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差し止め決定文に「曲解引用」 困惑する地震動の専門家

(2015年4月15日午前7時40分)

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを命じた福井地裁の決定文の中で、原発で想定する地震の揺れに関する発言を引用された専門家は「曲解されたものが引用されている」と困惑している。関電もこれまでの福井地裁での審尋で、原発の設備や技術面に対する地裁の認識について「事実誤認がある」と訴えてきたが、決定文では聞き入れられなかった形だ。

 決定文では、原発の基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)に関して、地震動の強さを専門とする識者が新聞記者の取材に応じて発言した内容を引用している。それを元に、基準地震動は「実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」と指摘し、基準地震動を超える地震が到来すれば炉心損傷に至る危険が認められるとした。

 だが、決定文に登場する識者の入倉孝次郎・京都大名誉教授は取材に対し「全くの事実誤認。決定文にある発言は、新聞記事を元に原告が曲解して書いているものが引用されている。正しい理解のために正確に引用してもらえず非常に残念」と述べた。

 決定文で「地震の平均像を基礎として基準地震動を策定することに合理性は見いだしがたい」と信頼性を疑問視している点について、入倉名誉教授は「基準地震動は地震の平均像を基礎にして決めていない」と否定した。

 さらに、東日本大震災で東京電力福島第1原発の揺れが基準地震動を上回ったことについても、原子力規制委員会の事故調査の分析で地震動との因果関係を否定していると指摘。「基準地震動の実績から言えば安全面は保証されているし、理論面でも地震動の評価に関してはむしろ精度が向上している」と反論し、決定文の内容は認識不足で間違いと強調した。

 昨年5月に関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転差し止めを命じた判決内容でも、専門家から「原発の技術面や科学的根拠に対する福井地裁の認識不足」との指摘が相次いでいた。関電は仮処分申し立ての当事者の意見を聴く審尋の中で、こうした原発の設備に関する地裁の認識を「事実誤認」と訴えてきた。

 例えば大飯の判決で「外部電源と主給水ポンプを(最も高い耐震性の)耐震Sクラスとすべき」とした点には、主給水ポンプは発電のための設備であり、地震発生などによる事故時には原子炉冷却を行う別の給水設備が機能し耐震性もあると主張。ただ、今回の決定文でも聞き入れられず、大飯の判決と内容は変わらなかった。

 今回の決定文で「使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性はBクラスで、Sクラスの方策が必要」などとした内容についても、関電は審尋で「規制の基準はBクラスだが、実際には耐震Sクラスの実力を持っている」と主張していた。

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