【社説】市民の非常識な行動が広めるMERS

 済州新羅ホテルは18日、急きょ営業を中止して宿泊客を別のホテルに案内し、当分は予約も受けないことにした。今月5-8日に家族や親戚など11人と共に宿泊した40代の男性が、17日深夜になって中東呼吸器症候群(MERS)に感染していたことが確認されたからだ。その影響で、ホテルの従業員31人のほか、当時宿泊していた大韓航空の乗務員など22人も隔離されることになった。

 この男性患者は141番目の感染者で、先月27日にサムスン・ソウル病院に知人の見舞いに訪れた際、MERSに感染していたことが分かった。済州島旅行中に自覚症状はなかったらしいが、ソウルに戻った後、10日ごろから発熱やせきなどの症状が出始め、13日に江南セブランス病院でMERSに感染していることが確認された。男性は12日、保健所に感染が疑われると届け出たが、保健所が手配する救急車による搬送を拒否し、自らタクシーに乗って病院に向かった。病院では隔離された上で治療を受けていたが、突然診療室の鍵を壊し、病院の入り口にいた職員にマスクを投げつけ「ウイルスをばらまいてやる」と叫んで出て行ったという。このように常識外れの行動が原因で、タクシー運転手や病院の職員4人も隔離されることになった。

 この男性が済州島を旅行していた事実を当局に報告したのは17日だ。その影響で、済州新羅ホテルは18日午前1時から非常態勢に入り、監視カメラの映像をチェックして、男性の移動経路を把握せざるを得なかった。男性はソウルで従業員12人を抱える衣料用品店を経営しており、航空機に搭乗するときはビジネスクラスを利用するなど経済的にも恵まれている。それにもかかわらず、今回の感染では非常識な行動で周囲に多大な迷惑をかけた。

 大邱では役所の職員が、MERSの自覚症状が出ていたにもかかわらず、複数の集会に参加し、銭湯にも通っていた。海外出張中のある大手企業社員の中には、現地の空港職員から検査と隔離を求められた際、これに反発するケースが相次いでいる。国民の多くは国と医療機関から求めがあった際、自ら行動を慎んで感染拡大阻止に協力しているが、MERSについてよく理解しているはずの公務員、企業経営者、大手企業の社員などが自分勝手に行動し、周囲に多大な迷惑をかけているのだ。一定の教養や知識を身につけているはずの彼らが、自分たちの身勝手な行動故に周りの人たちが多くの被害を受けている事実から顔を背け、自制しないのが韓国社会の現実なのだ。

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