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新「労働時間制度」創設へ検討指示
5月28日 20時40分

新「労働時間制度」創設へ検討指示
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安倍総理大臣は政府の産業競争力会議の会合で、成果によって報酬が決まる新たな「労働時間制度」について、長時間労働を抑制する取り組みと合わせて、創設に向けて検討を急ぐよう関係閣僚に指示しました。

総理大臣官邸で開かれた政府の産業競争力会議の会合で、有識者議員は、創設を求めている成果によって報酬が決まる新たな「労働時間制度」について、対象となる労働者の「イメージ」を示しました。それによりますと、「職務の内容と目標が明確で目標の達成に向けて業務の遂行方法や労働時間などについての裁量度が高い人材」として、企業の中で一定の責任ある業務を担う社員などとしています。そして具体的な業種や業務について、経営企画や新商品の開発、海外プロジェクトなどを担うリーダー、それにITや金融関連のコンサルタント、資産運用を行うファンドマネージャー、経済アナリストなどを挙げています。
一方、田村厚生労働大臣は年収が数千万円に上る為替ディーラーや経済アナリストなど、ヘッドハンティングを受けて世界の企業で活躍するような人であれば、経営側から長時間労働を強いられることは考えにくいとして、高度な専門職に限って創設を容認する考えを示しました。
これを受けて、安倍総理大臣は「働き手の数に制約があるなかで、生産性の高い働き方ができるかどうかに成長戦略の成否がかかっている。成果で評価される自由な働き方にふさわしい『労働時間制度』の新たな選択肢を示す必要がある」と述べ、長時間労働を抑制する取り組みと合わせて、新たな「労働時間制度」の創設に向けて検討を急ぐよう関係閣僚に指示しました。

「将来は一般労働者も適用を」

産業競争力会議の民間の有識者議員で、次の経団連会長に就任する東レ会長の榊原定征氏は記者団に対して「時間でなく成果で給与を決める制度について議論した。民間側としては労働時間に縛られない働き方を選択肢の一つとして加えてほしいと提案した」と述べました。
そのうえで「産業界としては国際競争力を強化するためにも労働時間に縛られない成果で働くという制度の導入を強く求めており、その範囲も研究者や技術者などに広げてほしい。また、将来的には労使の合意のうえで一般の労働者にも適用を広げることも検討してほしい」と述べました。

「安易に導入されれば健康問題も」

公明党の石井政務調査会長は記者会見で、「公明党は政府に対して『時間に縛られずに柔軟な働き方をしたいという社会的ニーズがある一方で、制度が安易に導入された場合には、サービス残業が合法化されたり長時間労働が常態化したりして、働く人の健康問題に関わってくるので、十分配慮してほしい』という申し入れをしている。真に必要とされるところに限定していくことが必要なのではないか」と述べました。

「働いた時間で賃金」の現行制度

現在の制度では賃金は原則、働いた時間によって支払われます。労働時間は1日8時間、週40時間と法律で決められていて、これを超えて働かせた場合、企業は25%以上の割増賃金を労働者に支払わなければなりません。
午後10時から午前5時にかけての深夜時間帯に時間外労働をさせた場合は、さらに割増率が高くなり50%以上になります。
例外として、実際に働いた時間にかかわらず一定の時間働いたものとみなして賃金を支払う「裁量労働制」がありますが、8時間を超えてみなし労働時間を設定する場合は手当を支払わなければならないほか、深夜時間帯や休日出勤についても割増賃金を支払わなければなりません。
裁量労働制は調査研究など一部の業務で認められていて、全労働者の1.5%に当たるおよそ80万人がこの制度で働いているとみられています。
厚生労働省が行った調査では、裁量労働制を導入している多くの企業や労働者が「仕事を効率的に進められるようになった」など肯定的に捉えているものの「労働時間が長い」「業務量が多すぎる」など課題を指摘する声も出ています。また、「管理監督者」の場合、8時間を超えて働いても残業代は支払われませんが、深夜労働に対しては割増賃金が支払われます。
このように現在の日本では、健康を害するような長時間労働を防ぐため、時間と賃金を完全に切り離した働かせ方は認められていません。

厚労省「プロジェクトリーダーなどは反対」

働いた時間ではなく成果によって報酬を決める制度について、厚生労働省は「ただ働き」や長時間労働を助長しかねないとして慎重な姿勢でしたが、28日の会議では対象となる年収や職種を限定したうえで、導入を容認する案を示しました。
しかし、産業競争力会議の有識者議員の提案にあるようなプロジェクトのリーダーなどを対象に含めることには反対しています。
こうした業務を担当する社員は多くの企業にいて決して特別ではなく、仕事の量や働く時間を自分で決めるのは事実上不可能だと見ているからです。
労使の合意や本人の希望が前提とはいえ、新しい制度の対象となることを拒否できないケースも出て、長時間労働が広がりかねないと懸念しています。

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