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【中高生のための国民の憲法講座】
第80講 「普通の国」として何ができるか 長尾一紘先生
第2に、制裁戦争も「正しい戦争」とみることができます。ただし、一定の条件をみたす必要があります。湾岸戦争は、「正戦」としての制裁戦争の一例とみることができます。
積極的平和主義に立脚
つぎに日本国憲法にとっての「正しい戦争」とは何かということをみることにしましょう。考え方としては、つぎの4例を挙げることができます。
(1)「正しい戦争」なるものは、憲法上存在しえないとする立場
(2)個別的自衛権の行使としての戦争だけが「正しい戦争」だとする立場
(3)集団的自衛権の行使としての戦争も「正しい戦争」だとする立場
(4)国際法上「正しい戦争」とされているものこそが憲法上の「正しい戦争」なのだとする立場
自衛権は国家主権の属性とみることができます。日本国は、植民地でも、属国でもありません。(1)、(2)の立場には問題があります。
(3)の立場は、実際には、一定の条件つきで語られることが少なくありません。
(4)の立場の論者は、日本国を「普通の国」とみるべきこと、日本国憲法が国際協調主義をとっていることを重視します。
このように定説はありませんが、私見では(4)が妥当ではないかと思っています。日本国憲法は国連憲章と同じく、「積極的平和主義」に立脚しています。9条が禁止しているのは侵略戦争です。国際平和の維持、回復のために、他の国連加盟国と同じ活動をなしうるのではないかと思います。
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