特集ワイド:谷野作太郎・元駐中国大使に聞く/下 「河野談話」「村山談話」 「痛み」日本人として共有を

毎日新聞 2013年08月28日 東京夕刊

 中国、韓国との関係が悪化する中、従軍慰安婦に関する「河野談話」(1993年)、「痛切な反省と心からのおわび」を表明した戦後50年の「村山談話」(95年)を否定するかのような動きがある。二つの談話作成に内閣外政審議室長として関わった谷野作太郎・元駐中国大使(77)が経緯などを明かす。【浦松丈二】

 ◇歴史の歪曲や開き直り 国の品格、誇り傷つける

 −−「河野談話」には「証拠もないのに日本軍の強制連行を認めている」との批判もある。他方、これは誤解とする向きもあるようですが。

 谷野 おっしゃるように「河野談話」を批判する人は、談話に書いていないところまで内容を膨らませ、その点を批判している。おかしなことです。女性の多くは集められた後、軍と行動を共にすることを余儀なくされ、前線で厳格な軍の管理下に置かれ、行動の自由はなかった。まかないや看護師の仕事と言われ、連れて来られたケースも多々ある。現地で現実を知り「話が違う」と逃げ帰ろうとしても、そこは前線です。あの談話はそういう世界を記述したものなのです。

 私の韓国の友人。この人は日本の学校を出た人で私と同じ年ですが、彼は「子供のころ、自分の村では年ごろの娘を外に出すなと言われたものだ。それでも彼女らが横付けされたトラックに乗せられ、泣き叫びながら連れ去られていくのを目にしたことがある。そこにはオマワリやヘイタイもいた……」と。竹島(韓国名・独島)の話では冷静さを保つ彼も、この話になると大変感情的になります。

 −−元慰安婦の女性に償い金を払う「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)の設立(95年)にも奔走なさいましたね。

 谷野 日本は「女性基金」を設立し、オールジャパンで精いっぱいの対応をしてきました。韓国だけは「日本国としての謝罪と補償」を要求する市民団体の圧力に直面し、「基金」の事業は中途半端で終わらざるをえなかった。しかし、「謝罪」は「河野談話」や慰安婦だった人たちにお渡しした総理書簡に表明されているし、お渡ししている償い金の半分以上は日本政府支出によるものです。

 韓国政府も当初、「基金事業のスタートをもって問題は解決した」と言っていたんですが、最近になって「未解決」と言い始めました。突然「情」(韓国で言えば「恨」の感情)が頭をもたげた。

 もとより従軍慰安婦や戦後補償の問題は「カネですべてすんだんじゃないか」と開き直れる世界ではない。日本側の所作で心身に深い傷を負った人たちの「痛み」を日本人として共有することこそ最も大事なことだと思います。

 −−いわゆる「村山談話」

を出した経緯は。

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