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鳥取連続不審死 上田被告、控訴審で沈黙破る

「矢部さん車で去った」

 鳥取連続不審死事件で、男性2人に対する強盗殺人罪などに問われ、1審・鳥取地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けた元スナックホステス上田美由紀被告(39)の控訴審初公判が10日午前、広島高裁松江支部で始まり、上田被告が被告人質問に答えた。上田被告は1審の被告人質問で黙秘したが、自ら事件当時の状況を語る方針に転換した。弁護側は強盗殺人罪2件について1審同様、「被告は関与していない」と無罪を主張。検察側は被告側の控訴を棄却するよう求めた。

 塚本伊平裁判長は冒頭、弁護側申請の被告人質問を実施するとし、「(被告人質問をするべき)やむを得ない事情はないと考えたが、事案にかんがみ、採用する」と述べた。

 弁護側は、鳥取県北栄(ほくえい)町の海岸で水死したトラック運転手矢部和実さん(当時47歳)について質問。1審判決は、上田被告が矢部さんから借金返済を求められていたと指摘したが、上田被告は、自分ではなく事件当時に同居していた男性元会社員(50)=詐欺罪で服役し、出所=だったとした。

 矢部さんが行方不明になった2009年4月4日には、矢部さんと車で現場付近に行ったと説明。元会社員との関係などが話題になって矢部さんが怒りっぽい口調になり、車で走って行ったとした。上田被告は「それが矢部さんを見た最後だった」と主張した。

 その後、元会社員を呼び出し、車にかばんを置いてきたと伝えると、元会社員がその場を離れた。約20分で戻ってくると、ズボンが太もも付近までぬれ、かばんも湿っていたという。

 元会社員の車には矢部さんの服があり、ぬれていたとも供述。「(元会社員に)何回も理由を聞いたが、『まあいいけえ』と言うばかりだった」と答えた。

 この事件では、犯行の目撃証言など直接証拠がなく、1審で検察側は状況証拠を積み上げて立証。昨年12月の1審判決は、元会社員証言や被害者から検出された睡眠導入剤の成分などから「殺害する機会があったのは被告だけ」と結論付けた。

被告人質問はっきり回答

 1審は罪状認否と最終意見陳述で「やっていません」と答えた以外、検察官が約60項目を約40分間聞いた被告人質問でも何も答えなかった上田被告。約1年ぶりに姿を見せたこの日の法廷では一転、被告人質問などにはっきり答えた。

 白いブラウスにグレーのカーディガン姿で、肩までの髪は後ろでまとめていた。塚本裁判長から名前を尋ねられると、少し高い声で「上田美由紀です」と答え、裁判長から座るように促されると「ありがとうございます」と言った。

 弁護側の被告人質問で、矢部さんからの経済的な援助に関して問われると、「私が困っていることを知って渡してくれました」などと、時折声を詰まらせながら陳述。矢部さんについて「一緒に住もうと言われた。すごく優しくて、買ってきたおすしを、一緒に食べようと言ってくれるような人だった」とも説明。被告人席ではせきをしたり、タオルで鼻をぬぐうなどしていた。
鳥取連続不審死事件 

 1審判決によると、上田被告は2009年4月、トラック運転手矢部和実さん(当時47歳)に睡眠導入剤などを飲ませて鳥取県北栄町の海岸で水死させ、借金270万円の返済を免れた。同年10月には、電気工事業円山秀樹さん(同57歳)を鳥取市の摩尼川で同様の手口で水死させ、家電製品代53万円の支払いを逃れた。このほか、元同居人の男性元会社員(50)と共謀したとして詐欺や窃盗罪など16件でも有罪とされた。1審の裁判員裁判は、裁判員の選任から判決まで75日間に及び、東日本大震災で中断されたケースなどを除けば、過去2番目の長さだった。

2013年12月10日  読売新聞)
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