河川水や地下水も含めた水の循環を維持、回復するための施策を推進する「水循環基本法」が議員立法によって今国会で成立した。7月までに施行される予定だ。
21世紀は「水の世紀」とも呼ばれる。基本法は、水を「国民共有の貴重な財産」と位置づけ、政府や自治体が保全策を講じる責務を明記した。水循環政策本部を内閣に置き、基本計画も策定する。
「水」行政は河川と下水道が国土交通省の管轄、水源地が林野庁などと「縦割り」が指摘されて久しい。所管官庁を一元化することで一体化した管理が期待できる。関係省庁は連携し、実効ある政策を早期に提示してほしい。
法制定の背景には、外国資本による水源地などの森林買収が全国で相次ぎ、地下水が奪われるとの懸念が広がっていることがある。民法では土地所有権の範囲を「法令の制限内において、その上下に及ぶ」とされ、地下水は土地所有者のものとなるからだ。
林野庁の集計では、北海道などで2006年から12年までで約68件、800ヘクタールの森林を外資が取得している。ほかにも日本人名義での購入や、会社ごと買い取るケースもあるとされる。鹿児島県内でも霧島市の山林が中国系とみられる企業に買収されている。
自治体の危機感は強い。水源地の売買前にどう開発するのかを点検する事前届け出制度にしたり、地下水採取を許可制にしたりする条例制定の動きが広がっている。
その点、基本法に土地所有者の責務についての規定が盛り込まれなかったのは残念だ。土地所有者から不満が出ないように「地下水は公のもの」と法律に定めることを国に求めた自治体にとっては不十分な内容といえる。
基本法に基づき地下水を保全する法律をつくる場合は、この問題を考慮し過度のくみ上げを規制できる根拠を明確に示すよう求めたい。また所有者とのトラブルを避けるため、水源地の民有地を買い上げる自治体もある。国は支援を検討すべきだろう。
所管官庁が一体化した施策を進めることは、水の循環を守るうえで重要だ。これまでの都市づくりは雨水を染み込ませ地下水を増やすのではなく、川や海に早く流す治水を主眼に置いてきた。雨水をためてトイレの洗浄水や散水などに利用するのも、自治体や事業所任せだった。
今後はどんな体制で管理するかが課題となる。複数の都府県が関係する河川は調整が必要だ。関係機関は協力体制づくりを急ぐとともに、治水や環境保全の在り方の議論を深めてほしい。
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