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【中高生のための国民の憲法講座】
第83講 長尾一紘先生 世界最古の君主制としての歴史
日本国は、立憲君主国です。イギリス、スウェーデン、デンマークなどと同じタイプの国家です。
これらの君主国において、それぞれの君主は、すべて「象徴」としての役割を果たしています。憲法に、象徴についての規定があるか否かは関係ありません。このほかの点については、それぞれの国の伝統によって異なります。
西欧の君主制と異なる
天皇制の特質として、つぎの2点を挙げることができます。
第1に、天皇制は世界最古の君主制です。
西欧の王朝は、いずれも数百年の歴史をもつにとどまりますが、日本の皇室は千数百年の歴史をもち、神話の世界にとけ込んでいます。その結果、西欧の君主制にはみることのできない特質を示すようになっています。
天皇は、上古以来、一貫して「祭祀(さいし)王」としての性格をもってきました。西欧においても、かつては、それぞれの部族の首長(族長)が「祭祀王」としての性格をもっていましたが、それらはすべて途絶えてしまいました。「祭祀王」としての性格がそのまま現在に続いているのは、日本だけにみられる現象です。
「祭り主」のしごとは、国の平和と民の安心を祈願することにあります。歴代の天皇は、「国平らかなれ、民安かれ」と祈願してきたのです。