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【中高生のための国民の憲法講座】
第93講 錯綜する9条解釈と安保法制 奥村文男先生
◆安保法制の内容
今年3月20日に与党協議で安保法制の合意が成立しました。合意内容は、(1)有事には至らない「グレーゾーン事態」への対処、(2)わが国の平和と安全に資する活動をする他国軍隊支援のために周辺事態法を改正し、米軍等に対する燃料、弾薬の補給を可能にすること、(3)国際社会の平和と安全への一層の貢献(他国軍隊を後方支援するための恒久法の制定、PKO法の改正)、(4)集団的自衛権の行使容認、(5)その他関連する法改正事項(船舶検査活動、他国軍隊に対する物品・役務の提供、在外邦人の救出等)を柱としています。
これまで多年に亘(わた)って懸案であった事項を法制化し、わが国の安全及び国際社会の平和に果たす自衛隊の役割を明確化しようとする姿勢は高く評価することができます。しかしながら、これらの合意は、自衛権(集団的自衛権も含めて)発動以外の武力行使を認めない9条の政府解釈を前提にしていますので、中途半端な内容になっています。
(1)では、グレーゾーン事態(例えば、武装漁民による離島の占拠等)で自衛隊をどう用いるのかは不明です。また米軍等の武器等の防護では(例えば、日本近海の公海上で日米共同訓練中に、米軍の艦船が攻撃された場合等)、合意案では集団的自衛権の発動ではなく、自衛隊法95条「武器等の防護のための武器の使用」の規定を使えるように法整備をすることになっています。