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【中高生のための国民の憲法講座】第93講 錯綜する9条解釈と安保法制 奥村文男先生

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【中高生のための国民の憲法講座】
第93講 錯綜する9条解釈と安保法制 奥村文男先生

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 前回92講で、憲法9条で「放棄された戦争」の範囲について3説を紹介しましたが、甲説は「国際紛争」の理解が自衛戦争は含まれないとする国際法(不戦条約や国連憲章)の常識からかけ離れており、妥当ではありません。

 乙説も制憲議会の審議で「前項の目的を達するため」の字句が追加された際に、GHQ(連合国軍総司令部)から日本側に大臣を文民とする条項(現66条2項)を入れるように要求があった経緯を無視するものです。

 また、乙説は9条1項では自衛戦争は認められるが、2項で戦力の保持が禁じられているから、結局認められないという極めて不自然な解釈になります。こう考えますと、妥当な説は丙説ということになりますが、「丙の2」説は自衛力を戦力と区別し、自衛力を超えたものを戦力とし、戦力に至らないものを自衛力とする点で堂々巡りに陥っています。結局、「丙の1」説が最も論理的に整合性の取れた解釈と思われます。この説では、2項の「交戦権の否認」も「戦力の不保持」と同様に「前項の目的」を受けた無制限なものではないと解します。

 自衛隊を合憲とする世論は定着していますが、憲法解釈は上述のように錯綜(さくそう)しています。国の安全という最も重要な事項が条文を読んでも容易に理解できないということは非常に深刻な問題です。

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