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Vol.10 2008年10月14日
補給支援活動 ~「テロとの闘い」

2008年1月に成立した補給支援特別措置法。テロ対策の一環としてインド洋で海上阻止活動を行っている各国艦船に対し、日本の海上自衛隊は、補給支援特措法に基づき、燃料や水の補給支援活動を行っています。日本によるテロ対策のうち、補給支援活動とその意義を中心に解説します。

「テロとの闘い」とは

2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ。国際社会は翌12日、直ちに「テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うこと」を決意し、安保理決議1368」を採択。テロリズムの防止と根絶に向けて連携し、断固として闘っていく姿勢をとっています。しかしながら、依然としてアル・カイダ等によるテロの脅威は存在し、減少しているとはいえ、未だ世界の至るところで数々のテロが起きています。各国は、国民の安全な暮らしを守るために、「テロとの闘い」を続けています。日本にとっても、テロの脅威は無関係ではありません。9.11テロのように、日本人が直接の被害を受けるというだけでなく、日本は、安定した国際社会の中でしか繁栄を享受できない国です。テロのない世界の実現に向けて努力することは、誰より日本にとって必要なことなのです。

世界の主なテロ(未遂を含む)2007年5月
 
 

アフガニスタンとインド洋での「テロとの闘い」

「テロとの闘い」に立ち上がった国々が、一致団結して行っているのが、アフガニスタンとその周辺、そしてインド洋上でのテロ対策活動です。アフガニスタンとその周辺は、アル・カイダをはじめとするテロリストがその拠点としている地域です。インド洋は、テロリストが移動したり、その資金源となる武器や麻薬を輸送する海域です。このため、各国は、国際治安支援部隊(ISAF)、地方復興チーム(PRT)、不朽の自由作戦(OEF)といったアフガニスタン本土での活動やインド洋での海上阻止活動に対して、多くの部隊を派遣してテロとの闘いに取り組んでいます。

 

治安維持のためのアフガニスタン政府支援と地方における復興事業

国際治安支援部隊(ISAF)は、安保理決議1368によって2001年12月に設置された国際部隊です。主にアフガニスタンの治安維持のために、アフガニスタン政府を支援する活動を行っており、米、英、仏、独、伊など、世界40か国50,700名もの部隊が参加しています(2008年10月現在)。また、中央政府に対してだけではなく、中央政府の地方への影響力拡大や治安環境改善のため、地方において治安改善や復興事業を行う地方復興チーム(PRT)も軍人と文民から構成され、現在アフガニスタン国内の26か所において、14か国がそれぞれのPRTを主導して活動を展開しています。(数字はいずれも2008年10月現在のもの)

アフガニスタン ISAF(国際治安支援部隊)への主な国の派遣状況
 

不朽の自由作戦(OEF)

2001年10月以来、有志の連合軍による「不朽の自由作戦」(OEF)も展開されてきています。アフガニスタン本土では、米国等11か国(2008年5月現在)が参加し、アル・カイダやタリバン勢力を掃討する作戦を展開しています。

 

テロリストや武器等の移動を阻止する海上阻止活動

2001年10月以来、アフガニスタンとその周辺を拠点とするテロリストの移動、武器の運搬や、テロリストの資金源になっている麻薬の輸送を阻止・抑止するため、インド洋を航行する船舶を監視しているのが海上阻止活動です。この活動も有志の連合軍によるものです。無線によって不審船の船籍や船名を確認したり、乗船検査を実施しています。これらの活動によりテロリストの身柄が拘束され、資金源となる麻薬や武器が押収されるなど、着実に成果があがってきています。日本が燃料と水の補給によって支援しているのはこの活動です。

 
 

補給支援特別措置法による日本の貢献

日本がインド洋における補給支援活動を行うためにはその根拠となる法律が必要です。2008年1月には、新たな「補給支援特別措置法」が施行され、海上阻止活動を実施している各国との交換公文の締結を経て、2007年11月より中断していた補給活動を再開しました。今後も補給支援活動を継続してゆくためには、同法を必要に応じ延長する必要があります。

実施までの流れ
 

麻薬街道で23トンもの麻薬を押収

インド洋での海上阻止活動は、おおむね6~8か国、10~15隻の体制で行われています。2008年7月に英国の駆逐艦およびフリゲートが、「麻薬街道」と呼ばれる海域で約23トンもの麻薬を押収し、アフガニスタンのテロリストに流れる恐れがあった麻薬を事前に阻止したとして注目を集めました。

 

洋上給油の必要性と難しさ

カナダ艦船(左)に燃料を補給する「おうみ」(右)このように、テロの抑止効果が極めて高いとされる海上阻止活動ですが、各国艦船が24時間体制で洋上の監視を行うためには、定期的な燃料や水の補給が不可欠です。補給のために港湾に戻ることになると、代替艦が必要になったり、監視体制に穴が空くことになり、活動効率と効果が大幅に低下してしまいます。さらに、洋上で停泊した状態では波の影響を受けて給油を行うことが困難であるのみならず、テロリストからの攻撃を受ける危険性があります。また、大型船舶は、大幅に減速・停止すると速やかに発進加速できず、不審船を逃すことにもなりかねません。このため、補給は、補給艦と艦船が時速12kmで、長時間にわたって安定的に併走しなければできません。この作業に相応の装備と高い技術力が必要とされることは言うまでもありません。

 
 

日本の補給支援活動の意義

緊張状態が続く過酷な環境の中で行われる洋上給油を、長期間かつ安定的に実施できる装備と技術力を持つ国は限られています。また、海上阻止活動に参加している各国は、米、英、仏のように補給艦をインド洋に派遣している大国ばかりではありません。日本は「テロとの闘い」に取り組む国際社会の一員として、自国の技術力を活かして海上支援活動に参画しています。海上自衛隊による補給活動は、各国から高い評価を得ています。

 

補給支援活動実施までの流れ

日本がインド洋上で補給支援活動を行うには、まず「補給支援特別特措法」に基づき、実施計画が立てられます。ここでは基本方針や実施区域を指定するとともに、派遣される自衛隊の規模、構成、装備、派遣期間などが定められます。実施計画が閣議決定されると、防衛大臣によって実施要項が定められ、自衛隊が現地に派遣されることになります。いつ、どの国のどの艦船に、どのくらいの量の補給を行うかという支援活動の詳細は、バーレーンの司令部に派遣されている海上自衛隊の連絡官が各国の連絡官と調整し、必要と判断される補給を行います。このとき、日本側は、補給した燃料が適正に使用されることを確認するため、補給先の艦船の活動予定等についても把握しています。

 

日本による「テロとの闘い」

「テロとの闘い」とは、部隊を派遣してテロリストと直接対決をするだけではなく、その活動に対する物質的支援や、復興のための復興支援や人道支援活動まで含まれます。日本はもちろん、復興支援のための活動も積極的に行っています。しかし、復興支援が効果を上げるためには、治安が安定する必要があり、治安が安定すれば一層の復興が可能になります。両者はいわば「車の両輪」で、どちらか一方だけではなく、両方がうまく回ってこそテロの撲滅や平和が実現するのです。日本はこの考えに基づき、復興支援だけでなく、インド洋上での補給支援活動を通じて「テロとの闘い」に取り組み、日本を含む国際社会の平和と安全の確保のために貢献しています。

 
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