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社説

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秘密保護法案 危険性に変わりはない(9月24日)

 政府・与党が、機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案に、国民の「知る権利」や報道の自由の尊重規定を盛り込むことを検討している。

 法制定がそれらを侵害するとの批判や、連立政権を組む公明党の意向に配慮したものだ。

 だが、「知る権利や報道の自由を妨げない」といっても明確な基準があるわけでなく、歯止めにはならない。法案の危険性を国民の目からごまかすカムフラージュにすぎない。

 秘密保護は国家公務員法など現行法で対応できる。安倍晋三首相は法案の国会提出を取りやめるべきだ。

 法案は外交や防衛に関する機密のうち特に秘匿の必要性がある情報を「特定秘密」に指定し、公務員が漏えいした場合、最高で懲役10年を科す。行政機関と契約を結び特定秘密に接する民間業者も同様に罰する。

 対象となる情報の内容は、例えば防衛では「自衛隊の運用」、外交では「外国との安全保障に関する交渉内容や方針」などと抽象的だ。

 「特定秘密」を指定する閣僚など行政機関の長が、恣意(しい)的に範囲を拡大し、行政にとって都合の悪い情報を隠蔽(いんぺい)することができる。

 特定秘密の有効期間は上限5年だが、何度でも更新でき、永久に秘密にしておくことも可能だ。特定秘密の指定や更新の妥当性を第三者がチェックする仕組みもない。

 国会議員も処罰対象であるため、秘密を知り得た議員が党内で議論したり専門家に意見を聞いたりすることはできす、国政調査権の侵害につながる。

 罰則は国家公務員法や自衛隊法の守秘義務違反(それぞれ最高で懲役1年と5年)よりはるかに重い。公務員側が萎縮して本来は公表すべき情報まで秘密にしたり、情報を出さない口実にしたりする恐れがある。

 記者などが情報を得るため公務員をそそのかすなどした場合も処罰対象となる。記者に限らず、研究者や一般市民が正当と思う方法で行った調査などでも、そそのかしがあったと解釈されれば処罰されてしまう。

 これだけ問題の多い法案だ。とってつけたように「知る権利」や報道の自由の尊重を盛り込んだところで危険性が変わらないのは明白だ。

 政府は一般から法案への意見を求めるパブリックコメントを通常の半分の15日間で打ち切った。国民の批判が拡大するのを恐れたのだろう。

 そもそも国が持っている情報は国民の共有財産だ。

 秘密にするのは、公開により国民の命に危険が及ぶものなど必要最小限とし、それ以外は公開するのが民主主義の原則だ。それをないがしろにする悪法は断じて認められない。

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