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【暮らし】

<はたらく>もっと大切に働くルール (下)雇用責任

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 けがや商品破損など、職場でトラブルに遭った場合は、どうすればいいか。そんなときのためにも、働く者を守るルールはある。知っているか知らないか、いざというときにこの差は大きい。数々の相談に乗ったプロに聞いた。 (三浦耕喜)

 アドバイスするのは個人加盟労組「プレカリアートユニオン」(東京都渋谷区)の清水直子書記長。十月に「知らないと損するパート&契約社員の労働法」(東洋経済新報社)を出版した。

 職場のトラブルでありがちなのは、商品や備品の破損。「飲食店では多い。皿やコップを割るのはもちろん、中には食い逃げの被害も、給料から引かれるというケースもある」と清水さんは言う。

 だが、このような天引きは、賃金の全額支払いを定める労働基準法の原則に反する。事前に弁償する旨の誓約書を書かされることもあるが、そもそも弁償を前提にした労働契約は結べない決まりだ。

 「人を雇って利益を上げている以上、事業に伴うリスクは使用者が負うのが筋だからです」と清水さん。よほど重大な過失や、故意の場合は労働者の責任を問えるが、「皿を割ったくらいは重大な損害と言えない」と言う。

 けがも仕事に響くトラブルだ。職場での事故は労災保険が適用されるが、プライベートなけがや病気の場合でも、会社の健康保険に入っているかいないかで、大きく異なる。「パートタイマーやアルバイト、契約社員でも資格がある場合があるので、注意してほしい」と清水さんは呼び掛ける。

 最も違うのは、会社の健康保険なら休業中に「傷病手当金」が支給されること。給料の三分の二が出る。国民健康保険にはない制度だ。働けなくなったら、たちまち生活に困るリスクを避けられる。

 パートや契約社員でも、契約期間が二カ月以上で、一日または一週間の労働時間と、一カ月の労働日数の両方がフルタイムで働く正社員の四分の三以上であれば、雇用主には健康保険に加入させる義務がある。清水さんは「保険料は労働者も分担するが、入っていないと、いざというときに損をするのは働く側だ」と言う。

 失業した時に頼りとなる雇用保険は、さらに間口が広い。三十一日以上の雇用見込みがあり、一週間に二十時間以上働いているなら加入条件を満たす。「中には所定労働時間を二十時間未満にして、加入させないようにする事業主もいるが、実績で加入できるので、『週二十時間』には気を付けてほしい」という。

 正社員との間に不合理な差別をすることも、今年四月に施行された改正労働契約法の二〇条で禁止された。

 具体的には、正社員だけに交通費や住居費を支給する、慶弔休暇を認める、社員食堂を使わせる、仕事に必要なマスクや安全靴を支給する、などが違法となる可能性が高い。

 清水さんは「働く者を守るルールについて、雇う側は『聞かれなければ黙っている』という態度が少なくない。知らなければ、都合よく働かされかねない」と言う。

 実際に会社相手のトラブルを解決するには、働く側の立場は弱い。労働基準監督署などの機関や、個人でも加盟できる労働組合などで相談するのがよい。

 

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