新潟水俣病:水銀健康被害、全容解明遠く

毎日新聞 2015年05月31日 23時22分(最終更新 05月31日 23時22分)

 「世界の水銀対策をリードする」。望月義夫環境相は31日の新潟水俣病公式確認50年式典で、世界的に水銀の製造や輸出入を規制する水俣条約の早期締結に向け決意を述べた。

 先進国では水銀の使用量は減ったが、途上国では今も水銀は体温計や血圧計などに使われている。小規模金採掘で利用された水銀は環境中に排出され、健康被害が出ており、世界が協力して規制に動き出した。だが、水銀の健康被害の全容はいまだに解明されていない。

 世界保健機関(WHO)は、成人の毛髪に含まれる水銀濃度が50ppm以上になると神経症状が表れる可能性があるとする。環境省も「世界的に合意された数字」との見解だ。

 しかし、新潟青陵大福祉心理学部の丸山公男教授(精神医学)は、新潟大などが1965年に実施した住民調査を改めて調べた結果、手足のしびれなどの神経症状が出た成人の新潟水俣病患者103人のうち、48人が毛髪水銀濃度が50ppm未満だったとの論文をまとめ2012年に米医学誌に発表した。

 今年3月の新潟水俣病3次訴訟新潟地裁判決では、水銀摂取後、40年以上経過して発症する「遅発性水俣病」の可能性が初めて認められた。

 日本政府は条約の年内締結に向けた法案を今国会に提出しているが、立教大の関礼子教授(環境社会学)は「日本政府が足元の被害の全容解明にきちんと取り組むことで初めて、水俣病の教訓を生かせる」と話す。【渡辺諒、大場あい】

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