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消費増税を財政改革の出発点に

2013/10/2付
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 安倍晋三首相が予定通り消費税増税を決断した。5兆円規模の経済対策で景気を下支えしながら、5%の消費税率を2014年4月に8%まで引き上げる。

 17年ぶりの消費税増税を実行し、財政再建の一歩を踏み出すことを評価したい。日本経済の成長基盤を強化しつつ、さらなる歳出・歳入改革も進めるべきだ。

 4~6月期の実質成長率は前期比年率3.8%で、1~3月期の4.1%に続く高成長となった。9月の日銀調査では、大企業製造業の業況判断指数がリーマン・ショック後の最高を記録した。

法人減税で成長強化も

 アベノミクスの効果もあって、日本経済は着実に回復している。米国の財政運営を巡る混乱や新興国の景気減速といった不安は残るとしても、増税に踏み切る環境が整ったとみていいだろう。

 本格的な財政再建が避けられないにもかかわらず、日本はその努力を怠ってきた。国と地方の長期債務はいまや1000兆円に上る。次の世代に過大な借金を負わせ続けるわけにはいかない。

 首相は記者会見で「経済再生と財政健全化を同時に達成するほかに道はない」と語った。景気の腰折れを避ける対策を講じ、15年10月に予定している次の増税につなごうというのは妥当である。

 対策の柱に据えたのは企業の活力を引き出す法人税減税だ。設備投資や給与を増やす企業向けの政策減税を実施する。復興特別法人税を1年早く打ち切り、法人実効税率を14年度に38%強から35%台に下げることも検討する。

 政策減税も景気のてこ入れには一定の効果があるだろう。しかし国内企業の競争力を高め、日本の立地・投資環境を改善するには、主要国よりも高い実効税率の引き下げに踏み込む必要がある。

 復興特別法人税の廃止はその一歩だが、これだけで終わらせてはならない。15年度以降の課題となる実効税率の一層の引き下げを実現するため、財源の確保を含めた検討作業を急ぐべきだ。

 「企業に法人税減税を与え、個人に消費税増税を迫るのは不公平だ」との不満は強い。「東日本大震災の被災地復興を軽視している」という批判も出ている。

 だが景気の本格回復に欠かせない設備投資や雇用、賃金を生み出すのは企業だ。その負担を恒久的に軽減し、日本経済を底上げすれば、個人にも恩恵が及ぶ。

 復興予算については、被災地以外の事業への流用も表面化している。25兆円と見積もった復興経費の妥当性をこの機会に検証し、復興特別所得税にも軽減の余地がないかどうかを探ってほしい。

 法人税減税にこだわった安倍首相の期待にこたえ、投資の拡大や賃上げに踏み切る企業自身の努力も望まれる。政府が過剰な圧力をかけて減税の見返りを迫るのは問題だが、企業がいたずらに手元資金を積み上げるのでも困る。

 心配なのは財政規律の緩みである。安倍政権は防災・減災や東京五輪開催のための公共事業も対策に盛り込んだ。国民の負担増を緩和するという名目で、不要不急の支出を膨らませてはならない。

 低所得者や住宅取得者に現金を給付し、負担感を和らげるのは理解できる。所得や資産などの状況を適正に把握し、ばらまきを排除するよう注意してほしい。

 もちろん今回の消費税増税だけで財政を再建できるわけではない。税率を10%まで上げても、国と地方の基礎的財政収支を20年度までに黒字化するという目標は達成できない。歳出抑制と歳入確保の努力を継続する必要がある。

歳出抑制の努力足りず

 今の安倍政権に足りないのは歳出抑制の覚悟だ。その本丸は社会保障費の効率化にある。高齢化の進展などに伴って自動的に膨らむ年1兆円規模の「自然増」を放置したままでは、消費税率を2ケタに上げても追いつかない。

 余裕のある高齢者には給付の抑制と応分の負担を求め、現役世代の重荷を減らす抜本的な年金・医療・介護の制度改革が欠かせない。その具体策を示し、歳出抑制の手段を定めないと、財政運営への信頼感は高まらないだろう。

 財政再建と成長を両立できてこそ、日本経済の真の再生につながる。金融緩和と財政出動の成果だけに寄りかかるのではなく、成長戦略の具体化も進めるべきだ。

 医療や介護、農業などの規制緩和は道半ばである。容積率の緩和や混合診療の拡充などを特例的に認める「国家戦略特区」の詰めも急ぎたい。できるだけ自由度の高い環太平洋経済連携協定(TPP)の締結にも努力してほしい。

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