公的保険が使える診療と保険外の診療とを併用する「混合診療」の拡大案を28日、政府の規制改革会議が正式に提言した。6月の成長戦略の取りまとめに向けた大詰めの調整では、診療の申請から承認するまでの期間や実施医療機関をどこまで絞り込むかが争点となる。難病患者が国内で未承認の薬などを使える選択肢を増やすためだが、安全性の確保や保険財政への目配りが求められる。
規制改革会議 | 厚労省検討 |
○治療実施までの期間 (現行は3~6カ月) |
|
「できるだけ迅速に」 | 1~2カ月に短縮 |
○実施医療機関 (現行は厚労省が医療技術ごとに認め、平均10カ所程度) | |
「できるだけ患者に身近な医療機関で」 | 15の中核病院、連携医療機関も含め百数十カ所 |
日本では混合診療は原則として禁止だ。保険外診療を併用すれば、本来保険がつかえる診療の費用も含めて全額が患者の負担となる。例外として厚生労働省が認めた技術内容や医療機関に限り、混合診療ができる仕組みがある。安倍晋三首相は「仕組みを大きく変える制度改革を関係閣僚で協力してまとめてもらいたい」と4月に指示し、混合診療を拡大する方針は決まっている。
政府内で意見が違うのは拡大する方法だ。現行制度では申請を承認して治療に入るまで3~6カ月かかり、実施できる医療機関も1技術で平均10カ所と少ない。規制改革会議は「患者のニーズに応えきれない」と指摘し、患者と医師の合意があれば混合診療が受けられる「選択療養(仮称)」の仕組みを「現行制度に付け加える」(岡素之議長)よう求めた。
厚労省は現行制度の手直しにとどめたい考え。同省や日本医師会、健康保険組合など医療関係団体は「安全性・有効性が保てるか不安だ」とし、混合診療の拡大にはもともと慎重だ。公的保険の支出がかえって増え医療費が膨らむとも指摘する。
ただ混合診療を拡大したい首相の考えを踏まえて、厚労省内では実施までの期間を1~2カ月に短縮し、実施医療機関は臨床研究で実績のある15カ所の中核病院と、それらが連携する医療機関とする案が浮上する。連携先も含め百数十カ所程度で実施できるよう見込む。
関係者によると、規制改革会議内では実施までの期間は最短で2週間、実施医療機関は数百などとする意見もあったが、28日には明示しなかった。厚労省と折り合う余地を残した形だが、医療関係団体の懸念は根強く調整には時間がかかりそうだ。
混合診療、安倍晋三、規制改革会議、厚生労働省、岡素之、診療、実施病院