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2014年04月14日 前へ 前へ次へ 次へ

成立した水循環基本法で資源保全を

 水資源の保全および循環を目的にした水循環基本法が、先の衆院本会議で全会一致で可決、成立した。水関連の主要法は31本、監督官庁は7省庁にまたがるなど縦割り行政の弊害が指摘されてきた。基本法成立で、一括管理による是正を進めるとともに、ここにきて増加している外資による水源地買収に歯止めをかける狙いもある。
 基本法では、水循環関連の施策や政府が総合的に取り組む基本指針などを盛り込む「水循環基本計画」を策定する。基本計画は閣議決定し、5年ごとに見直す。
 内閣に推進母体となる水循環政策本部を設置、水循環関連の施策を集中的かつ総合的に推進するとともに、関係省庁の横串的な調整機能も担う。本部長は内閣総理大臣で、水循環政策担当大臣が副本部長を務めることになる。
 基本法では、水の公共性と健全な水循環を明確化、基本施策として水源涵養能力を持つ森林のほか、河川、農地、都市施設の整備にいたる総合的な対応を打ち出している。また、水の適正かつ有効な利用とともに、地方自治体との連携を進めて流域での一体的な管理を図る。
 水関連法としては現在、河川法の国土交通省や上下水道の厚生労働省のほか、環境省、林野庁、経済産業省など7省庁がそれぞれの所管で監督している。しかし、現行法では地下水の管理は対象から外れているほか、河川法も河川のなかのダムなど構造物管理に限られて「平野部分」には及ばない。つまり、河川に流れ込んだ水は対象となるが、その途中は法の対象にならない。
 また、水道は厚労省の管轄だが、国税が使われるのは全体の25%前後で、大半は地方自治体と利用者が負担しているというのが現状である。水利権に関しても明確な法的な裏付けがあるとはいえない。
 こうした水循環にまつわる縦割り行政の弊害が指摘されるなかで、基本法による統合的かつ横断的な水資源・循環の効率的な運用がようやく始動することになる。
 今回の基本法は超党派の「水制度改革議員連盟」(代表・石原伸晃環境相)が策定したものだが、その背景の一つには地下水の開発を目的とする外資による森林買収の増加もある。林野庁によると、2005年以前はほとんどなかった森林買収が、06-12年で68件、801ヘクタールに増加している。北海道が中心で、中国資本による買収が多い。
 今回の基本法はこうした問題点を整理しながら、統合的な水循環戦略を構築しようというもの。基本計画の早急な策定を期待したい。


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