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【暮らし】

<はたらく>「残業代支払いを」 トラック運転手の待機/時間把握できる外回り

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 働き方をめぐり、労働時間に応じて残業代を支払うよう求める判決が続いている。法律に定められた当然のことだが、労働時間を一定時間以下にみなしたり、成果などの手当に残業代を含めるなどの手法が広がる業界も少なくない。労働を時間ではなく、成果で評価すべきだとの議論も始まっている中、「働く」とは、人の時間を縛ってお金にすること−という現実は重い。 (三浦耕喜)

 持ち場を離れられないのに、待機時間を給料に入れてくれない、外回りで夜まで駆け回るが、給料は頭打ちでサービス残業ばかり、成果給などの手当を残業代に代えられている−。そんな悩みのある人に重要な判決が下されている。

 トラック運転手の男性ら四人が、東京都北区の運送業「田口運送」に残業代の支払いを求めていた訴訟で、横浜地裁相模原支部は四月二十四日、ほぼ原告側の主張通り、計約四千三百万円を支払うよう命じた。会社側は控訴した。

 裁判では待機時間が労働時間に含まれるのか、成績給や職能給などの成果への手当を、残業代にみなせるかどうかが争われた。

 トラック運転手は荷物を積み降ろす順番など、待機時間が長い。会社側は「待機時間は労働から解放された休憩時間」と主張し、賃金を計算する労働時間とみなさなかった。これに対し、男性らは「待機中もいつ連絡があるか分からない」と主張。判決も原告の主張を踏まえ、「待ち時間は実作業時間」と判断した。

 一方、成果などの手当に残業代を含める点について、社側は「賃金規定にあり支払い済み」とした。だが、判決では手当について「通常の労働時間内でも発生する」と指摘。手当の一部に残業代が入っているとみなすには、残業代部分が明確に区別できる必要があるとの基準を示し、「(残業代の)割増賃金に当たる部分が区別できず、時間外労働の対価と評価できない」と断じた。

 判決のポイントは、働くことについて、会社の「指揮命令下」に置かれている状態を時間で計ること。判決では、トイレやコンビニエンスストアに行く程度では、指揮命令下から離れた休憩時間とみなせないとした。手当に含める手法を退けたのも、どれくらいの残業代に相当するか時間で区別できないためだ。

     ◇

 携帯電話が普及した現代では、「指揮命令下」に置かれる範囲は広い。

 最高裁第二小法廷は一月二十四日、旅行添乗員として働く派遣社員の女性が、大阪市の「阪急トラベルサポート」に残業代支払いを求めた訴訟で、会社側の上告を棄却。約三十万円の支払いを命じた二審東京高裁判決が確定した。

 外回りの仕事では、労働時間が算定困難として、一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」の適用が認められている。何時間働いても賃金はみなした労働時間分だけだ。裁判では、添乗員の業務に制度が適用されるかが争われた。

 最高裁は、日報で会社は詳細な報告を得ていること、携帯電話を常に持たせていることなどを挙げ、同制度は適用されないと判断した。旅先でも常に会社の指示を受け、労働時間は把握できるためだ。

 待機時間が長く、「みなし」で労働時間が頭打ちなのは、これらの業界に限らない。今後、給与体系の見直しも迫られそうだ。

 日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士は「一日は二十四時間しかない。労働を時間で評価するのは、健康を維持する睡眠時間、私生活・社会生活を営む時間を守る人類共通のルールだ」と指摘。労働時間にかかわらず成果で給与を支払う「残業代ゼロ」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)については「最初は対象を限定して導入しても、緩和されるのは時間の問題。労働を時間と切断すれば、過労死はますます増える」と話している。

 

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