り下さるよう、お願いいたします。   

        以上

 

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放送の自主・自立を堅持する意思と資質を欠く籾井会長の即時罷免等を求める申し入れ書

NHK経営委員会 2015年2月10日

委員長 浜田健一郎様

経営委員 各位

                   NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

                    共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 

 経営委員各位におかれましては、「放送法」に基づく重責を担われ、日々、ご多忙のことと存じます。

  去る2月5日に開催されたNHK会長定例会見において籾井勝人会長は、記者から、戦後70年の節目にあたってNHKは「従軍慰安婦」問題を取り上げる可能 性はあるのかと聞かれたのに対し、この問題に関する政府のスタンスがなかなか見えない、夏にかけて政府のきちっとした方針が分かるのがポイントだろう、と いう趣旨の発言をしました。

 しかし、改めて指摘するまでもなく、NHKは自主・自立、特に時の政権からの独立を生命線とする公共放送であり、国営放送でも政府広報機関でもありません。

籾井会長が公式の会見の場で、放送の自主、自立を自ら放棄し「放送法」の基本原則を全否定するに等しい上記のような発言を行ったことは、籾井氏がNHK会長の職には堪え得ない資質の持ち主であることの決定的証しです。

 

さらに、強調しなければならないのは、今回の籾井発言は約1年前の会長就任会見で同氏が語った「政府が右というものを左とはいえない」という発言と同根のものだということです。このことは、籾井会長の脳裏に、放送の自主・自立よりも、政府の意向を忖度する思考が染みついていることを物語るものです。

しかも、籾井会長は会長就任会見における一連の暴言を「個人的見解」とかわし、今日に至るまで、その個人的見解を撤回しませんでした。

この意味で、籾井会長の「政府のスタンス」云々という発言は、会長就任当初から持ち合わせた公共放送と相容れない資質が表に出るべくして出たものといっても過言ではありません。

 

にもかかわらず、この1年間、浜田経営委員長は国会の委員会審議で委員から、経営委員会の会長任命責任と監督責任を質される都度、「籾井会長は放送法を遵守して業務の執行に当たると明言しているので、それを見守りたい」、「経営委員会としては、執行機関の今後の動きを監督し、助言し、必要に応じて苦言も呈して、委員会の職務を一層果たしてまいりたい」という答弁を繰り返してきました。(当会が衆参委員会会議録で調べたところ、本年1月末までに浜田委員長は前者の発言を延べ18回、後者の発言を延べ27回繰り返しています。)

 

ま た、経営委員も、この間、各地で開催された「視聴者の皆様と語る会〜NHK経営委員とともに」において、籾井会長の言動に対して参加者から出た厳しい意見 に対して、「籾井会長は、放送法を守って公共のための放送をこれからやっていきますということを再三明言していますので、籾井会長に私どもは頑張っていた だきたいと。経営委員会はしっかりと監視とか監督をやっていくということでご理解をいただきたいと思います。」

(2014年4月19日、佐賀県での語る会。石原委員)

「受信料をご負担いただいている視聴者の皆様、まさに視聴者の皆様を代表して執行を監視・監督するのが経営委員の役割でありますので、その点、もう一度自分たちの役割をはっきり再認識させていただいて頑張りたいと思います。」

(2014年5月24日、青森県での語る会。上田委員発言)

といった決意を表明されました。

し かし、「政府のスタンスが決まるのを待ってNHKの番組編成の判断をする」という籾井会長の発言は、政府の意向によってNHKの番組が規律されることを進 んで受け入れる意思を表明したに等しく、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定め た「放送法」第3条に真っ向から反するものです。

また、今回の籾井会長の発言は、「全役職員は、放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、すべての業務にあたる」と定めた「NHK放送ガイドライン」を会長自らが踏みにじるものです。

  これほどまで「放送法」、「NHK放送ガイドライン」に背く言動を繰り返す籾井会長に対しては、「放送法を遵守して業務にあたると言っているから」などと いうかばい立ては通じません。また、このような状況でなお、「執行機関に対する監督責任をしっかり果たしていく」などという口上は経営委員会の不作為責任 を糊塗する空言にすぎません。

 籾井会長に残された道は会長職を辞すこと以外になく、当人に辞職の意思が見受けられない以上、会長任免権者である経営委員会が一刻も早く、籾井会長を罷免するのがNHKに対する視聴者の信頼をつなぎとめる唯一の道です。

そこで、当会は貴委員会に対し、以下のことを申し入れます。貴委員会が自らの職責をこれ以上、懈怠せず、毅然たる対処をされるよう、強く求めます。

 

申し入れ 

1. 「放送法」第55条第1項(「経営委員会は、会長・・・・が職務の執  行の任に堪えないと認めるとき、又は会長・・・・に職務上の義務違反・・・・があると認めるときは、これを罷免することができる。」)に基づき、籾井勝人氏をNHK会長の職から罷免すること。

 そのため、すみやかに籾井会長の罷免を経営委員会の議題(協議事項)とし、慎重のうえにも迅速な審議をすすめること。

 

2. 浜田経営委員長は、上記罷免協議を主導的に進め、籾井会長罷免決議ができない状況に陥った場合は、経営委員長を自ら辞すること。

 

3. 今回、籾井会長から、NHKの自主・自律を貶める発言が出た一因として、経営委員が各地で開催された「視聴者の皆様と語る会〜NHK経営委員とともに」において参加者に約束した籾井会長に対する監督責任を果たしてこなかったことが挙げられる。

 また、浜田経営委員長が、国会で繰り返し明言した籾井会長に対する監督責任を何ら果たしてこなかった責任は極めて重い。

 こうした経営委員長以下、委員の任務懈怠責任に照らし、浜田委員長ほか全経営委員は本年上半期の期末報酬を全額返上すること。

 

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放送局「許認可権」政府支配の陳腐…欧米では独立機関が監督(2015年4月20日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 先週、自民党に経営幹部が呼び出されたテレビ朝日とNHK。抗議することもなく、ノコノコ“ご説明”に出向くところに、多くの識者が「テレビジャーナリズム存亡の危機」と呆れていたが、この問題の本質は、放送局の「許認可権」を総務大臣が握っていることだ。

 実は欧米では放送事業者の監督は、政府から独立した機関が行うのが主流。国際ジャーナリストの神保哲生氏がこう言う。

「米国はFCC(連邦通信委員会)、英国はオフコム(Ofcom=情報通信庁)と言いますが、いずれも政府から独立した監督・規制機関です。ところが日本は直接、総務省が監督する。この制度を変えない限り、政府による放送局のコントロールはなくなりませんよ」

 電波は国民の有限資産なので、日本の場合、放送局は5年に1度、総務相から放送免許の更新を受けなければならない。政府が気に入らないことがあれば、今回のように「放送法」を盾にして、暗に、更新拒否や免許取り消しをチラつかせることができてしまうのだ。

 政府が直接、放送局を監督する制度は、戦後のGHQによる占領が終わった直後に作られたという。

「戦前はメディアが軍部にコントロールされていた。そのため、GHQは『電波監理委員会』を作り、放送局の監督機関を政府から独立させたのです。ところが1952年4月、日本政府が施政権を回復すると、当時の吉田内閣は電波監理委員会をつぶし、逓信省の直接管轄に変えてしまいました」(神保哲生氏)

 独立した電波監理委員会は米国のFCCに相当するものだったが、日本政府は、これをわずか3カ月でお払い箱にしたのだ。政府のメディアコントロールへの、並々ならぬ執着が分かるというものだが、要するに「政府に弱い放送局」という力関係はいまだ戦前と変わらないということだ。

「放送局側にとっても、免許自体が『既得権』になっているので、その分、政治からの介入に甘んじているところもある。今回のことをキッカケに、制度をいじるいいチャンスだと思うのですが、どうもメディアの側にそうした問題意識は希薄です」(神保哲生氏)

 自制心があればまだしも、「私が権力者」と言い放つ政権である。テレビ局は、このまま圧力に屈し続けるのか。

 

NHKが裁判で「完敗」 全国で受信料“不払い一揆”の恐れも(2015年4月18日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 籾井勝人会長の私用ハイヤー問題や「ヤラセ報道」でテンヤワンヤのNHKに“新たな衝撃”が走っている。NHKが千葉・松戸市在住の男性(66)に対して受信料約18万円の支払いを求めた裁判で「完敗」したのである。

 判決が出たのは15日の松戸簡裁(江上宗晴裁判官)。裁判で、NHK側は2003年3月に男性が受信契約を結んだにもかかわらず、受信料を支払っていないと主張。これに対し、男性側は契約締結そのものを否定していた。

 江上裁判官は判決で、受信契約書に記載された署名と(裁判の)宣誓書に記載された男性の字体が一致せず、男性の妻とも筆跡が異なると認定。「受信契約を締結したものとは認められない」として、「放送受信料の支払い請求は理由がない」と結論付けたのだ。

 NHKは「判決内容をよく読んで対応を検討します」(広報部)と平静を装っているが、コトはそう簡単に済む話じゃない。受信契約書の筆跡が男性本人でなければ、一体、だれが男性の名を勝手に記入したのか。ヘタをすれば「私文書偽造」の刑事事件に発展しかねない大問題だ。

 勝訴した男性もこう憤る。

「私はNHKに契約書を見せてほしいとずっと言い続けてきたが、なぜか、NHKは契約書を見せませんでした。6年経って初めて契約書が提示されたのですが、おそらく私文書偽造の時効(5年)を迎えたからではないかと思っています。NHKも刑事事件を避けたかったのでしょう」

 男性の言う通りなら、NHKは契約書に勝手に個人名を書き込み、受信料を徴収しようとしたワケで、ヤクザ顔負けの悪徳手法だ。元NHK職員でジャーナリストの立花孝志氏がこう言う。

「判決で注目すべきは、裁判所がテレビを持っていても、契約書がなければ払わなくていい、と判断したことです。NHKは、テレビを持っていれば支払い義務は生じる、との姿勢ですが、それが否定されたのです」

 NHKの受信料不払いをめぐっては、全国各地で訴訟が起きているが、契約書がなければ支払う必要ナシということらしい。不払いが続出すれば、NHKの経営に打撃を与えるのは必至だ。

 

やらせ疑惑でも“昇格人事” NHK籾井会長「居座り」画策か(2015年4月17日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 NHKの籾井勝人会長の「人事」に、またぞろ批判の声が上がっている。例の「クローズアップ現代」のやらせ疑惑で責任を問われるべき幹部が昇格。その一方で、任期途中の専務理事2人に退任を迫るなど、散々バッシングされても開き直ってやりたい放題だ。

 やらせ疑惑のクロ現を取材したのは、大阪放送局の記者だ。ところが、NHK経営委が14日に同意した“籾井人事”では、坂本忠宣大阪放送局長が理事に昇格する。任期満了の理事4人のうち3人が交代するが、ただ1人再任された森永公紀理事も、報道担当としてクロ現問題に関わってきた。

 その一方で、籾井会長は塚田祐之と吉国浩二の2人の専務理事に辞任を迫ったと報じられた。この2人は昨年4月にも辞任を迫られ、拒否。今回も突っぱねたという。

「塚田氏は局内でも『公正な人』として知られた人物。籾井会長にすれば扱いにくい幹部でしょう。吉国氏は先月、国会で視聴者から籾井会長への苦言が殺到していることを明かしました」(NHK関係者)

 元NHK職員でジャーナリストの立花孝志氏がこう言う。

「民間の企業なら、監督責任を問われてしかるべき人物が昇格する。籾井会長は『人事のことだから』などと説明しようとしませんが、それではイエスマンだけを登用し、自分に従わない人間を粛清しようとしていると勘繰られても仕方がない。仮に、任期途中で辞任を迫った2人に相応の理由があるとしたら、籾井会長は事実を隠蔽していることになる。いずれにせよ、公共放送のトップの資質に欠けています」

■「ハイヤー」も「カラオケ」もカエルの面に水

 それでなくても籾井会長は「私的なゴルフのハイヤー代」問題を国会で追及され、新たに「受信料でカラオケ」疑惑まで浮上。ところがカエルの面に水らしい。

 「17年1月の任期まで居座るつもりでしょう。NHK会長の任免権は経営委にある。その経営委員は内閣総理大臣、つまり安倍首相が任命する。その安倍首相は、籾井会長が世間に叩かれれば叩かれるほど、意固地になって籾井会長をかばっています。籾井会長が強気に開き直るわけです」(官邸事情通)

 100万人単位の視聴者が受信料不払いとか、NHKの全職員がストを打つぐらいの大きな動きがなければ、モミジョンイルの独裁体制は続きそうなのだが、そんな開き直った者勝ちの世の中でいいのか。政治評論家の森田実氏が言う。

 「さしずめ籾井会長は、独裁者に祭り上げられた安倍首相の威を借り、権力者ぶっているキツネといったところでしょう。これだけシッポを出せば恥ずかしくて辞めるものですが、辞めない。責任を取ろうとしない。結局は安倍首相も籾井会長も同じ穴のムジナで、それは『粛々と』という言葉に表れています。『粛々と』というのは『あなたが何を言っても聞く耳は持たない』『ごり押しする』という意味です。国の指導層がこれでは、自分さえよければいいという風潮が、ますます国民に広がってしまう。ひとたびモラルが崩壊した国は、10年、20年では立ち直れませんよ」

 世の中は、ますます乱れていくばかりだ。

 

今度は受信料でカラオケ NHK籾井会長にまた不正経理疑惑(2015年4月16日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 今度は受信料でカラオケ!? 14日の参院総務委員会で、NHKの籾井勝人会長(72)が、昨年の紅白歌合戦の打ち上げ後、数人でカラオケへ行き、その代金を経費で落としていたことが明らかになった。

 打ち上げはNHK近くの東京・渋谷のカラオケ店で行われ、1月1日午前1時半から午前4時半まで、延々3時間に及んだという。朝ドラ「花子とアン」の脚本を担当した脚本家の中園ミホ氏とNHK職員4人が参加したという。

 しかも、籾井会長は紅白をナマで見てコーフンしたのか、「プロの歌を聞かせてやる」とカラオケに誘ったという話も流れている。

 委員会で、籾井会長は「(当日は)カラオケ店しか空いていなかった。1曲も歌っていません。NHKの業務に関係のある方と行った。問題ないと思っている」と憮然として開き直った。

 しかし、紅白の審査員を務め、疲れ切っている中園氏を朝方まで付き合わすこと自体が、そもそも常識外だろう。しかも、NHK広報からは「その場では誰も歌っていません」と、信じられない回答が日刊ゲンダイ本紙に返ってきた。

 その上、不正経理の疑いも出ている。14日発売のサンデー毎日の中で、中園氏が「私は(自分の分は)払った」と答えているのだ。これについてもNHKに確認したが、明確な回答が得られなかった。もし、中園氏の言い分が正しいなら、NHK職員のみのカラオケ代が、経費に使われていたことになる。

「NHKの職員が交際費を精算する時は、同席者全員の名前を書かなければいけません。職員だけの食事代が、経費として認められることは絶対にありえない。なにしろ、原資は国民からの受信料ですからね。仮に、中園氏に代金を払わせた上、精算で中園氏の名前を使ったなら、完全な“二重取り”で大問題です」(NHK関係者)

この問題に関しては「怪文書」がまかれ、局内もザワついている。籾井会長のあまりの公私混同ぶりを嘆くものだ。3時間のカラオケの後、籾井会長は会長車で帰宅している。果たして、これが「業務上の範囲」(NHK広報)の使用と言えるのか。

「カラオケのために、運転手を朝4時半まで待たせたことも、考えられません。普通にタクシーを呼べばいいだけの話で、完全にモラルが崩壊している。籾井会長には受信料の意識は皆無だということでしょう」(民主党関係者)

まさにやりたい放題とはこのことだ。受信料の不払いが加速することは目に見えている。

 

NHK籾井会長「ハイヤー不正発覚」の裏に薄汚れた内部抗争(2015年3月18日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 心証は真っ黒だと言わざるを得ない。16日の参院予算委で、公用ハイヤーの私的利用問題を追及されたNHKの籾井勝人会長(72)。当初は「完全なプライベートゴルフ(での利用)だったので、ただちに全額を払った」と事もなげに答えたが、すぐに“ゴマカシ”がばれた。それにしても、不正を告発した内部通報の内容は詳細だ。告発の背景にはNHK内部の泥仕合が影響している。

 籾井会長の不正は今年2月下旬に内部通報で発覚した。内容は1月2日に私的に行った東京・小平市のゴルフ場に公用ハイヤーを使い、その代金4万9585円(税込み)をNHKに支払わせたというもの。

 参院予算委で籾井会長は「秘書に自分で払うと言った」と言い訳しながらも渋々、事実関係をほぼ認めた。ハイヤー代を払った時期は「今年の3月9日」と答弁。支払先はハイヤー会社ではなく、会長の秘書室だった。つまり、1月2日に利用したハイヤー代を2カ月以上もNHKに立て替えさせていたのだ。

 内部通報がなければ払う気はなかったのではないか。そんな疑念がわいてくるのだが、驚くのは内部通報の中身が詳細を極めていたことだ。

 関係者によると、ゴルフの日程や、名門コース「小金井カントリー倶楽部」に出かけたこと。往復のハイヤーが普段の「白のレクサス」ではなく、別の車種だったこと。税込みの往復料金まで特定していた。

関連団体は“伏魔殿”

 発売中の「週刊現代」で今回の不正をリポートしたジャーナリストの森功氏は「内部通報者はNHKが籾井会長の私用料金をハイヤー会社に払ったのを確認してから告発に踏み切っています」と語った。内部通報は1人の調査によるものではなく、NHK内部の関係各所を通じた組織的な“籾井監視網”すらにおわせる。何としても“籾井潰し”を仕掛けたいという執念が伝わってくるのだ。

 「ちょうどNHK予算案の審議中にメディアに不正を“リーク”したことにも“籾井潰し”の強い意志を感じます。会長のプライベートのゴルフ日程まで知り得る職員は局内でもホンのわずか。会長は極めて近い職員に裏切られた可能性が高い。動機として有力なのは関連団体のガバナンス調査でしょう。籾井会長は就任早々、三井物産時代の旧知の仲で安倍首相とも親しい小林英明弁護士を投入し、関連団体の不正会計などを洗い出しています。籾井会長の数々の失言にNHK労組の反応が薄いのは、この調査方針を内々で支持しているからです」(元NHK職員でジャーナリストの立花孝志氏)

 NHKにとって関連団体こそ“伏魔殿”で、有力OBの天下りや不正支出などの温床になってきたという。

「関連団体を通じて“いい思い”をしてきた、身に覚えのある幹部やOBたちは戦々恐々で、何が何でも<籾井を潰せ>と躍起になっています。息のかかった職員を総動員して組織的に会長失脚のネタ集めに走っても、おかしくない状況なのです」(立花氏)

 近々、看板番組の不正が表沙汰になるとの情報も駆け巡っている。この騒ぎに便乗して“籾井潰し”の動きが過熱するのは間違いない。籾井会長はNHK予算案の成立と引き換えに自らのクビを差し出す状況に追い込まれるのではないか。籾井会長の進退問題は風雲急を告げつつある。

 

官邸が後任探し 受信料私物化でNHK籾井会長ついに更迭へ(2015年3月17日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 

 みなさまの受信料が、モミさまの遊びガネに消えていた──。失言と失態が続くNHKの籾井勝人会長(72)に決定的なスキャンダルだ。今年の正月、プライベートでゴルフの初打ちに出かけた際、わざわざNHKの公用ハイヤーを使い、往復料金を受信料で負担させていた。さすがに安倍官邸も公私混同の“厚顔会長”をかばい切れず、後任探しに動き出した。

 籾井会長の受信料の私物化は2月下旬、NHK関係者の内部通報で発覚した。現在、経営委員3人で構成する監査委員会が籾井会長らに事情を聴いているという。

 籾井会長は監査委に「あとで代金を払うつもりだった」と弁明。すでにNHKに代金を払ったとはいえ時期は監査委が調査を始めた後だ。安倍政権で相次ぐ補助金受給企業からの献金じゃあるまいし、カネを返せば済むと思ったら大間違いだ。

 発売中の「週刊現代」で、この疑惑を詳細にリポートしたジャーナリストの森功氏が言う。

 「NHKではハイヤー代など外部発注の支払いは翌月払い。正月の使用料なら2月払いです。私の取材だと、内部通報者はNHKが籾井会長の私用料金をハイヤー会社に払ったのを確認してから告発に踏み切っています。料金は税込みで4万9585円。籾井会長は“あとで払う”つもりなら、なぜ1カ月以上も放置したのか。なにより、遊びのゴルフなら、個人でハイヤーを頼んでその場で支払えばいい。内部告発がなければ、払う気などなかったという疑念は拭えません」

 恐らく籾井会長にも後ろめたさがあったのだろう。不正がバレないように“小細工”を弄した疑いがある。プレー当日、東京・小金井市の名門ゴルフ場「小金井カントリー倶楽部」を往復する際、普段は「白のレクサス」のハイヤーに乗っているのに、「わざわざ別の車種を用意させた」(関係者)というのだ。「あとで払う気だった」なんて、子供じみた言い分は通用しない。

 「政府が右と言うことに左とは言えない」

「政府のスタンスが見えないので、(慰安婦問題の)放送は慎重に考える」

 籾井会長は昨年1月の就任当初から「政治的中立」を定めた放送法に反して安倍政権ベッタリの失言・暴言を重ねてきた。そのたび「個人的見解だ」「アナウンス室で話術の勉強をする」などと言い逃れてきたが、今回の公金スキャンダルは「見解の相違」ではゴマカせない。

 18日に籾井会長は民主党の総務・内閣部門会議への出席を求められている。前回、2月に出席した時に参加議員から過去の暴言を糾弾され、「くだらん」と反発したアノ会議だ。出席すれば、今回のスキャンダルを激しく突っ込まれ、火ダルマとなるのは間違いない。

「いま国会はNHKの新年度予算案審議の真っただ中。国民から受信料を徴収して番組を制作・放送する公共性から、NHK予算は全会一致での年度内承認が大原則です。昨年は野党6党が籾井会長の資質を問題視し反対に回って、原則が8年ぶりに破れた。2年連続で全会一致が崩れれば、NHK史上初の異常事態です。さすがに経営委員会からも会長罷免の声があがるだろうし、後ろ盾の官邸サイドも籾井会長とは距離を置き始めているといいます」(森功氏)

 今回のスキャンダルを知り、安倍官邸が次期会長候補のリストアップを始めたという声も聞こえてくる。

 籾井会長には今が潮時。ボロボロになる前に潔く身を引くべきだ。

 

元「NHK担当」参院議員がズバリ「経営委員はクビにすべき」(2014年3月20日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 「長谷川三千子さん、百田尚樹さん、この2人の経営委員は放送法第36条が規定する罷免要件に合致する。安倍首相は即刻罷免すべきです」

 こう言うのは、民主党の小西洋之参院議員(42)だ。小西議員は元総務省のキャリア官僚。麻生太郎が総務大臣だった当時、放送政策課の課長補佐としてNHKを担当し、経営委員の候補者の人選もした。いわば“放送法のエキスパート”だ。その専門家が「罷免すべき」というのだ。

 「長谷川委員は、日本国憲法は全くめちゃくちゃ、日本近代史上最大の汚点だと、ご自身の著書などで主張しており、そもそも放送法31条1項の<公共の福祉に関し公正な判断ができる者>という任免要件にまるっきり違反している。また、朝日新聞社であった右翼団体幹部による言論テロを賛美し、象徴天皇制を否定したこともある。しかも、2月12日に行われた経営委員会の調査で、これらの見解を撤回していないのです。これは、NHKが内規で定めた『信用失墜行為』にあたり、放送法36条の罷免要件『職務上の義務違反』に該当する。経営委員の唯一の任命権者であり、罷免権限を持つ安倍首相は即刻、長谷川委員を罷免しなくてはなりません」

 百田氏の場合は、もっと単純明快だという。

「百田委員は都知事選で、田母神俊雄氏の対立候補だったかつての首相、厚労相、日弁連会長を、『人間のクズ』とマイクの大音量で言いました。公衆の面前で、人を『人間のクズ』と罵倒する行為は、刑法の侮辱罪にあたり、それは放送法36条の罷免要件『委員たるに適しない非行』に該当します」

 しかも、長谷川氏と百田氏が経営委員に居座っているせいで、憂慮すべき事態が起きているというのだ。

 「昨年11月の“安倍人事”によって、戦後初めて、NHKに東北地方を代表する経営委員がいなくなりました。放送法は31条1項で<委員の任命にあたり、全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない>と定めています。全国放送として、各地方の事情に通じた人物をバランスよく委員にするための規定ですが、被災地である東北は、今、もっとも公共放送の支援が必要なエリアといえます。だから、もし、私が総務省の官僚で東北の委員を候補者から外したら、上司から<おまえクビだ>と厳しく叱責されたでしょう。ところが、安倍首相は日本国憲法を否定するような人物を委員にするために、東北出身の委員を外してしまった。放送法違反を犯したとともに、被災地を切り捨てたのです」

 一刻も早く、アベ様から皆様のもとにNHKを取り戻さなければならない。

 

慣例なのに暗雲 共同通信加盟社がNHK籾井会長に「NO」(2014年3月8日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 メディアによる包囲網が敷かれるのか。NHK・籾井会長の不規則発言が、思わぬところに波及した。共同通信社の理事会が籾井氏の処遇に頭を悩ませているという。

 一般社団法人の共同通信社は、「社員」である全国56の加盟社(NHKと新聞55社)の社費(会費)で維持運営されている。主要加盟社の代表を中心に構成される理事会が最高意思決定機関だ。

「NHKの歴代会長は慣例的に共同通信社の理事を務めています。理事の選任には社員総会の決議が必要ですが、これまではNHKトップが交代すれば、ほぼ自動的に後任理事に決まり、6月の定時社員総会で正式決定されてきた。ところが、籾井会長の資質を問題視して、『理事就任は認められない』と反対する社が出てきたのです。それで、3月に臨時社員総会が開かれることになったのですが、もし理事就任が認められないなんてことになれば、前代未聞の大事件です」(共同通信関係者)

一般社団法人の理事は、定款に別段の定めがある場合を除き、「総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数をもって行われる」のが通例だ。

■理事就任否決は「3・20」?

 共同通信社に「選任には社員全員の承認が必要なのか、過半数か」「籾井会長の承認に反対を表明しているのは何社か」「過去にこのようなケースで臨時総会が開かれたことはあるか」など質問したところ、書面でこう回答があった。

「3月20日に臨時社員総会が開かれます。議題は『理事1名選任の件』です。それ以上のことは、一般社団法人共同通信社の運営に関する事項であり、対外的に広報するものではありません。(反対を表明している社については)承知しておりません。過去の臨時社員総会については、運営に関する事項を含むため、公表できません」

 籾井氏の理事就任に、反対しているとされる加盟社の社長に取材を申し込んだが、「個別の案件についてコメントは差し控える」とのことだった。

 臨時総会では、どのくらい就任反対が出るのか見ものだ。社説などで「トップの資質が問われる」とさんざん書いてきた加盟社はどうする? そこはダブルスタンダードで、社団法人のトップである理事就任は黙認するのか。

 籾井氏の資質とともに、メディアの見識も問われる。

 

籾井NHK会長は辞任を(2014年3月6日配信『しんぶん赤旗』)

 

世論と運動 急拡大 「政府寄り」「間違った歴史認識」

 NHKの籾井(もみい)勝人会長の罷免・辞任を求める市民の声が急速に広がり、運動が活発になっています。

 「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」や関西の市民の会など7団体は、籾井勝人NHK会長と、百田尚樹、長谷川三千子両経営委員の罷免を求める署名用紙を作成し、活用を呼びかけました。

 署名の訴えでは、日本軍「慰安婦」問題など事実に基づかないばかりか過去の戦争への反省もない籾井会長の発言を批判。「公共的な放送機関のトップにはまったくふさわしくありません」として、任免権を持つNHK経営委員会に籾井会長を罷免するよう求めています。

 また、かつての日本の侵略を否定する一連の発言を続けている百田氏と、右翼テロを礼賛する長谷川氏については、放送法に照らして委員失格であると指摘。任命者である安倍首相に対し、両氏の罷免を要求しています。

 新日本婦人の会(笠井貴美代会長)は、各県のNHKを訪問して懇談、会長の辞任を申し入れています。

 また、大阪の阪口徳雄弁護士や上脇博之・神戸学院大大学院教授らで構成する「NHKのあり方を考える弁護士・研究者の会」は3日、籾井会長宛てに辞任を求める申し入れ書を送付しました。

 NHKに視聴者から寄せられた会長問題にかかわる意見は2万2400件(2月25日集計)。広報によると62%が批判的で、「公共放送のトップにふさわしくない」「考え方が政府寄り」「間違った歴史認識だ」「偏った放送にならないかと心配」というのが主なものです。

職員からも辞任求める声

「資質疑う」「視聴者のみなさんと同じ思い」

 NHKの籾井勝人会長の辞任を求める市民の声が沸騰する中、NHK職員の間から「私たちも視聴者のみなさんと同じ思い」と呼応する意見が出ています。

ニュースで削除

 籾井会長が就任したのは1月25日。午前11時から職員に対して会長就任の弁が披露されました。土曜日でしたが、職員は回線を通じて全国どこの放送局でも視聴できるようになっていました。

 職員によると「放送法にもとづいてやっていくこと、ボルトとナットを締め直すこと」が強調されていたそうです。

 問題の発言が出たのは午後の記者会見でした。国際放送では「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」、日本軍「慰安婦」については「どこの国にもあったこと」、「秘密法は政府が必要と説明しているので、様子を見るしかない」。

 NHKのニュースはこの部分を削除して記者会見の模様を伝えました。職員たちの多くが会長発言の中身を知ったのは、新聞や民放テレビのニュースでした。

 「会長としての資質を疑う」「籾井会長を守ろうという気持ちにはなれない」。そんな思いが職員の間で広がっていきます。

 籾井氏は三井物産副社長、情報通信技術を扱う日本ユニシス社長などを経てNHK会長に。同郷の麻生太郎副総理が推したとされています。昨年末、経営委員に安倍晋三首相寄りの4人が新たに選ばれたのに続いての人事でした。

 NHK幹部職員は語ります。「安倍政権に連れてこられた人物が、公共放送が何たるかも知らず、放送の公平や自律についても根本的に認識がないことをさらけ出した」

 2月21日、10人の理事全員に辞表を書かせたことが明らかになりました。職員の中には「では、私たちも全員書こうか」という皮肉まで飛び出しました。

信頼つなぎたい

 「ニュース7」「ニュースウオッチ9」は、政権寄りの傾向が強いと視聴者から大きな批判が続きます。

 一方で、「ETV特集」「NHKスペシャル」などには支持される番組もあります。連続テレビ小説「ごちそうさん」は戦時中、官憲にささやかに抵抗するNHK職員の姿も描かれ、注目されました。番組の制作現場では、「公共放送として信頼される番組をつくることで信頼をつなぎとめよう」という思いが強まっているといいます。

 会長を罷免できる権限を持つのは経営委員会だけです。

 NHK関係者は「政権は辞めさせる対応はしない。そのときに効いてくるのが市民の力。職員が市民と結んで、辞めさせることができないか」

 かつて、制作費流用の不正で、2005年に海老沢勝二会長(当時)を辞任に追い込んだのは視聴者からの辞任要求でした。

 

これが歴史の真実 成り立たない「靖国」派の言い分(2014年3月6日配信『しんぶん赤旗』)

 

南京大虐殺は「なかった」 百田発言は世界の非常識

   

 「1938年に蒋介石が日本が南京大虐殺をしたとやたら宣伝したが、世界の国は無視した。そんなことはなかったからです」。NHK経営委員の百田尚樹氏は東京都知事選の応援演説で言いました。一部マスメディアもこの発言を肯定する論説を掲載しました。本当はどうだったのか。

世界のメディアが当時も残虐性批判

 南京大虐殺(南京事件)は、1937年12月、中国への侵略戦争の中で旧日本軍が当時の中国の首都・南京を攻略・占領し、中国軍兵士だけでなく、捕虜や一般市民を虐殺した事件です。女性の強(ごう)姦(かん)、略奪をはじめ数々の残虐行為が行われました。

 虐殺のとき、南京にいたジャーナリストは、それぞれが惨状を記事にしています。

 ニューヨーク・タイムズのF・T・ダーディン記者は「大規模な略奪、婦人への暴行、民間人の殺害、住民を自宅から放逐、捕虜の大量処刑、青年男子の強制連行などは、南京を恐怖の都市と化した」「犠牲者には老人、婦人、子供なども入っていた」「なかには、野蛮このうえないむごい傷をうけた者もいた」(37年12月17日電)、「塹壕(ざんごう)で難を逃れていた小さな集団が引きずり出され、縁で射殺されるか、刺殺された」(同年12月22日電)と報じています。

 シカゴ・デイリー・ニューズのA・T・スティール記者は「(われわれが)目撃したものは、河岸近くの城壁を背にして三〇〇人の中国人の一群を整然と処刑している光景であった。そこにはすでに膝がうずまるほど死体が積まれていた」「この門(下関門)を通ったとき、五フィート(約一・五メートル―訳者)の厚さの死体の上をやむなく車を走らせた」(37年12月15日電)、「私は、日本軍が無力な住民を殴ったり突き刺したりしているのを見た」(同年12月14日電)と報じます。

 イギリスの新聞マンチェスター・ガーディアンの中国特派員H・J・ティンパーリーは報道した内容をもとに『戦争とはなにか―中国における日本軍の暴虐』をまとめ、38年にロンドンとニューヨークで発行しています。

 事件当初から、「世界は無視をした」どころか、日本軍の残虐性を批判していました。

 米国などの南京駐在外交官も本国に事件の詳細を報告しており、それが東京裁判で南京事件を裁いた際の裏づけとされました。

 (『南京事件資料集(1)アメリカ関係資料編』青木書店)

 日本では報道統制がしかれたため、国民には事件は伝わりませんでした。しかし、一部高級官僚や軍部は南京の惨劇を知っていました。

 南京事件当時、外務省の東亜局長だった石射猪太郎は日記に「上海から来信、南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る、掠奪(りゃくだつ)、強姦目もあてられぬ惨状とある。嗚呼(ああ)之れが皇軍か」(38年1月6日)(伊藤隆・劉傑編『石射猪太郎日記』中央公論社)と書いています。

旧陸軍将校親睦の機関誌も「詫びる」

 現場にいた日本の兵士も証言や日記を残しています。なかでも旧陸軍将校の親睦団体・偕行社(かいこうしゃ)の機関誌『偕行』に1984年4月〜85年3月に掲載された「証言による『南京戦史』」は注目されます。

 「大虐殺の虚像」を明らかにする狙いで偕行社が募集したものでしたが、寄せられた証言は虐殺の実態を生々しく伝えます。

 松川晴策元上等兵は「(中国の)便衣兵が一列にならばされ、(日本の)兵士が次から次へと銃剣で突き刺したり、あるいは銃で撃っているのを見ました。その数は百や二百ではなかった」「土のうと死体が一緒くたになって、約一メートルぐらいの高さに積み重ねられ、その上を車が通るという場面を見ました」と証言しています。

 佐々木元勝元上海派遣軍司令部郵便長は日記に「道路近くでは石油をかけられたのであろう。(死体が)黒焦げになり燻(くすぶ)っている。波打際には血を流し、屍体(したい)が累々と横たわっている」(37年12月17日)と書き残しています。

 最終回の85年3月号で、編集部の加登川幸太郎氏は「(死者の)膨大な数字を前にしては暗然たらざるを得ない…この大量の不法処理には弁解の言葉はない」と虐殺の事実を認め、「旧日本軍の縁につながる者として、中国人民に深く詫(わ)びるしかない」と謝罪しています。

日中政府の歴史共同研究でも

 「日本の近代史の研究者の中で、南京で相当数の不法な殺人・暴行があったということを認めない人はほとんどいない」(『外交フォーラム』2010年4月号)。2006年に第1次安倍政権が着手した「日中歴史共同研究」で安倍首相の指名で日本側座長となった北岡伸一国際大学学長は、共同研究の成果と課題をまとめた論文で述べています。

 北岡氏は日本の侵略を認めたうえで「不快な事実を直視する知的勇気こそが、日本の誇りなのであって、過去の非行を認めないのは、恥ずかしいこと」とも言っています。

 

“「慰安婦」制度どこでも”は本当か 籾井NHK会長の暴言(2014年3月3日配信『しんぶん赤旗』)

 

軍の組織的管理 日独だけ

 NHKの籾井(もみい)勝人会長は1月25日の就任会見で、旧日本軍「慰安婦」問題に触れ「この問題はどこの国にもあった」「戦争地域、どこでもあったと思う」などと発言し、旧日本軍「慰安婦」の制度を正当化しました。果たして旧日本軍のような「慰安婦」制度が「どこの国にもあった」というのは事実でしょうか。

軍の「慰安所」管理関係資料で明らか

 他国の軍隊でも、軍の周辺に女性を集め、「売春婦」が存在することはありますが、「軍が組織的・系統的に『慰安所』を管理していたとされるのは、第2次世界大戦下では旧日本軍とナチス・ドイツだけです」と指摘するのは「慰安婦」問題を調査研究してきた吉見義明・中央大学教授です。

 旧日本軍「慰安婦」制度の場合、計画、業者選び、輸送、建設、管理など「すべての過程において日本軍が直接・間接的に管理していたことが、旧陸海軍や政府の関係資料で明らかになっている」と指摘します。

 たとえば、吉見氏が発見した第二一軍司令部の「戦時旬報(後方関係)」には、「慰安所は所管警備隊長及憲兵隊監督の下に警備地区内将校以下の為開業せしめあり」と明記してあり、軍が「慰安所」を統制・管理していることをのべています。

 「慰安婦」にされた女性たちは外出の自由はなく、住居や性行為の拒否などの自由も奪われていました。それらは旧日本軍の資料によっても明らかです。「営業者(「慰安婦」のこと)は特に許したる場所以外に外出するを禁す」(独立攻城重砲兵第二大隊「常州駐屯間内務規定」、1938年3月)、「慰安婦外出を厳重取締」(比島軍政監部ビサヤ支部イロイロ出張所「慰安所=亜細亜会館、第一慰安所=規定送付の件」、42年11月22日)。

 また、日本とナチスドイツ軍の「慰安婦」制度の違いに、旧日本軍は植民地だった朝鮮半島の女性たちを「慰安婦」にし、性行為を強要したことがあげられます。

 93年、日本政府は、河野洋平官房長官の談話で、「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」とのべ、旧日本軍「慰安婦」制度の軍の関与を認めました。

 自民党の宮沢喜一内閣が91〜93年に旧日本軍の資料を調べ、16人の元「慰安婦」から聞き取りを行いました。当時、調査に携わった石原信雄元官房副長官は「16人のヒヤリングの結果は、どう考えても、これは作り話じゃない、本人がその意に反して慰安婦とされたことは間違いない」と話しています。その結果、政府として真実だと認定し、内閣の意思として「河野談話」を発表したのです。

被害女性の尊厳を傷つけ苦痛与える

 籾井氏は「(『慰安婦』は)欧州はどこだってあった。じゃあなぜオランダに今ごろまだ『飾り窓』(売春街)があるのか」とも発言しています。

 吉見氏は「現代の民間の売春宿と一緒にするのはおかしい。旧日本軍『慰安婦』にされた女性たちは人身売買、誘拐、または暴力的に『慰安所』に入れられたので全く形態が違う」とのべました。

 なぜ「慰安所」を設けたのでしょうか。軍の資料によると、(1)強姦(ごうかん)の防止(2)性病まん延予防(3)ストレス解消のための「性的慰安」の提供(4)「防諜(ぼうちょう)」(スパイ防止)の四つがあげられます。

 当時、中国では侵略した日本軍による強姦が多発し、中国民衆は反発感情を持ちました。そのため「積極的に施設をなすを可と認め、兵の性問題解決策に関し種々配慮し、その実現に着手する」(岡部直三郎上海派遣軍高級参謀の日記、32年3月14日の項)とし、「慰安所」がつくられてゆきました。しかし根本的な解決にはつながらず、旧日本軍による強姦事件は繰り返されました。

 籾井氏の発言は女性の尊厳を傷つけ、被害女性たちにさらなる苦痛を与え、さらに“世界のどこにでもある話”とすることで旧日本軍の犯罪行為を免罪しようとする卑劣な発言です。

 NHK会長という日本の公共放送のトップが、公式の記者会見で発言したことは、たとえ「個人的」な見解だったとしても許されるものではありません。

 

 

自民もNHKも見限り 籾井会長に辞任迫る「3つのシナリオ」(2014年2月27日配信『日刊ゲンダイ」)

 

 NHKの籾井勝人会長(70)の辞任が秒読みになってきた。辞表を出させ、預かることで忠誠を誓わせた理事にも裏切られた上、自民党議員の間からも「辞めさせるしかない」という声が噴出してきたからだ。NHK内部でも「辞任を想定した動き」が始まっている。

 就任記者会見の妄言を全部取り消し、沈静化を図ってきた籾井会長だがもうダメだ。

 経営委員会で「どこが失言だったのでしょうか」と素朴すぎる疑問を投げかけていたことが発覚したばかりか、NHKもサジを投げたのか、その議事録を前倒しで公開した。

 さらに部下の理事に辞表を出させていたことも発覚、それも籾井はごまかそうとしたのに、理事10人が「嘘はつけない」と反旗、国会の質疑で、辞表を提出させられたことを認めるという“劇場型の離反”になった。

 もう「持たない」のは誰の目にも明らかだが、NHKの会長は国会が同意した経営委員によって選ばれる。籾井をクビにするのは難しいし、強引なやり方をすれば、そんな経営委員の人選に同意した国会議員の責任にもなる。もっといえば、今回の経営委員は安倍肝いり人事だから、安倍の責任に直結していく。

 ■「取材がしにくい」と現場からも悲鳴

 そこで、浮上してきたのが、「NHK予算を人質にとって辞任を迫る」シナリオだ。それも自民党筋から、こうしたプランが出てきている。

「籾井辞任シナリオは3つです。NHK予算は現在、衆院審議中。辞めなければ衆院を通さないぞ、と迫るのがひとつ。2つ目は衆院は通すが野党が元気な参院段階で、紛糾を理由に辞任を迫るシナリオ。それでも辞めなければ、予算を通さない。立ち往生させて辞任に追い込むシナリオです。こうしたプランが先週あたりから永田町を駆け巡っている。当 然、会長へのプレッシャーになっていくと思います」(政治解説者・篠原文也氏)

 実は、NHK内部でも辞任を想定した準備が始まっている。

「NHKは見切った。こうなったのは取材現場から『取材に悪影響を与えている。特に中国関連の取材がやりにくくなった』との悲鳴が上がっている上に、受信料不払いが広まりつつあるからです。海老沢会長時代の不払い運動もそうでしたが、報道で批判記事が出た後に若干のタイムラグがあって不払いがピークに達する。今のうちに会長辞任で“火消し”をしておかないと、NHKの経営基盤を揺るがす事態になりかねない。幹部クラスも慌てています」(NHK関係者)

もうひとつ、籾井は三井物産時代、上島重二元会長に取り入って出世した。上には徹底的に尽くすが、下には絶対服従を強いる。そうした姿勢にNHK内部はウンザリしている。

四面楚歌の籾井の運命は決まったも同然だが、自民党やNHKが甘いのは、籾井が辞任さえすれば、安倍の責任問題にはならず、不払いも沈静化すると思っていることだ。そうは問屋がおろさない。籾井辞任は間違いなく、安倍政権転落の端緒になる。

 

「われわれの方が失望だ」と米政府を逆批判(2014年3月3日配信『しんぶん赤旗』)

 

衛藤首相補佐官の政治資金 浮かぶ“ミニ安倍”ぶり 議員歴、資金源、支出も

 安倍首相の靖国参拝に対する米国政府の「失望」表明を、「われわれの方がディサポインテッド(失望)だ」と逆批判した衛藤晟一(せいいち)首相補佐官(参院議員)。「大東亜戦争の真実や戦没者の顕彰」を掲げる「靖国」派勢力の横断的団体、「日本会議」の国会議員懇談会幹事長を務める超保守派の政治家で、首相の側近の一人ですが、政治資金を調べてみると、“ミニ安倍”ぶりが浮かび上がってきます。

 衛藤氏は、大分市議、大分県議を経て、1990年の総選挙で衆院議員に初当選。4期務めた後、2005年の総選挙で落選し、07年の参院選比例区で当選、現在2期目です。

 この間、自民党社会部会長や衆院厚生労働委員長、厚生労働副大臣を歴任するなど、安倍首相と同じく「社労族」の有力メンバーです。

 「資金源」も似ています。

改憲団体に会費

 衛藤氏の資金管理団体「新世紀政策研究会」の12年の政治資金収支報告書によると、「『えとうせいいち』と明日を語る会」と銘うった政治資金集めパーティーを東京、大阪、大分で計4回開催、約4450万円の収入があります。パーティー券を購入していたのは、日本薬剤師連盟300万円、製薬産業政治連盟160万円、日本精神科病院政治連盟、日本薬業政治連盟各30万円など。

 支出では、「組織活動費(渉外費)」で、目立つのは、改憲団体への会費。「今こそ改憲と国防軍の創設を」などとキャンペーンをする「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)に10万円、教育基本法改正運動などに取り組んでいる「日本協議会・日本青年協議会」に24万円、「日本政策研究センター」に10万円、大分県防衛協会に3万円、それぞれ支出しています。靖国神社社務所に「献灯」として1万2000円を支出しています。

 「調査研究費(資料費)」では、日本会議に書籍代1万1300円、日本協議会・日本青年協議会に「祖国と青年」購読代9万円を支出しています。

 このほか、12年11月、米紙に掲載された日本軍「慰安婦」問題を否定する意見広告に、衛藤氏、安倍首相とともに賛同者として名前を連ねた稲田朋美行政改革担当相、新藤義孝総務相、古屋圭司国家公安委員長、高市早苗政調会長などの“お仲間”や、徳洲会事件の徳田毅前衆院議員など、約70人の政治家のパーティー券を購入しています。

 安倍首相の179回には及ばないものの、赤坂の料亭や横浜市の中華料理店、地元大分市のすし屋、ふぐ処などで計52回の飲み食いも。

すべて人件費に

 衛藤氏が支部長の「自民党東京都参議院比例区第七十八支部」の12年の政治資金収支報告書によると、収入は1591万6000円の企業・団体献金、国民の税金である政党助成金が1000万円、大分県医師連盟300万円、日本薬剤師連盟200万円など、医療関係の政治団体から計564万円の献金など。

 政党交付金使途等報告書によると、1000万円の政党助成金はすべて人件費に使っています。

 

NHK受信料:長谷川委員、05年に支払い拒否(2014年2月27日配信『毎日新聞』)

 

 NHKの経営を監督する経営委員の長谷川三千子・埼玉大名誉教授(67)が委員就任前の2005年に、受信料支払いを拒否する意向の手紙を月刊誌のコラム執筆者に寄せていたことが、26日分かった。誌面では、放送内容への不満から支払いを実際に拒否した経過が、手紙の文面を直接引用する形で紹介された。

 放送法は64条で、NHK放送を見ることができる受信設備を設置した者に受信契約の締結を義務づけている。契約者はNHKとの受信規約で支払い義務が生じるが、罰則規定はない。NHKは法的手続きによる支払い督促を実施している。

 長谷川氏は毎日新聞の取材に「未納は2カ月間で、その後、支払った。支払いの保留をあたかも視聴者の権利のごとく考えていたのは、完全に私の無知によるものだ」と釈明した。

 手紙は、月刊誌「正論」(05年7月号)の元大学教授(故人)が執筆したコラム「NHKウオッチング」で2通紹介された。

 それによると、NHKが05年3月28日に放送した「『クローズアップ現代』 国旗国歌・卒業式で何が起きているのか」について「本当に酷(ひど)うございましたね。私も生まれて初めてNHKに抗議電話をしようといたしましたらば、すでに回線がパンク状態でございました。ちやうど自動振替が切れましたので、NHKが回心するまで不払ひをつづけるつもりでをります」と旧仮名遣いで心境をつづった。

 番組が、国旗・国歌の取り扱いを巡る東京都教育委員会と教職員の“対立”を印象づけたとして、都教委側がNHKに抗議し、NHK側は「公平、公正な番組内容」と反論した。これを受けて、長谷川氏は2通目の手紙で「受信料支払ひはまだまだ先のことになりさうでございます」とNHKの対応に不満を示した。

 昨年12月に経営委員に就任した長谷川氏は、不払いを助長しかねない当時の考えに関して「支払い義務を委員になって初めて知った。世の中には、かつての私のような思い違いをしている人が多いかと思いますので、このことは声を大にして、深い反省と共に申し上げたい」と話した。

 

元委員が証言「NHK経営委はハイヤー付き追認機関」)(2014年2月23日配信『日刊ゲンダイ』)

 

年収500万円、常勤ではないのに退職金…

 

 都知事選で田母神氏以外の候補者を「人間のクズ」呼ばわりした作家・百田尚樹氏の言動などを見ていると、NHKの経営委員会とは「何なのか?」と思ってしまう。一応、表向きはNHKの会長人事や予算の割り当て、事業計画などを議決する「最高意思決定機関」なのだが、その内実はほとんど明かされていない。そこで2001年7月から07年7月まで2期6年間、委員を務めた国立音楽大名誉教授の小林緑氏に「経営委員の実態」を聞いてみた。

 

――まず、なぜ、小林さんが経営委員に選ばれたのでしょうか?

 きっかけは就任の約2カ月前、総務省からの1本の電話です。いきなり「次期、経営委員になってもらいたい」と言われたのです。全く身に覚えがなかったので驚きました。総務省は「NHK全体の経営監督や会長の任命権がある」「VIP待遇です」などと説明する。なぜ自分なのか聞いてみると、「データベースで検索したら浮上した」と言うんですよ。退任する作家の平岩弓枝氏の代わりに文化系の女性を探していたらしいのです。私は大学で、女性の作曲家の研究・講義をしているが、それでよいのか? と尋ねても無反応でした。委員に70代が多い中、50代だったことなどが加味されたようです。音楽に携わっていたので、NHK交響楽団に意見を出すこともできるかもしれないと期待して、引き受けることにしました。

 

――打診は総務省からあるんですね。で、具体的なお仕事は?

 NHK職員から“御殿”と呼ばれる東京・渋谷の放送センター12階にある部屋で月2回、2時間ずつ定例会が行われるんです。当時、地デジ移行に伴う機材の入れ替えは大きなテーマでした。私が、今までの機材がゴミになることや高齢者は地デジに対応するのが難しいのではないかと意見したら、地デジ専門の理事からは「国策です。いまさら何言ってるんですか」と怒られましたね。委員会事務局からも「そのことは触れちゃいけません」と言われました。議題を用意するのはNHK側で、会議の1週間前に大量の資料が送られてきます。事前に目を通しますが、財務や放送の専門用語などがあり、内容を理解するのは難しい。しかし、直接、説明を受けられるのは定例会の2時間だけですから、皆が個人的意見を言っていたら時間がなくなってしまう。そう考えて、結局、「はい、聞き置きました」と答えることが多かったです。議題が差し戻されることはほぼなかったし、委員会は追認するための機関なのだと感じましたね。

 

――委員の方はたいてい2期6年間務めますね。待遇はどのくらいなんでしょうか?

 年収は2004年の不祥事以降徐々にカットされ、退任時はボーナスを加えて約500万円(現在は非常勤の場合、約495万円)。当初退職金もありましたが、当時経営委員は全員非常勤でしたから、私は常勤でないのに退職金はおかしいと意見しましたが、「もらって当たり前」という意見の委員もいました。黒塗りハイヤーの送迎もありますが、時間的にとても急ぐ場合以外、それは辞退して公共交通を使いました。そうしたのは、私と委員長だったJR東海会長くらいですね。委員や理事の入れ替わりなど節目には12階の“御殿”でパーティーがありました。今はどうかわかりませんが。高級ホテル顔負けの料理が並び、和服女性やタキシードの男性が給仕してくれます。委員会の運営費は相当、かかっているのではないでしょうか。

 

――04年には、制作費不正支出問題などの不祥事が発覚しました。海老沢勝二会長に多くの批判が集まりましたが、この時はどんな感じでしたか?

 委員長が委員一人一人に海老沢氏の続投について意見を聞きました。私は「お咎(とが)めなしで3期目はおかしい」と言いましたが、定例会の発表では「多数決により全会一致で続投」になっていた。他の委員と議論していないし、不透明さが残りましたが、後に委員長と海老沢氏は仲良しだったと聞いて納得しました。現会長の籾井氏の慰安婦発言騒動も同じではないでしょうか。浜田委員長は「辞任を求める委員はいなかった」と言ってますね。

 

――その辺が非常に不透明ですね。「お咎めなし」では、という条件がいつの間にか、削除されてしまう。籾井続投も「条件付き続投」だったかもしれませんね。

 07年6月には、委員長に任命された富士フイルムHD社長の古森重隆氏について、安倍首相と個人的関わりが深いとメディアで騒がれました。定例会でそのことに触れましたが、橋本元一会長は「議題ではない」とし、議事録には残してもらえませんでした。

 

――従軍慰安婦問題を取り上げた「ETV2001」(01年1月放送)の改変問題については、どうですか。07年1月、東京高裁は改変を認定し、NHKは即日上告する騒ぎになりました。

 上告した日のNHKのニュースは、敗訴していることが分からないように画面から勝訴側の女性の姿を抑え気味にしたり、関連報道も19時のニュースではなく21時に回したり、扱い方があまりに酷かったため、次の定例会では、経過報告がなかったことも含め、抗議しました。すると、NHK側は委員会は個々の番組のことはノータッチですと。NHKには中央、地方と全体のそれぞれに「番組審査委員会」があるので、経営委員会は“関係ない”というのです。また、裁判をした女性国際戦犯法廷のグループが、「政治的な忖度(そんたく)がないのであれば元の番組と比べる上映会をしたい」と申し出ていたため、定例会で「公平なら堂々と見せるべき」と指摘しましたが、これも「著作権があるから」と拒否されました。

 

――まさに伏魔殿ですが、6年間を振り返ってみて、今、どういう感想をお持ちですか?

 収穫がなかったわけではありません。04年に相次いだ不祥事をキッカケに議事録が作られるようになった。議事録は00年9月から公開されてはいますが、発言者の記録はおざなりなものでしかなかったんです。多くの経営委員が「記名じゃないと意味がない」と指摘して実現させました。また、このとき、NHKの理事会側だけではなく経営委員会にも独立した事務局ができました。そのため議事録もNHKのチェックが働かないように確認できるようになりました。とはいえ、経営委員だけで議論する機会がほとんどなく、十分な改革とはとてもいえませんでした。精いっぱい意見は伝えてきたつもりですが、振り返るたび、もっと萎縮せず言えばよかったと今でも思っています。

 

▽こばやし・みどり=1942年生まれ。東京芸術大学、同大学院を経てフランス給費留学生としてパリ大学付属音楽学研究所でフランス音楽史を学ぶ。帰国後、国立音楽大学音楽学教員。現在は名誉教授。

 

2014年1月27日

籾井勝人氏はNHK会長として不適格である(談話)

 

 社会民主党幹事長 又市 征治

 

1.1月25日、NHKの新会長に就任した籾井勝人氏が就任会見で、従軍慰安婦問題について、「今のモラルでは悪いことだが、当時の戦争地域には大体つきものだったと思う」、「日本だけがやっていたようなことを言われるのはおかしい。ヨーロッパはどこだってあったのではないか」、「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」、「日本だけが強制連行したみたいなことを言っているから話がややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っている。しかしすべて日韓条約で解決している。なぜ蒸し返されるんですか。おかしいでしょう」などと「問題発言」を連発した。

 

2.「会長の職はさておき」とした上で、問題を指摘されると「全部取り消します」と話したが、公式の就任会見の場で、NHK会長が、外交の機微や歴史認識の微妙な点に触れる問題について、右派勢力同様の政治的見解を述べ、NHKの公共性、政治的公平性、また設立趣旨に反する発言がなされたことは、会長としての資質を疑わせるものであり、まことに遺憾である。およそ報道機関、公共放送の経営トップとして必要な最低限の常識も兼ね備えているのか疑問である。また、報道機関の長が韓国を批判することも異例であるが、籾井氏はオランダなどにある売春街である「飾り窓」を引き合いに出したが、大戦中、旧日本軍占領中のインドネシアで日本軍がオランダ人女性35人を民間人抑留所から慰安所に強制連行し強制売春させた事実を顧みないものであり、オランダに対する侮辱でもある。

 

3.NHKの会長人事は、先の臨時国会で同意を得た新任の経営委員4人が安倍晋三首相に近い人選だったことから、政権との距離が注目された。しかし、籾井氏は、特定秘密保護法の報道が少なく、姿勢が政府寄りとの指摘があることについて、「(法案は国会で)通ったこと。あまりカッカする必要はない」と、問題点の追及に消極的な姿勢を示した。また、国際放送の充実についても、「尖閣、竹島の問題を諸外国にどう理解してもらうか。早急に手を付けないといけない」と意気込んだ。また「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左というわけにはいかない」とまで言いきっている。籾井氏が強調するように、「NHKのボルト、ナットを締め直す」として、安倍政権が満足するような「偏向是正」を徹底し、あたかも「国営放送」を目指そうというのであれば、ニュース報道やドキュメンタリーにおいて、政治的な問題、特に原発、特定秘密保護法、安全保障、基地問題など、安倍政権が重視するテーマを批判的に扱うことができなくなり、公共放送たるNHKへの信頼を失墜させるとともに、日本のジャーナリズムの危機ともなりかねない。

 

4.放送法の立法趣旨やNHKの設立趣旨から、政治的公平性や中立が大原則であることは言うまでもない。NHK会長は、閣僚ではないが、国会での答弁をたびたび求められ、公共放送の長であり、公正に伝える義務を負う報道機関のトップであり、「見識」を絶えず問われるポストである。NHK会長が就任早々、世界中に自らの見識の無さを発信してしまったことは、NHKの存在に対する理解不足を十分疑わせるものであり、会長としてきわめて不適格であると言わざるを得ない。

 

5.籾井発言の重大性は、籾井氏を会長として選んだ側の経営委員会の責任も問われる問題である。社民党として、NHK予算案審議の場などで籾井会長の認識を徹底的に追及するのはもちろんだが、まずはNHK執行部や経営委員会が籾井発言の重大性を自律的に解決できるのか注視していく。

 

 日本放送協会第1236回経営委員会議事録(2015年4月28日開催分・2015年5月15日公表)(全文

 

(籾井会長)

  次に、ハイヤーの私用にかかわる秘書室への対応につきまして、監査委員会の報告の指摘などを受けて、本日、秘書室の担当職員に対して訓告や厳重注意を行いました。福井専務理事から報告いたします。

  (福井専務理事)

  今回の問題で、秘書室の不適切な対応によりまして、公私混同の誤解を招いたことは極めて遺憾であると考えております。この事態を重く受けとめ、本日、私から秘書室長に対しまして訓告、それから、秘書室の専任部長と副部長に厳重注意を言い渡しました。

  秘書室全体の責任者である室長を一段重く訓告として、ハイヤーの手配や事務処理にかかわった管理職職員を厳重注意として、今後、再発防止策の徹底に努めるよう強く要請をしております。

  秘書室を監督している立場にある堂元副会長につきましては、経営委員会終了後、会長から厳重注意を行う予定としております。

  (浜田委員長)

  今のハイヤーの私的利用にかかわる再発防止策の報告に関連して、私から執行部に対して申し上げます。

  この問題をめぐっては、経営委員会として319日に協会に対し、コンプライアンスの徹底と再発防止策を着実に遂行していくことを求めました。本日この報告を受け、今後はこの防止策が協会全体のものとして実行されるよう取り組んでいただくとともに、協会の財源はそのほとんどが視聴者からいただく受信料であるという認識を再確認していただきたいと思います。

  本日のハイヤーの私的利用にかかわる再発防止策の報告を受け、経営委員会としては、会長が自身の支払いが終了していないことについて適宜注意を喚起し、必要に応じて適切な指示を怠った責任を認め、厳重注意といたします。

 

 (籾井会長)

  それは経営委員会から私に対する注意ですか。

 

 (浜田委員長)

  そうです。

 

 (籾井会長)

  そうですか。

 

 (浜田委員長)

 

 本日、今後の改善に向けた総括の議論を行い、以下のような結論に達しましたので、ご報告をいたします。

  経営委員長コメント。経営委員会は、一連の籾井会長の言動に対する国民・視聴者からの指摘、また、その結果としてNHK予算が国会で全会一致の承認が得られなかったことを真摯に受けとめ、今後の改善に向けた総括の議論を行い、以下のような結論に達しました。

  1、会長は、公共放送のトップとしての責任を再確認し、さまざまな意見に対して、これまで以上に誠意を持って対処するよう努めるべきである。

  2、協会は、会長の私的利用のハイヤー代金が不適切に経理処理された問題に対して、関係者にコンプライアンス意識を徹底し、再発防止策を着実に遂行すること。

  3、経営委員会は、NHK予算が国会での全会一致の承認が2年続けて得られなかった結果を痛切に反省し、執行部とともに、受信料で成り立つ公共放送の意味を再認識する。また、331日、参議院総務委員会での附帯決議を重く受けとめ、経営の最高意思決定機関としての職責を再確認する。以上です。

 

以上