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脳死の女児 緊急時の人工心臓やむなく長期使用
1月14日 18時53分

脳死の女児 緊急時の人工心臓やむなく長期使用
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重い心臓病で移植手術を待っていた幼い女の子が13日、脳死と判定され、臓器が提供されたことを受けて、治療に当たった大阪大学の医療チームが記者会見し、緊急時に使う人工心臓を長期間使わなければならず、血液の塊ができて脳死になったという経緯を明らかにしました。

大阪大学医学部附属病院で治療を受けていた6歳未満の女の子は13日、脳死と判定され、14日朝早く臓器を摘出する手術が行われました。
医療チームによりますと、女の子は去年の秋、「特発性拡張型心筋症」という重い心臓病になり、症状が急激に悪化したため、緊急時に使う補助人工心臓を付けて移植手術を待っていました。
この人工心臓は長期間使うと血液の塊ができやすくなり、心臓で出来た塊が移動して脳の血管に詰まって脳死になったということです。
国内では、幼い子どもが長期間使える補助人工心臓がなく、医療チームは、ドイツで開発されて日本で承認を受けるための審査が行われている人工心臓を使うことも検討しましたが、女の子に血液の塊が出来たため使えなくなってしまったということです。
女の子の両親は、医療チームを通じてコメントを発表し、「国内では、子ども用の補助人工心臓が使用できなく、やむなく一時的な簡易の機械を使用するという選択肢しかありませんでした。ほかのお子様とご家族に同じことが起こらないためにも、一刻も早く改善していただきたいと心から願っております」と記しています。
主治医の平将生助教は「とても優しい女の子だった。両親は、臓器移植で患者の命をつなぐ『命のリレー』ということについてよく考え、自然と臓器提供の道を選んでいた」と説明したうえで、「幼い子どものための人工心臓が医療現場で使えるよう、承認を急いでほしい」と述べました。

両親がコメント「迷わず申し出」

重い心臓病で移植手術を待ちながら脳死と判定され、臓器を提供した6歳未満の女の子の両親は、コメントを発表しました。
(以下、コメント全文)「私たちの子は原因不明の拡張型心筋症になるまで、大きな病気をすることもなく、元気に成長してきました。昨年4月には幼稚園に入園し、初めての運動会の練習を一生懸命しておりました。運動会前日、風邪のような症状から病院を受診し、特発性拡張型心筋症であることが分かりました。12月に容体が悪化し、補助人工心臓をつけて移植を待機することしか命をつなぐ方法がなくなりました。国内では、子供用の補助人工心臓が使用できなく、やむなく一時的な簡易の機械を使用するという選択肢しかありませんでした。待機している間も小さい体で度々の脳出血や数回の開胸手術に耐えておりました。さらに何度も血栓が補助人工心臓内にでき、そのたびに管の取り替えも行っており、本当に生きた心地がしない日々でした。国内待機の限界を感じ、先生にお願いし海外での移植手術を目指し動き出しました。受け入れ先も決まり、渡米への準備をしているさなかの1月の上旬に最も心配していた血栓が娘の脳に飛び重篤な脳梗塞を起こしました。それでも諦めずに回復を祈っておりましたが、2日後に娘は脳死状態になりました。命をつなぐはずの補助人工心臓が娘の命を奪う結果となってしまいました。娘には補助人工心臓のことを『あなたのことを守ってくれている大事なものだよ』といつも伝えていただけに、本当に無念でやるせない気持ちです。娘がほぼ脳死状態にあると分かった時に私たちは、心臓移植待機中のことを思い出しました。国内では臓器提供が少ない現状を強く感じておりましたので迷わず娘の臓器を、移植待機されているお子様やそのご家族様のために提供したいと申し出ました。私たちは娘が発病してからの3か月間、暗闇の中にいました。同じようなお気持ちの方に少しでも光がともせられたらと思っております。今回の娘の死によりお伝えしたいことがあります。それは小さい子に、リスクの高い一時的な簡易の機械しかつけられないという今の日本の現状です。子供用の補助人工心臓は海外では何年も前から使われているのですが、日本では使用の許可が下りておりません。他のお子様とご家族に同じことが起こらないためにも一刻も早く改善して頂きたいと心から願っております。それが、娘が命をかけて私たちに伝えたかったメッセージではないかと思っております。現在の日本の移植医療の現状を皆様にご関心を頂き、命のリレーが当たり前のように日本で行われるような環境に進んでいくことを望みます」。
両親はこのように記しています。

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