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【中高生のための国民の憲法講座第88講】「人権」「基本権」の意味を考える 高乗正臣先生

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【中高生のための国民の憲法講座第88講】
「人権」「基本権」の意味を考える 高乗正臣先生

 例えば、国民が自国の政治に参加する参政権や国家から特別な利益を受ける受益権(国家賠償請求権、刑事補償請求権など)、福祉国家の憲法として経済的弱者に国が特別の保護を与える社会権(生活保護請求権など)は、特定の性格をもつ国家を前提として成立する基本権ですから、右に見た国家を超越した権利である「人権」とは区別されます。

 この意味から、右の参政権や社会権などは原則として外国籍の人には保障されないと考えられています。

 ◆フランスやドイツは

 1789年のフランスの人権宣言は、正確には「人(人間)と市民の権利宣言」といいます。この宣言は、近代憲法の核心である人権の観念を確立したといわれますが、よく読むと、すべての人間に保障される「人権」と、人権とはいえない「市民の権利」とが存在することを示しています。ちなみに、ここにいう人も市民も男性のみを意味していました。

 ドイツの憲法学では、この点はより明確です。ドイツでは、「人権」と「基本権」という語が意識的に区別して使われ、前者は国家以前の権利という性質をもち、国籍を問わず何人に対しても保障される権利・自由であるとされ、後者はドイツ国民のみに保障される権利・自由であるとされています。

 人権と基本権を区別して考えることは、解釈の上だけでなく憲法改正の際にも重要な意味をもちます。

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