黙秘を貫いていた一審の公判から一転し、上田美由紀被告(39)が事件についての詳細を語り始めた。鳥取連続不審死事件の控訴審第1回公判があった10日の広島高裁松江支部。法廷に出席した遺族らも、じっと被告の言葉に耳を傾けた。

 法廷に現れた上田被告は白シャツにグレーのカーディガン、黒のスカート姿。弁護士に被告人席に移るよう促されると、息を一瞬大きく吐いた。弁護側の被告人質問ではまず、トラック運転手矢部和実さん(当時47)の事件を話し始めた。ハンカチを口にあてながら、一審判決の認定事実をよどみなく否定した。

■被害者から借金返済を求められていたか■

 「私とつながっていたかったからだと思う。借用書があれば、私と会うことができるから」

 一審が認定した殺害の動機は、借金返済を免れるため。この傍証となったのが、矢部さんが作った270万円の借用書だ。これについて上田被告は、交際していた矢部さんが、自分に執着があったからだと説明。返済を迫られたことはなく、借金というより、お金をもらったという認識だったと述べた。