政治【酒井充の政界××話】欺瞞とご都合主義に満ちた特定秘密保護法への批判+(4/5ページ)(2013.12.8 18:00

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【酒井充の政界××話】
欺瞞とご都合主義に満ちた特定秘密保護法への批判

2013.12.8 18:00 (4/5ページ)酒井充の政界××話
参院本会議で特定秘密保護法が採決され、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立。拍手する与党の議員=6日夜、国会・参院本会議場(酒巻俊介撮影)

参院本会議で特定秘密保護法が採決され、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立。拍手する与党の議員=6日夜、国会・参院本会議場(酒巻俊介撮影)

 平成17年の人権擁護法案をめぐる動きも、そうだった。

 当時の小泉純一郎政権は、出生や国籍などを理由とした差別、虐待による人権侵害を救済するための適切な救済措置などを目的とした法案を国会に提出しようとした。法案では、人権侵害の定義があいまいで恣意的に運用される余地が大きい上、新設する人権委員会には外国人の就任も可能で、しかも令状なしの捜索といった強制権まであった。

 つまり、ある人が「近所の人に人権を侵害された」と訴えれば、一方的に令状なしで強制捜査される可能性があった。これこそ恐怖社会だ。外交や防衛、テロ行為やスパイの防止などに限定した特定秘密保護法より、よほど一般人が影響を受ける「恐れ」があった。産経新聞は一貫して反対したが、法成立を主張する他社から軽蔑か、あるいは無視されながら、ほぼ孤軍奮闘だったことを実体験として覚えている。

 メディアの取材による「被害」も救済対象になるということで、表現の自由が侵される懸念もあった。朝日新聞はメディア規制には反対したものの、「問題のある条文を修正したうえで、法案の成立を急ぐべきだ」との論陣を張った。恣意的な運用の「恐れ」は問題視しなかった。特定秘密が恣意的に指定される懸念を強調する今の立場とは、ずいぶん違う。

 結局、自民党内でも安倍晋三幹事長代理(当時)らの反対で法案は国会に提出されなかった。民主党政権でも亡霊のように「人権救済機関設置法案」と名を変え、野田佳彦政権で閣議決定までされたが、衆院解散もあって法案提出には至らなかった。

 人権擁護法案の成立は急ぐべきだと主張した朝日新聞は、特定秘密保護法案については「慎重な審議」を求めた。だが、1年前まではどうだったか。多くのメディアは、民主党政権の「決められない政治」を批判した。今度は何かを決めようとすると、掌を返したように「数の横暴だ」「強行だ」「なぜ急ぐのか」「拙速だ」と批判する。反対派による反対のための常套句だ。議会での多数決を横暴というならば、彼らの大好きな日本国憲法の軽視になるというのに。

このニュースの写真

参院本会議で特定秘密保護法が可決、成立し、一礼する法案担当の森雅子少子化担当相=6日夜
参院本会議で特定秘密保護法が可決、成立。抗議の靴を議場に投げ入れる傍聴者(右)と傍聴席から投げ込まれた靴を手にする衛視=6日夜、国会・参院本会議場
参院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案採決に抗議し、中川雅治委員長に詰め寄る野党の理事 =5日午後、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)
安倍晋三首相は党首討論で「議論はなされた」として特定秘密保護法案の早期成立を求めた=4日午後、衆院第1委員室(酒巻俊介撮影)

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