自衛官:応募者数が減少 安保法案影響か

毎日新聞 2015年07月16日 19時09分(最終更新 07月17日 00時03分)

 自衛官の採用枠の一部で2015年度の応募者数が14年度を下回っている。幹部自衛官養成コースで一般大学の卒業生らが対象の「一般幹部候補生」が14年度に比べ13.8%減り、専門の技術を持つ「技術海曹」も14年度比でほぼ半減した。防衛省は「民間の求人数が増えているため」とするが、自衛官の危険が増す可能性のある安全保障関連法案の影響を指摘する声も出ている。

 自衛官採用枠は14に大別され、通年の募集枠もある。現時点で15年度の応募者数が確定しているのが一般幹部候補生と技術海曹、技術空曹。

 一般幹部候補生は今年3月1日から5月1日に募集した。対象者は大学卒業見込みの20歳以上22歳未満など。14年度の応募者は8515人だったが、15年度は7334人(速報値)。無線通信士や電気主任技術者など専門の資格免許保持が応募条件の技術海曹も、14年度の応募者100人が15年度は56人(速報値)だった。技術空曹の応募は近年1桁しかない。

 防衛省によると、就職難の時期には自衛官の応募者数が増加し、民間雇用が増えると自衛官の応募者数が減少する相関関係があるという。08年秋のリーマン・ショックで民間の雇用情勢が悪化した09年度の一般幹部候補生の応募者数は6573人で、08年度に比べ35・6%の大幅増だった。13年11月以降は求職者1人あたりの求人数を示す有効求人倍率が1倍以上でほぼ右肩上がりに推移し、今年4月は1・17倍で23年ぶりの高水準となった。自衛官の応募者減少はこうした景気の影響というわけだ。

 だが、他国軍への後方支援や国連平和維持活動(PKO)など、自衛隊の活動範囲を拡大する安保法案の影響を指摘する専門家もいる。若者の就職事情に詳しい関西大学の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は、「応募者数が顕著に減っている。求人倍率との関連もあるだろうが、安保法制で自衛官のリスクが高まるのではと慎重に考える影響も一部出ているのではないか」と話す。【町田徳丈】

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