94年11月の国連総会第6委員会では、旧敵国条項削除を憲章改正特別委員会に求める決議が採択された。95年12月の国連総会では「53条と107条の国連憲章からの削除を求める決議」が採択されたが、正式手続きには至っていない。
このまま敵国条項を放置するのは危険だ。中国は、民主党政権が断行した沖縄県・尖閣諸島の国有化を「日本は中国への侵略を行っている」「日本の行動は、戦後の国際秩序と原則への重大な挑戦だ」などと批判している。敵国条項で日本を追い込もうとする思惑が透けてみえる。
ただ、78年に結ばれた日中平和友好条約第1条第2項は「日中双方は、国連憲章の原則に基づいて、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力または武力による威嚇に訴えないことを確認する」と規定している。この条約が、中国による先制攻撃を違法とする根拠になっている。条約がなければ、日本は最も攻めやすい国なのだ。
常任理事国入りは理想だが、まずは、この「敵国条項」削除が先ではないだろうか。国家安全保障を重視する安倍政権は真剣に検討してほしい。 (ジャーナリスト・長田達治)
=おわり