NHKが22日に発表した役員人事をめぐり、籾井(もみい)勝人会長が同日の経営委員会を前に、2月に再任したばかりの専務理事2人に辞任を迫っていたことが分かった。2人はこれを拒否。退任する理事の1人が経営委で籾井会長の罷免(ひめん)を求めるような発言をするなど、異常事態が続いている。

 NHKと経営委の複数の関係者によると、籾井会長は22日の経営委で、「塚田祐之(経営企画)、吉国浩二(人事・労務)両専務理事に対し、『3期目(1期2年)だから後進に道を譲ってほしい』と辞任を求めた」と説明したという。籾井会長は21日、理事と個別に会っていた。

 会長の要求に対し、「国会対応など予算業務担当の継続」を理由に2月に再任された両専務理事は辞表の提出を拒否し、理事人事の同意権をもつ経営委の判断に委ねる姿勢を示した。

 籾井会長は自身の就任会見での発言をめぐる国会対応に追われ2人を再任したものの、3月末に今年度予算が承認されたことで態度を変えたと見られる。

 だが、放送法55条で「理事に適しない非行」などがなければ任期中の理事は罷免できないため、籾井会長はクビ切りを断念。22日の経営委に示した25日付の人事案では担務は大きく変わったものの、任期切れの理事4人のうち2人の退任という小幅なものになった。会長の考えに近いとされる板野裕爾理事を再任、専務理事に昇格させ放送統括と国際放送統括という重要任務を担わせた。