経営者の感覚で言うと、金融緩和は効かないのではないか。
日本銀行が9月19日の金融政策決定会合で資産買い入れ基金を10兆円増額する追加金融緩和を決めた。
「国内景気の回復は、半年ほど後ずれする」。白川方明総裁は決定会合後の会見でこう話した。国内景気回復の遅れが日銀の背中を押したのだろう。欧州の債務危機や中国の成長鈍化などを背景に、日本の輸出や生産にブレーキがかかり始めていることを日銀が懸念した、と解説するのが一般的。
しかし、緩和したカネは実体社会にしみこむだろうか。
残念ながら答えはノー。
いまそれでなくともカネ余りの状態。金利も安い。企業がカネを借りようとして困る状況にない。
むしろ困るのは投資先だ。国内に店舗をどんどん増やす環境か。工場を建てる状況か。そうではないだろう。
そもそも人がものを欲している状況にないのだから致し方ない。家も、車も家電製品も社会に満ちあふれている。可処分所得も右肩上がりの状況にはない。そうなれば、当然、ものを買わない。企業は投資しない。この悪循環にある。
だから、金融を緩和しても企業はカネを借りない。
世界中のだぶついたカネは新興国に今向かっている。カンボジアでレクサスを見るようになった。バングラデシュでも金持ちを街で見かけるようになった。一方で、カンボジアでもバングラデシュでも貧しくまともな教育を受けられない人はまだ多くいる。
どうすれば国内の実体経済にカネが向かうのか。世界の富の偏在は解消されるのか。いまのところ、その答えは持ち合わせていない。いい知恵はないだろうか。