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2007冬 東アジア共同ワークショップ 北海道朝高、北星学園大付属高の生徒らが交流

「歴史を知り、互いに認め合おう」 「理解」と「友情」深めた2日間

参加者全員で記念写真

 「2007冬東アジアの平和のための高校生共同ワークショップ」(主催=東アジア共同ワークショップ実行委員会・空知民衆史講座)が2月17、18の両日、北海道の朱鞠内・旧光顕寺の笹の墓標展示館で行われた。共同ワークショップには、北海道朝鮮初中高級学校、北星学園大学付属高校の生徒、酪農学園大学の学生、南朝鮮の留学生など約70人が参加した。参加者たちは朱鞠内の歴史、自然、文化をたずねるフィールドワーク、朝・日高校生たちの研究報告会、各種交流会を通じて歴史を知ることの大切さを実感していた。

 1997年から北海道を皮切りに南朝鮮、大阪など場所を移して毎年行われ、在日コリアンや日本人、南朝鮮の学生らが過去の歴史と向き合い、共生社会実現に向けた交流を深めている東アジア共同ワークショップ。今回、北海道朝高と北星高校の生徒たちが主となり、朱鞠内でワークショップを行った。

 朱鞠内は鉄道・ダムのタコ部屋、朝鮮人強制労働によって多くの犠牲者が出た場所で、旧光顕寺には数多くの位牌が安置されている。フィールドワークで歴史を学習し、夜の討論会や旧光顕寺の壁塗り作業、朱鞠内湖でのわかさぎ釣りなどで交流を深めた。生徒たちは交流の過程で互いの歴史をしっかり見つめなおし、朝・日間の友好親善を促進させていくきっかけを作ったようだ。

肩を組んで歌を歌う生徒たち

本音で語り合ったディスカッション

 討論会では日本の高校生から、「在日の利点は」と聞かれ、朝高生が「朝・日両面の視点、思考が持てる」などと答えたほか、逆に朝高生が「日本がどこまで学校教育しているのか知りたい」と聞くと、「『創氏改名』の言葉の意味を知っているが、中身を教えてくれる先生はいなかった」などの答えがあった。

 また、日本の高校生たちからは、「事実をいろんな人に伝えたい。今後も交流し、行動を起こしたい」「日本人のこと、日本で起こっていることについて在日の人のほうが詳しい。日本人は、もっと学ばなければならない」「教育は命を『継ぐ』こと。自分たちが作り出した社会の中で生きていくことが課せられている。今の歴史の勉強は自分たちの学歴を積むための手段としてしか受け止められていない」などの発言があった。

 一方、朝鮮報道からくる「北の脅威」について聞かれた朝高生たちは、「何事もウラ・オモテがある。一面的に思い込むのではなく、いろんなことを知って『判断』することが『真実』を知ることになる。ネットで朝鮮側の主張や情報も見ようとすれば見れる」などと語った。

 今回、朝高生を引率した北海道朝高教員の藤代隆介さん(33、同校サッカー部監督)は、「両校の生徒たちが互いを知ることによって、打ち解けていく姿がとてもよかった。日本の高校生に対して感情的な話よりも論理的な説明ができていた。これも日ごろからの学習があったから」と語る。「高教組の先生方も来てくれたのでよかった。来年からは、もっと多くの日本の高校生を呼んでワークショップをやってみようと話し合った」。

 朝高生たちはさまざまなことを感じ取っていた。

 「日本の生徒はどこまで歴史を知っていて、きちんとした会話が成り立つのかどうかとても不安だった。情勢学習をすることでその時の出来事などもわかるのに、教科書やメディアも信頼の置けない日本で普通に暮らしていて正しい歴史観を持てるのかというのが一番の心配だった。…しかし、一人一人よく今の情勢や在日同胞の気持ちまでわかっていてくれて、質問も積極的にしてくれたので私は漠然とした可能性のようなものを感じることができた」(北1年から編入した黄理恵さん)

 「北星高校の人たちはとっても熱心に私たちのことを知ろうとしてくれてとってもうれしかった。マスコミの偏向報道や教科書問題で私たちの存在があいまいになっている中、私たちについて知ろうとしている人たちや機会がとても大切だと思った。…互いを知り、力を合わせていくことがこの先とても大切だし、それがとても大きな力になると思う。まずはこうした小さいことから意見を交わして仲良くなって、1人でも多くの人が私たちに気づいてくれたらいいと思った」(2年の鄭梨奈さん)

 北星高校教員の中川昌輝さん(32)は、「生徒同士が本音で語り合える仲になれたことが一番の収穫。心通じるものがあった。自分の問題として捉える貴重な一歩となったと思う」とふり返る。

 北海道朝高と北星高校は以前から交流がある。昨年4月には映画「パッチギ!」を題材に語り合った。少しずつ知る機会を増やすことで本音を出し合う仲になろうという試みだ。

 北星高校生徒もさまざまなことを感じ取り、感想を残していた。「驚いたのは、現在でも在日朝鮮人に対する差別や嫌がらせが続いているということ。北朝鮮による日本人拉致が明らかになった時には学校に脅迫電話が掛かってきたと聞いた。在日の人たちが直接日本人に危害を加えたりしたわけではないのに、なぜそうなるのか全くわからない。…彼らに差別や嫌がらせをしている人たちには、同じ日本人として恥ずかしいという気持ちや多少軽蔑のような気持ちもでてくる」(3年の関根勇太さん)

 「在日朝鮮人の歴史や現状を知っている私たち日本人高校生が世間やメディアにメッセージを送ることで少しでもこのような恥ずかしい出来事をなくすことができればいいと思う。また、これらのことを学び、伝える義務が私たちにはあると思う」(3年の大野洋太さん)

 フィールドワークに同行し、朱鞠内の歴史の説明を行った深川市一乗寺の殿平真副住職(29)は、「朝鮮高校と日本の高校生が対話する場は少なく、率直に語り合える場があること」にワークショップの意義を強調する。

 「高校生の時期には実体験することがとても大切。日本の高校生にとっては、朝鮮高校の生徒と触れ合うことによって社会はさまざまな文化によって構成されていることを知る機会だし、朝鮮高校の生徒も日本高校生にたくさん主張することで、日本社会をもっとよくできるんだと知ってもらうことが大切だ。日本社会を作るうえで違いを認め合い、理解することが一番だということを知ってほしい」

 「理解」と「友情」を深め合うことが朝・日関係改善の一歩につながる。それをこの共同ワークショップは教えてくれている。【整理=金明c記者、資料提供=北海道初中高、北星学園大付属高校】

[朝鮮新報 2007.3.23]