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これまでの放送

No.3555
2014年9月24日(水)放送
揺れる地方議会 いま何が起きているのか

「この世の中を…。」

不正な支出を繰り返していた兵庫県議会の元議員。
ネットで女子中学生を威圧するようなメッセージを送った大阪府議会議員。

「本当に申し訳ございませんでした。」

今、地方議会の議員に厳しい視線が注がれています。
行政を監視し、地域に根ざした政策を実現するべき地方議会。
しかし、その担い手である議員の資質に疑問が投げかけられています。
本来、政策立案に役立てるための政務活動費。
その不透明な支出が広がっている実態が明らかになってきました。

市民オンブズマン 代表
「他の議員も一緒で、大変ひどい状況なんです。」

さらに、議会そのものの存在意義が問われる事態に直面しています。
議員のなり手が不足。
投票が行われないケースが相次いでいるのです。

地方自治の専門家
「議会制民主主義の根拠が大きく崩れる。
議会はいらないのではという声も聞こえてくる。」

私たちにとって身近な民主主義の現場である地方議会。
本来の機能を果たしていくために何が必要か、考えます。

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政務活動費 相次ぐ不透明な支出

兵庫県の市民オンブズマンです。
県議会の政務活動費に関する実態調査を進めています。
年度ごとに前払いで支払われ、余った分は返還が義務づけられている政務活動費。
兵庫県議会では昨年度議員1人当たり年間600万円が支払われました。
しかし、一部の議員は不透明な支出を繰り返し、その全額を使い切っている実態が明らかになっています。

これは切手を購入した際の領収書。
年度末に160万円分を購入しています。




市民オンブズマン兵庫 森池豊武代表
「とりあえず切手を買っておけば、いつでも利用できるとか、あるいは換金できる。」



異なる日付が書かれた2枚の領収書。
重ねると、金額やただし書きの部分が全く同じ。
領収書をコピーして使い回ししていた疑いがあります。



こちらは調査・研究の名目で熊本や長崎の観光地を訪れた領収書。
この議員は、妻を同伴して観光施設を訪れ、偶然400万人目の入場者となり記念品を受け取っていました。
広報誌には「いい思い出になった」とコメントしています。

市民オンブズマン兵庫 森池豊武代表
「何を調査されるんですかね。
それが兵庫県の県政とどう関係があるのか、どう生かしていくのか。
他の議員も一緒で、大変ひどい状況なんです。」

法改正でその他の活動にまで広がった政務活動費の使いみち。
政治資金の問題に詳しい専門家が不適切な支出につながりかねないと指摘しているのが、会議費です。
それまで議員主催の会合に限られていたものが、多くの議会で各種団体が主催する会合にも支出できるようになったのです。

日本大学 岩井奉信教授
「ともすると新年会だとか忘年会という場にもお金が出せてしまう。
実際に使われているところもあります。
大手を振って、こういう費用を政務活動費から出せるようになった。
これは非常に大きな違いだと思います。」

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どこまで“政務”? あいまいな境界

この会議費の支出が法改正後、3倍近くに増えた議会があります。
香川県議会です。
領収書を調べると、県政に関する住民との意見交換会として多くの支出がなされていました。
海水浴場の海開きで1万円。
年末のカラオケ喫茶での会合に支出していた議員もいました。
意見交換会での支出の回数が最も多かった議員は、1年でおよそ180件。

去年(2013年)4月7日には1日で19件回り、そのつど5,000円を支払っていました。
その詳細を見ると、カラオケ同好会の発表会、神社の催しが2つ。
さらに16の自治会が開いた花見や会合に出席したとしています。
どのような意見交換が行われたのか、取材しました。
カラオケ同好会の発表会に参加していた女性です。
この議員が発表会のたびに持ってきた、のし袋を見せてくれました。

女性
「こういう袋です、全部5,000円ずつ。」

「何名目でお持ちになるんですか?」

女性
「いつも会費。」

特に、県政に関する意見交換はなかったといいます。

女性
「舞台であいさつしてもらったら、すぐ帰ります。」

「始まる前、他の人と話していた?」

女性
「あまりないと思うけど。」

さらに別の参加者は、意見交換会ではなく一種の選挙対策だと受け止めていました。

男性
「『カラオケ発表会おめでとうございます』って言ってな。
『頑張ってください』、あとのことはあまりようけ言わんのや。
人気取ろうと思って来るんじゃないの。
結局、票集めのそういう下心があるんじゃないかと思う。」

この議員は、そのあと訪れたという神社での催しでも5,000円を支払っていました。
その間、住民との意見交換の機会はなく、終わるとすぐに次の場所に移動したと言います。

「参列された皆さんと、何か議員からお話したり?」

男性
「それはないです。
皆さんお忙しいから、県議の皆様も式典が終わったらすぐ帰られるんじゃないですか。」

こうした支出は適切だったと考えているのか。
議員に取材したところ文書で回答がありました。
「議員は僅かな時間でも県民の意見と地元の問題を聞くことができ、政策に反映・実現するきっかけとなると判断した」と答えています。

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政務活動費 相次ぐ不透明な支出
ゲスト北川正恭さん(早稲田大学大学院教授)

●政務活動費の適切な使い方、議員と住民の考え方のギャップは大きい?

今のビデオを見ても相当大きいというので、あれは現実だと思います。
したがってそういう部分を、公人たる、いわゆる議員さんは3つの責任があると思うんですね。
その1つは、まず法律的に説明できなきゃいけない法律的責任。
その次に道義的責任と、もう1つは議会活動費として、説明責任が堂々と果たせるということにしないと、今、市民の方は、あれは選挙目当てでしょということが圧倒的に多かったということは、そちらの目線に合わせて、議会活動費を、本気になって説明責任を果たせるものにしないと、この問題は解消しないと思います。

●政務活動費は公金であるという意識が低い?

そうですね。
相当、以前、いわゆる分権推進法の以前は、それが当たり前の政治行動があったんですね。
これが分権になって、議会よしっかりしろよと、大切だねという時にまだそれを引きずっているという問題が解決されていませんから、議会の皆さんの意識改革が必要だと思います。

●不適切な支出をなくすには?

まず1つは、1円から情報公開をして、説明責任が果たせるという会計上の処理の問題と、もう1つは内容ですね。
すなわち、どこどこへ視察に行ったと。
それは何の目的で行ったか、そして目的を達成して、それをどのような成果を県政や市政に与えることができたかという成果、アウトカムはきちっと出せる、その2つの2面で情報公開をしなければいけないというのが1つ。
もう1つは、紙だけで情報公開ということではなしに、ネットに載せて、いつでもどこでも誰でもが見られるような、そういう緊張感がないといけない。
そういうシステムを早く、今回この問題を契機に作り上げられるべきだと思います。
(領収書は1円まで公開すべき?)
はいそうです、1円からですね、公金ですから。
公金の意識が昔の習慣で薄かったと思います。
だからここは1円からきちっと出すという習慣、そういう制度、システムがいると思います。

●政務活動費の額が大きい自治体もあれば、ゼロの自治体もかなりある?

そうです。
500以上の自治体、議会がゼロなんです。
これは集権時代に執行さえしておればいいから、君たちは政治的な活動はいらないよというような扱いがあって、それで、まだゼロの所がありますから、多すぎて不適切使用があるということと、もう1つは全くゼロならば議会はなくてよろしいという文化を、ここはやっぱり変えないといけないという両面が政務活動費にはあると思いますね。

(本来はきちっと執行する、執行をチェックする、あるいは新たな提案を行うという意味では、対等になるための手段では?)
どうもですね、だから二元代表ですから、執行する機関と決定する機関が、二元が代表して、機関競争をしなければいけないのに、本当に調査して現地で調べてという、そういうための活動費があって、それを十分活用するということが、説明責任が果たせれば、有権者の方も、そらそうだと、もっと出そうと、こういう好循環に変えていく必要があると思います。

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立候補者ゼロ 議会の危機

今月(9月)16日、村議会議員の補欠選挙が告示された東京都神津島村です。
定員は10人。
欠員1人を補う選挙です。


選挙管理委員会 担当者
「(候補者は)ゼロだと思います、来ないんじゃないかと思います。
まだ届け出書類を取りに来ている方が一人もいませんので。」


結局、立候補者は現れず選挙は行われませんでした。
議員のなり手を探した清水勝彦さん。
議員としての1か月の報酬は17万円。
政務活動費もないため出張費などはその中から捻出しています。
この条件では議員になりたいという人も現れず、議会そのものの存続が危ぶまれると言います。

清水勝彦議員
「現実問題、島の自分の暮らしに精いっぱいというのが、候補者が出ない原因のひとつなのかなと。
島独自の自治ができていかないような事が危惧される。」

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議会はいらない? 問われる存在意義

人口10万の町も、議員のなり手不足に悩まされています。
北海道千歳市です。
去年の市議会議員選挙で25人の定員を超える立候補者が集まらず、初めて無投票となりました。
社会福祉施設を経営しながら議員を務める、五十嵐桂一さん。
無投票当選に複雑な思いを抱いています。

五十嵐桂一議員
「選挙という審判を我々は受けていないので、我々が決めたこと、議決したもの、採決したものに対して、正当性がちゃんと担保されているのかと。
これは大変なことになってしまうなと、そこは強く感じました。」

五十嵐さんの議員報酬は月38万円。
政務活動費は3,000円足らずです。
自分のように兼業が成り立つ職業でなければ立候補するのは難しいと考えています。

五十嵐桂一議員
「選挙に落ちる可能性も当然あるわけですから、一般的に暮らしている市民がリスクを取りたくなくなっている。」

今後、議員の報酬などをどうしていけばいいのか。
五十嵐さんたちは住民にアンケートを行いました。
すると、議会そのものの存在を否定するような厳しい意見が寄せられました。

“行政のチェックなら町内会長で十分”
“何をしているか全く分からない”
“議員はいらない”

五十嵐桂一議員
「我々がやっている議会人としての仕事が、市民が求めている仕事に対して見合っているのかどうなのか。
我々としては一生懸命、住民との距離を縮めようと思っているんですが、なかなか浸透しきれない。」

「議員は市民との関係でどうあるべきなのか。」

自分たちの問題意識と市民の声とのギャップをどう埋めていくのか。
五十嵐さんたちは模索を続けています。

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新たな担い手を 地方議会の模索

新たな議会の担い手を生み出していくにはどうすればよいのか。
その課題に取り組んできた自治体があります。
人口およそ1万3,000の北海道栗山町です。
議員たちは住民との距離を縮めるために、町内にポスターを貼って、議会でどのようなテーマを議論するのか知らせています。

「9月の議会の定例会が火曜日から始まりまして、ぜひまた議会の方にも傍聴に足を向けていただきたいと思いますので。」




さらに議会閉会後は、審議した内容を住民に報告する「議会報告会」を開くことも条例で義務づけています。
こうした取り組みの中から、新たに議員となる住民が現れました。



3年前、最年少で初当選した三田源幸(もとゆき)さん、47歳です。
農業と兼業で議員活動をしています。
議員になったきっかけは、5年前の議会報告会。
当時、近隣の町との合併が大きなテーマとなっていました。
ふるさとの将来を方向づける議員の仕事を初めて目にして、意識が変わったといいます。

三田源幸議員
「議員が何をしているか分からなかったものが、こういう報告会に出まして、本当に身近に感じて、私も、もしもその立場であればお話をよく聞いて、町のために働けたらなという思いはありました。」

議員になって、住民にメッセージを発信する立場になった三田さん。

三田源幸議員
「議会報告会に来たことある?」

住民
「…ない。」

三田源幸議員
「なかったか。」

自分が議員になるきっかけとなった議会報告会への参加を呼びかけています。

三田源幸議員
「なかなか議会について関心を持ってもらうって難しいかなと思うんですよね。
彼よりも若い方、また若い方というふうに伝わってもらえたらなと思いました。」

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議会はいらない? 問われる存在意義

●立候補者不足は危機的状況?

大変、危機的な状況だと思います。
おもしろくないんですよね。
何してるか分かんないということから、まず見せるところから、今の栗山町もそうですけども、議会全体で報告会して、ああそうかと、じゃあ私も立候補しようかとか、そういうことになる。
だからまず、議員になるリスクが多すぎるということになれば…。
(職を失うということ?)
そうです。
回転ドアで、ある銀行の部長を務めていたけれども、こういう問題意識を持って立候補したいと。
それで通ればそのまま議会、議員に。
そして、もし運悪く落選したら、もう1回戻れるというようなシステムを作るとか、いろんな方法論がまだ民主主義を成熟させるための手段が不足しているから、こういう状態も起こる。
あるいは、女性議員の数が多い議会は、全国で2つぐらいしかないんですよ。
そうすると、本当の民意の代弁してないから、なんか中年以上の男性が圧倒的に多いということで、若い人もいない、女性も少ないということになると、セクハラ発言がそのまま認知されるとか、そういう問題も、これから議会は、この問題を契機に徹底的に解明をして、市民が納得する議会改革までいかないといけないと思いますね。

●データの数字、議会で活発な議論は行われている?

私、ずっとそういうことを追求してきてましたから、やっと5%きたという思いがあるんで。
(議員提案が?)
そうです、今までゼロだったんです。
だから議会は、これを5%、10%、20%にしていくと、民意の代表として、皆さんに、住民に代わって代弁して、議会はおもしろいねと、じゃあわれわれも代表を出そうと、そういうことが求められていると思います。

●地方はみずから考えて政策立案、実行しなければいけないタイミングでは?

この国が地方創生で政府が動き始めましたけれども、地方が、議会こそが改革のチャンピオンなんだと。
自分たちが、いわゆる新しいお宝を探して作り上げていくという、そういう努力がいるからこそ、住民の方も分かってます、マスコミも分かってるからこそ、今度の議会のさまざまな不祥事はなんだというふうに大きくなったんですから、これをピンチをチャンスで切り替える機会だと、私は議会の皆さんが捉えていただけたらいいなと思っています。
(議会不要論が6割…。)
6割を超えてるんです。
だからそこに対してどう答えを出すかという、そういう努力は、今こそ議会に求められていると言えると思います。

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