自転車:走行中突然ボキッ 転倒し重傷 訴訟に

毎日新聞 2015年03月01日 09時00分(最終更新 03月01日 13時05分)

 乗っていた自転車が突然壊れ、転倒する−−。市民の足として親しまれている乗り物に、そんなリスクが潜んでいることが判明した。重傷を負った人がメーカーの責任を問い、訴訟に発展するケースもある。ここ10年で367件の事故が確認されているが、専門家は「氷山の一角に過ぎない」と指摘している。

 ◇堺の男性、歯8本折れ

 堺市堺区の建築業の男性(27)は一昨年6月、走行中に自転車のフレームが突然折れて転び、重傷を負った。男性はメーカーに約1100万円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こし、係争中だ。

 訴えによると、自転車は東大阪市のメーカー「ビーズ」が製造・販売し、「ドッペルギャンガー」のブランド名で展開する折り畳み式のマウンテンバイク。中国で製造された。

 男性は、事故の約7カ月前にインターネット通販で約2万2000円で購入。自宅近くを走っていたところ、前輪と後輪をつなぐアルミ合金製のフレームが突然折れて転んだ。顔を地面に強打し、8本の歯が折れたり、欠けたりした。

 男性の相談を受けて調査した国民生活センターは製品の欠陥の可能性を指摘した。センターの報告書によると、フレームには製造時から亀裂が生じていた可能性があり、走行時の負荷で破損につながったと考えられるという。同型品の試験でも破損し、「製品共通の問題である可能性がある」と結論付けた。

 ビーズは訴訟で製品に問題があったことを認める一方、治療費などの賠償額を争う姿勢を示している。ビーズによると、同型の自転車の販売は終了しているという。担当者は毎日新聞の取材に「製品の回収は考えていないが、事故がないか注視し、個別に対応したい」と話す。

 男性は、事故の約3週間後には結婚式を控えていた。式当日は仮歯を入れ、顔の傷は化粧で隠したという。男性は「購入前から欠陥を見抜くことはできない。安全だと信用して購入している消費者を裏切らないでほしい」と話している。

 自転車などの生活用品については、消費生活用製品安全法で、死者や重傷者が出る事故が起きた場合、それを知った日から10日以内に国に報告することがメーカー側に義務付けられている。一方、専門家は「自転車が壊れて事故が起こっても、軽いけがなら消費者が専門機関に相談しないケースが大半だろう。欠陥が原因の事故はもっと多いはずだ」と話している。【服部陽】

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