「中国のでっち上げ」 英国人著書に日本人訳者が加筆

10万部以上が売れたベストセラー
「南京大虐殺は中国のでっち上げ」…著者も知らない内容が追加され問題に

「中国のでっち上げ」 英国人著書に日本人訳者が加筆

 外国人の著者を擁して日本でベストセラーになった歴史歪曲(わいきょく)書がある。この書籍が、事実上日本の極右派が書いたものだということが明らかになり、波紋を呼んでいる。

 問題の書籍は、1960年代から80年代にかけてフィナンシャル・タイムズやニューヨーク・タイムズの東京支局長を務めた英国人記者ヘンリー・ストークス氏の著書『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』。「今の戦争史は、戦勝国史観の下で記録されたものであって、日本は侵略国ではない」と主張している本書は、昨年12月の発売直後からベストセラーになり、10万部以上も売れた。日本の戦争を正当化し、日本こそが西欧列強からアジアを守る「希望の光」だったという英国人の主張に、日本の右翼は熱狂した。

 ところが販売から5カ月たった最近、共同通信が著者のストークス氏にインタビューを行い、著書の主な内容は翻訳者の藤田裕行氏によって著者の許諾なく無断加筆されたものだという事実が明らかになった。

 同書で「南京大虐殺は中国が捏造(ねつぞう)したプロパガンダ」と主張している部分について、ストークス氏は「(私が書いたのではなく)後から付け加えられた。修正する必要がある」「(南京で)非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と語った。インタビューの中で、後から翻訳者が思いのままに加筆した内容を確認し、誤りを認めたのだ。

 同書は、ストークス氏の単独執筆ということになっているが、実際は翻訳者の藤田氏がストークス氏にインタビューして書いた本だった。藤田氏は、南京大虐殺や従軍慰安婦強制動員を否定する極右団体「史実を世界に発信する会」の主要メンバーだ。藤田氏は「従軍慰安婦問題を説明する証拠は十分ではない」というストークス氏の主張も「慰安婦はすべて性奴隷ではない売春婦だった」とねじ曲げて記述した。

 藤田氏は、複数の箇所で自身の加筆があることを認めつつも、ストークス氏による単独執筆という形を取ったことについて「外国特派員がこういう内容を話せば面白いと思った。私が書けば『あれは右翼だ』と言われる」と語った。

 このように日本の出版倫理が崩壊している一因として、出版業界の不況が挙げられる。世界最大の市場を誇る日本の出版業界は、2000年代以降危機に直面している。昨年の書籍・雑誌の売上額は、1996年(2兆6563億円)に比べ1兆円ほど少ない1兆6823億円にとどまった。

 極右派が外国人を前面に出して本の内容をでっち上げるケースは、今回が初めてではない。93年に出版され「嫌韓の起源」と呼ばれている『醜い韓国人』も、極右派の論客、加瀬英明氏(78)が「朴泰赫(パク・テヒョク)」氏という正体不明の韓国人を著者に仕立てたものだ。

東京=安俊勇(アン・ジュンヨン)特派員
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