集団的自衛権って何? Q&A

制作・発行:openfly.jp
監修:中野晃一立憲デモクラシーの会、上智大学教授)
2014.10.13公開

最近何かと話題の『集団的自衛権』。ニュースや新聞でもよく名前を聞くけど、なんだか難しい感じがしてイマイチよくわからない。
「『権』ってことは権利なんだから、持ってた方がお得じゃない?」
「いやいや、でもあると戦争になるっていう話も聞くし。」
「ホントのところはどっちなの?」
そんな疑問やモヤモヤを感じてるけど、誰にも話せないし聞けないし…という人の為にQ&Aを作りました。さらに興味のある人は、政府の内閣官房が発表しているQ&Aと比べてみてください。

1
集団的自衛権って何ですか? 個別的自衛権と何が違うの?

A.

自国が攻撃されていないのに、他国に対して攻撃があった場合に、その相手国に対して武力行使できる権利のことです。自国が攻撃されたり、自国民の生命と財産が攻撃される場合にかぎり、反撃することができる個別的自衛権とは区別されます。どちらも国連の事前の認可を必要としません。

個別的自衛権と集団的自衛権

2
集団的自衛権がないと、海外の日本人を危険から守れないって本当?

A.

いいえ。個別的自衛権で守れます。

海外で紛争や自然災害が起きた場合、現地の日本人のほとんどは、日本政府と現地大使館の指導に従い、緊急配備される民間航空機で帰国します。民間航空機が飛べない場合は、自衛隊が救出します。日本人が、外国の救出船や飛行機で避難する時に攻撃された場合は、自衛隊は彼らを守るために武力を行使できます。これらは全て、個別的自衛権の行使とみなすことができます。

海外の日本人が避難帰国する場合

3
集団的自衛権を行使しないと、アメリカは日本を守ってくれないのではないですか?

A.

アメリカは、日米安全保障条約によって日本を守る義務を負っています。その代わりに、日本は既に膨大な資金(*1)と土地(基地)をアメリカに提供しています。また、自衛隊もアメリカ軍の補給活動を行う等の貢献をしています。この上更に、日本が集団的自衛権を行使して、アメリカの為に軍事行動をとるようになると、日本の負担が余りにも大きくなり過ぎます。

また実際にアメリカが日本のために軍事介入するには、アメリカ議会の承認が必要です。ですから、『日本が集団的自衛権を行使する』=『アメリカが必ず日本の為に武力行使する』という訳ではないのです。その保証はどこにもありません。

*1 防衛省・自衛隊「在日米軍駐留経費負担の推移」 http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/suii_table_22-29.html

4
集団的自衛権を行使できれば、他国からの攻撃の予防になるのでは?

A.

予防にはなりません。

それどころか、集団的自衛権の行使は新たな危険を生み出します。他国にとって日本が軍事的な脅威となるからです。日本が参加する可能性が高いのは、アメリカの「予防戦争」でしょう。武力衝突が起きる前に、その「可能性」を予防するために他国を攻撃するのです(*2・3)。2003年に始まったイラク戦争は、まさにそういった戦争でした。攻撃された国にしてみれば、まだ何もしていないのに攻撃されてしまっては、アメリカとその仲間である日本への不信感が高まります。『平和』よりも新たな『危険』を作り出す可能性の方が、断然高いのです。

*2 防衛省 防衛研究所「「先制」と「予防」の間 - 獨協大学 岡垣知子」 http://www.nids.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j9_1_2.pdf
*3 ル・モンド・ディプロマティーク「アメリカが行った予防戦争とは何か - ノーム・チョムスキー マサチューセッツ工科大学教授」 http://www.diplo.jp/articles03/0308-2.html

5
日本も集団的自衛権を行使できれば、アメリカと対等になれるのではないですか?

A.

残念ながら、なれません。

JAPAN AMERICAこれまで日本は、平和憲法に則った独自の安全保障を保つことで、絶え間なく戦争をするアメリカの影響下にありながらも、自国の安全と平和を守ってきました。集団的自衛権を行使すれば、こうした日本国民の独自の判断が通らなくなります。共に行動するアメリカの外交力や軍事力が、日本よりも余りに強力だからです。決意や努力だけでは、言いなりになることを防げません。関係が対等とは言えないからこそ、平和憲法が歯止めになってきました。それを日本自らが壊すことになります。

6
集団的自衛権を行使して、日本も軍備を増強すれば、危険を「抑止」できるのでは?

A.

いいえ。抑止どころか、日本への危険が高まります。

集団的自衛権は、日本を攻撃していない他国との戦争の可能性を生み出します。国際社会に、日本の武力行使に対する新たな疑惑が生まれるでしょう。(*4)

GUN AMERICA例えば、自衛のための銃所持を認められているアメリカでは、銃犯罪による被害者が絶えません。同じことが国際社会についても言えます。集団的自衛権の行使を容認することは、「銃」すなわち「軍隊」を所持し、国連の承認を待たずにそれを使うという宣言です。自衛の手段のはずが、かえって自衛を難しくしてしまうことが予想されます。

*4 「日本の集団的自衛権行使の容認をめぐる議論についての私見 - 慶應義塾大学経済学部 延近 充」 http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/column/column140327.htm

7
集団的自衛権は、憲法に違反しないって本当?

A.

集団的自衛権は明確な憲法違反です。

国民主権、平和主義、基本的人権を原則とする日本国憲法は、第二章「戦争の放棄」で、交戦権を否認しています(第9条二項 *5)。また、従来の政府解釈にも反しています。これまで日本政府は、とくに1970年の日米安保条約改定をめぐる議論を受けて、「集団的自衛権の行使は現憲法下では許されない」という立場をあらためて明確にしてきました(*6)

*5 総務省ポータルサイト「日本国憲法」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
*6 国立国会図書館「憲法第9条と集団的自衛権」'71年の決算委員会資料、'82年の政府答弁書 http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/073002.pdf

8
憲法と法律って何が違うんですか? 立憲主義って何ですか?

A.

選挙で選ばれた政府は、強大な権力を持つことになります。憲法は、政府がその力を民主主義にしたがって使うように命ずる、国民から政府へのルール集です。選挙で選ばれたからといって、政府は何をしてもよいのではありません。基本的人権を尊重したり、権力の抑制と均衡を定めたりした憲法というルールに従わなければならないという考え方、これを立憲主義と言います(*7)。政府が憲法を無視した方針を立てたり、法律を作ることは、国民主権を定めた憲法への違反であり、立憲主義を壊すことになります(*8)

*7 立憲フォーラム「立憲フォーラムと憲法に関する Q&A​」http://www.rikken96.com/#!qa/co9a
*8 日本弁護士連合会「立憲主義の見地から憲法改正発議要件の緩和に反対する決議」 http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2013/2013_1.html

立憲主義

9
安倍首相は、集団的自衛権の行使容認を、なぜ勝手に決めてしまうの?

A.

安倍首相は、政治家になって以来、これまでの日本の平和主義からの転換を目指してきました(*9)。これは、日本のルールのなかでは許されないので、現在の権力を使って先にやってしまおうとしています。集団的自衛権の行使を容認するには、これを認めない憲法を変えなければなりません。しかし、憲法に定められた改正手続きによって国民の同意を得ることはできそうにありませんでした。そのため、改憲という正規の手続きを避けて、政府だけで考えを変えますと宣言しました(*10)

*9 法学館憲法研究所「中高生のための憲法教室 第42回<戦後レジームからの脱却>」 http://www.jicl.jp/chuukou/backnumber/42.html
*10 防衛省・自衛隊「憲法と自衛権」http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html

集団的自衛権について 世論調査

10
集団的自衛権で、自衛隊はどうなるの?

A.

自衛隊は、海外での戦闘に他国と参加する日本の軍隊となり、諸外国からは日本軍として認知されるようになります。私たち国民は、自衛隊員を海外の戦闘に参加させることになります。集団的自衛権の行使を通して、日本人の戦死者が出ることも予想されています(*11)。戦闘はアメリカの国益を守るためにも行われるため、自衛隊員が日本の国益とどう関係するのか分からない地域で大けがをしたり、戦死する状況も生まれます。こうした事態に対して、元自衛官の方々からも、集団的自衛権に反対の声が上がっています。(*12・13)

*11 ハフィントンポスト「「自衛隊は戦争する軍隊になりますよ」安倍首相のブレーン・岡崎久彦氏に聞く集団的自衛権」 http://www.huffingtonpost.jp/tomoko-nagano/okazaki-hisahiko_b_5349355.html
*12 沖縄タイムス「集団的自衛権で辞職 元自衛官インタビュー」 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=76498
*13 神奈川新聞 カナコロ「集団的自衛権を考える(19)元自衛隊員に聞く きょう創設60年」 http://www.kanaloco.jp/article/73821/cms_id/89042

集団的自衛権の行使でイメージする自衛隊の活動

11
テロの時代に、集団的自衛権なしで大丈夫?

A.

集団的自衛権を行使すれば、かえってテロのリスクが高まります。

これまで幸いなことに、日本は欧米諸国に比べテロの標的になることが少なく済みました。それは戦後の日本があくまでも“専守防衛”に徹してきたからです。自国が攻撃されていないのに、他国間の戦争に参加していく集団的自衛権を行使するようになると、日本も他国に対する脅威となりますから、日本を攻撃したくなる理由が増えてしまいます。

テロを行うのは、複数の国家にまたがって展開する武装組織や、インターネット上のネットワークであることが多く、イラク戦争で証明された通り、特定の国家に対する報復戦争でこれを一網打尽にすることは出来ません(*14)。テロの動機は、国家間の交渉を有利に進めることより、相手国の社会に恐怖と混乱を拡げること、そして、直接命を奪うことによる報復です。自衛隊が海外でアメリカ軍とともに戦闘を行えば、テロ組織に日本社会を標的にする動機を与えてしまうのです。

*14 元NATO代表部日本政府連絡調整員 小泉尊聖「「日本外交、私の提言」-集団的自衛権とテロとの戦い」 http://www.academia.edu/6854584/_日本外交_私の提言_集団的自衛権とテロとの戦い

12
私たちに何ができますか?

A.

出来ることは色々あります。

VOTE

選挙に行く

選挙に行かない理由として「投票したい人がいない」「誰に入れてもどうせ変わらない」というものがあります。そう思った時は「この人にだけは当選して欲しくない」という人を探して、その人の有力な対立候補に投票してみましょう。投票した人が落選したとしても、当選した人との差が僅かであればあるほど、当選した人はプレッシャーを感じます。次の選挙のことも考えて、在任中に好き勝手なことが出来なくなるかもしれません。そういった効果すら期待出来なくなる棄権や白紙投票は絶対に避けましょう。

また、集団的自衛権のような事柄を決める国会の衆・参議員を決める選挙に、私たちの暮らす身近な市区町村の選挙結果も実は大きく影響してきます。数年に一度の国会議員選挙に比べ大きなニュースにはならなくても、日頃から身近な地域の選挙にも気を配り、忘れずに投票に行きましょう。街に貼られる選挙ポスターに加え、各家庭に投函される選挙公報、そしてインターネットで少し検索をすればどんな人が立候補しているのかもすぐに調べることができます。

TALK

家族や恋人、知人・友人など身近な人と話してみる

その時に、ここに書いてあることが説明の助けになれば、と思います。話すのが苦手な人はここのURLを教えてもいいし、印刷して手渡す、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSでこの事を書いてみることも効果があります。先ずはあなたがこの問題について理解を深め、自分の意見を持つ事です。(結果、他人と同じような意見になったとしても、それは何ら問題ではありません。)

そして、あなたの身の回りやSNSを通じて世の中に「“集団的自衛権の容認”や“解釈改憲”ってマズくない? おかしいよね?」という“空気”を広めていく事が大切です。特にSNSでは、思いもよらぬ繋がりから広がっていく可能性があります。

その事が“世論”、つまり私たち“国民の声”となり作用していきます。世論を無視する政治家の政治生命というものは、あまり長くはもたないものです。本来、国民の声を代表すべき政治家が、国民の声を聞かなくなってしまっては当然ですね。

DEMO

他にもやってみたい人は、街頭デモなどに参加してみる

デモに行ったことがない人が、いきなり参加するのはちょっと抵抗感があるかもしれません。そういう時は様子を観にいったり、見学だけしてみるのもアリですね。混ざれそうなら混ざればいいし、「ちょっと無理!!」と感じたら、その時は無理せず帰るなり遊びに行くなりすればよいのです。

ここに挙げたことはほんの一例です

私たちは何か自分たちに出来ることはないか? と考えてこのページを作成する事にしました。ですからここを読んでくれた皆さんが、自分たちが出来ることを探して何かを始めて下さると、このページを作った甲斐があるというものです。

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