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【中高生のための国民の憲法講座 第81講】
公民教科書の憲法像は正しいか 長尾一紘先生
各国の憲法には、それぞれ「基本原則」があります。
「基本原則」は、その憲法の特徴を示す標識です。「基本原則」とは何かということを確認することは、自国についての自画像を描くことを意味するのです。
憲法制定以来、「基本原則」についてさまざまな主張がなされてきました。原則は2つだという見解、3つだという見解、4つだという見解、5つだという見解などが主張されています。学説は多様ですが、これを3つの立場に整理することができると思います。
◆「3原則説」
多くの論者は、「3原則説」をとっています。たとえば、つぎのように主張します。
「日本国憲法は、国民主権、人権の尊重、平和主義-の3つを基本原則とする」
中学校の「社会科・公民」の教科書では、もっぱら、この3原則説がとられています。これには、内容がシンプルで覚えやすいという利点があります。しかしこれには、権力分立が示されておりません。これでは一党独裁の国家と日本国を区別することが困難です。