自衛隊のイラク派遣に関する国会承認が9日の参議院本会議で、与党などの賛成多数(賛成138、反対103)で可決された。戦争状態にある外国に陸海空3自衛隊をそろって派遣する初めての事態に対して国会が承認手続きを終えた。1188億円のイラク復興支援経費を盛り込んだ03年度補正予算も同じ本会議で賛成多数(賛成136、反対103)で可決・成立し、政府が復興で二本柱とする人的、物的両面での支援が本格化する。
承認されたのは、基本計画に基づき、石破防衛庁長官が昨年12月19日に準備を命じて始まった一連の自衛隊の活動。給水や医療、公共施設の復旧、物資輸送などの人道復興支援活動と米英軍支援の安全確保支援活動が柱だ。先遣隊だけでなく本隊の活動も含まれる。
補正予算に盛り込まれた復興支援は、発電所の修復・整備などのインフラ整備に重点を置いているほか、病院への医療器材提供、警察車両の購入費援助も含む。
審議の過程で民主党など野党は、陸上自衛隊本隊の派遣命令など命令が出るたびに個別承認を諮るよう求めたが、政府はこれを拒否。政府は今回の承認で一括承認を得たとの立場で、今年12月までの基本計画の期間を延長する場合も新たな承認は不要としている。国会答弁で政府が追加承認の必要性を認めたのは、イラクなど現在の基本計画に盛り込んだ国以外に自衛隊を派遣するケースだ。
陸上自衛隊は、宿営地造営などにあたる施設部隊がすでにイラク・サマワに入っているほか、2月下旬以降、3波に分け、残りの本隊が出発する。
承認したとはいえ、治安が安定しないなか、自衛隊の活動をめぐる国会論争は今後も続く。
野党は「政府の説明責任が果たされていない」(岡田克也・民主党幹事長)との立場で、イラクで大量破壊兵器が見つかっていない問題に絡めて「戦争の大義」を中心に小泉首相を追及し、自衛隊の活動実態をただしていく方針だ。衆院イラク復興支援特別委員会は週1回、自衛隊活動の政府報告を受けることになっている。
一方、国会序盤の焦点だった承認と補正予算の処理を終えたのを受けて政府・与党は、04年度予算案の3月初めまでの衆院通過、年度内成立をめざす。予算案を審議する衆院予算委員会は10日から始まる。
(02/09 19:51)
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