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【中高生のための国民の憲法講座】
第91講 祖国を守る者は誰なのか、13条の意味 高乗正臣先生
国連が世界の警察官として十分な機能を発揮するまでは、世界の国々は各々の実力で自分たちの国民の安全を守らなければなりません。これが国際社会の現実の姿です。
◆各国の憲法
世界各国の憲法は、それぞれの国民が自分たちの祖国を守る義務を定めているのが普通です。各国の憲法は、必ずしも「兵役の義務」(徴兵制)を定めているわけではありませんが、何らかの形で国民に「祖国を防衛する責務・義務」があることを定めています。
欧州連合(EU)に加盟しているオーストリア、ポーランド、デンマーク、フィンランド、ギリシャのほか、ロシア、スイス、エジプト、マレーシア、中国、韓国などは、憲法の明文で男子の国民に兵役の義務があることを定めています。ただし、多くの国では、良心上の理由から武器を持ってする兵役を拒否する者に対しては、社会福祉、環境保護、難民支援、文化財保護などの非軍事的な代替役務に従事することが定められています。
例えば、永世中立を掲げるオーストリア憲法は、「すべての男性の国民は、兵役義務を負う。女性の国民は、任意に連邦軍において軍人として役務を行うことができ、また、当該役務を止める権利を有する」(第9a条(3))。「兵役義務の履行を良心的理由により拒否し、これを免除される者は、代替役務(文民役務)を行う義務を負う」(同条(4))と定めています。