学園ひろば
2006/04/25(火)
 相互理解 貴重な一歩
      映画「パッチギ!」 高校生が語る会 道朝鮮と北星大付 日ごろの思い率直に

車座になり、日ごろの思いを語った北星大付と道朝鮮のサッカー部員たち
 在日朝鮮人と日本人の若者を描いた映画「パッチギ!」(井筒和幸監督)をめぐり、北星学園大学付属高校(札幌市厚別区)と北海道朝鮮初中高級学校(同市清田区)のサッカー部員ら約九十人が参加した「語る会」が二十二日、札幌市内で開かれた。札幌映画サークルと、道教大生らでつくる「道開発教育ネットワーク」の呼びかけに両校が応じ、高校生たちは日ごろの思いを語り合った。互いを知ることから始める「開発教育」の実践を紹介する。(寺町志保)

 制服やジャージー姿の生徒が、班ごとに車座になり、自己紹介をして映画の感想を話す。「朝鮮高の女子に恋した主人公が、夜の川を渡る場面に感動した」(北星大付生)、「乱闘で朝鮮高生が、イゴシ・パッチギヤ!(これが頭突きじゃ!)と叫ぶ場面がよかった」(道朝鮮生)

 「パッチギ!」は一九六○年代の安保闘争さなかの京都を舞台に、地元高校生と朝鮮高生の衝突や友情、民族問題を描いた。自主上映会に合わせ、開発教育ネットワーク内の「映画de開発教育」チームが語る会を企画。札幌映画サークルの会員でもある北星大付高教諭の仲立ちで実現した。

◆交流は初めて

 両校は三年前から、教員有志が交流を積み重ねてきた。サッカー部は大会などで対戦しているが、部員の交流はない。「道朝鮮としても、他校生と語り合う機会は初めて」と、高級部サッカー部の藤代隆介監督。北星大付の生徒約七十人は、校内でビデオを見て参加した。

 語る会は、道教大生の司会で班ごとに進んだ。「映画に登場する朝鮮人の友情の深さに驚いた」と北星大付の生徒。「なぜだろう?」という司会者の問いに、道朝鮮の生徒は「昔は勉強や貧しさのため日本に来たり、連れて来られたりした。知らない土地で生きるために一致団結したからでは」と答える。「君らもルーツはそうなの?」と北星大付の生徒。そこから話は深まった。

 「拉致問題で学校にかかってきた脅迫電話のテープを聞き、ここで生活できるんだろうかと、何ともいえない気分になった」「在日韓国人と言うか、朝鮮人と言うかで反応が全然違う。日本で生まれ育ったのに、国籍でレッテルを張られる」。道朝鮮の生徒の正直な言葉に、北星大付の生徒が聞き入る。

◆背負った過去

 「学校で何がはやってるの」などと高校生らしい関心をぶつける場面もあった。道朝鮮の朴智永生徒会長は「普段は同じ高校生。違いは背負った過去の差。それは克服しなくては」。北星大付の東海林大地主将は「北朝鮮といえば、拉致や核の報道ばかり。彼らの気持ちを初めて聞けた。これを最後にせず、信頼を築きたい」と話した。

 映画de開発教育チームは随時、映画を題材に世界で起きている問題と、自分たちのかかわりを考える会を開いている。村上智美代表(道教大四年)は「自分の問題として語ってくれる参加者も多く、活動を広げていきたい」と話す。