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校長“責任放棄”30年 校内人事、教員互選を黙認 全校調査へ

産経新聞 4月12日(土)15時6分配信

 本来、校長が権限を持つべき学校内人事を教員選挙で決めていた−。大阪市生野区の市立中学校で判明した異例の規定。教員による実質的な人事権掌握については文部科学省も教育専門家も「不適切」と指摘するが、歴代の校長は沈黙を続け、外部から入った公募校長も異議を唱えたが、規定を廃止することはできなかった。教育委員が指摘したことで市教委も重い腰を上げ、全市立学校約460校の調査に乗り出すことを決めたが、市教委幹部は「複数の校長から選挙の存在を聞いた」と話しており、事態が深刻化する可能性も出てきた。

 ◆公募校長が異議

 「何の責任もない教員が選挙で人事を決めるのは民主的でもなんでもなく、秩序を乱す。感覚が狂っている」。市役所で9日に開いた定例会見で、橋下徹市長は嫌悪感をあらわにした。

 生野区の市立中学校では、30年以上前から教務主任や生徒指導主事などを教員の選挙で選ぶ−との規定が存在していた。関係者によると、「民主的な校内人事」を目的とする規定は文書で連綿と受け継がれ、校長は選挙結果に基づき人事を決めてきたとされる。

 学校教育法37条は「校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定めており、文科省は「校内人事は校長の権限で行われなければならない」とする。規定は法を骨抜きにするが、歴代校長は沈黙を続けた。

 異議を唱えたのは公募で平成25年春に着任した元新聞記者の男性校長。同年秋、規定の廃止を目指し市教委に助言を求めたが、市教委の動きは鈍かった。

 ◆市教委も任せきり

 市教委は学校管理に関して命令や指示を行えるが、「規定は不適切。無視して校長が人事を決めればいい」「教員の理解を得ながら進めた方がいい」などとして対応を校長に任せた。校長は教員と対立した末、選挙は行わず、全教員から意向を聞き最終的に人事を決めた。規定には手をつけなかった。

 当然、校長と教員たちの関係は悪化。教員や保護者から「独断的な学校運営」などの苦情が出て、市教委事務局は一時、校長の更迭を検討する事態となり、最終的に副校長を配置した。その過程で、教育委員が「規定について全校の状況を調べる必要がある」と指摘、調査が決まった。

 「校長の学校運営をサポートするのが教育委員会。規定の存在を認識しながら校長に任せきりにしたことは、責任を放棄している」

 教育評論家の小林正氏は市教委の応対を「あり得ない」と批判する。

 ◆同規定、他校にも?

 同様の規定に基づく選挙は、他校でも行われていた可能性があるという。ある市教委幹部は「複数の校長から選挙を『利用している』という話は耳にしていた」と漏らす。

 この幹部は「教員の総意という形をとることで、円滑に学校運営ができる側面もあるのでは」と推測。だが小林氏は「校長は学校の管理運営が仕事。人事を選挙に委ねるのは職務放棄に他ならない」と指摘する。

 小林氏によると、30年ほど前までは全国各地で教員の労働組合の力が強く、校内人事にも深く関与していたという。

 教員が事実上の人事権を持つ危険性について、小林氏はこう警鐘を鳴らす。

 「人事権の掌握は組織の管理運営の最大の武器。教員による偏向教育などの問題が起きても、校長には止められなくなってしまう」

 市教委では全校調査をした上で、必要があれば規定廃止の指示など対応を取っていくとしている。

最終更新:4月12日(土)19時3分

産経新聞

 

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