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特集社説2013年05月27日(月)

TPP交渉初参加へ 極めて不利な条件での船出だ

 ペルーで行われていた環太平洋連携協定(TPP)拡大交渉会合で、次回から日本の参加が認められた。年内妥結を目指す各国を相手に、日本は短時間での交渉を迫られることになる。いよいよ政治の覚悟が問われよう。
 参加各国は、巨大な市場圏の構築を見据えハイペースで交渉を進めている。それだけに、出遅れた日本が不利になるのは避けられまい。
 TPP参加については、いまだに国内世論が二分されている。農業や金融、医療、保険分野などで予想される危機をどう回避するのか。日本の産業構造を左右しかねない協定だ。拙速な妥協は避けるよう指摘しておきたい。
 今会合では、検疫や電子商取引、越境サービスなど多くの分野で「重要な進展があった」(ペルーのバスケス主席交渉官)。21分野の協定草案中、半分程度が協議された。
 7月15〜25日にマレーシアで行われる次回会合では、さらに多くの分野で妥結に向けた協議が行われる。日本は米議会の手続きを待たねばならないため、終盤の3日間だけの参加となる。この期間で日本にできるのは、見解の表明と独自の提案のみだ。
 見切り発車はしたものの席には着けず、交渉内容は日本を置き去りにしたまま加速しているのだ。政府は、極めて厳しい状況にあることを認識しなければならない。
 実質的に日本が参加できるのは9月会合からだ。コメなどの重要品目を関税撤廃の例外として求める方針だが「聖域」の設定に抵抗感を持つ国は多い。過去には、後発国のカナダやメキシコが、先発国から交渉済みの内容見直しは不可能と通告されている。日本が自国に有利な提案を通すのは至難の業だ。
 そもそも日本は当初から、米国への追随姿勢だった。案の定、事前交渉では、日本からの輸入車にかける関税維持で合意している。ましてや巨大市場として輸出増が見込める中国やインドが参加しない協定にメリットは多くない。
 むろん、自民党が交渉参加の前提としたように「聖域が確保できない場合は脱退」という選択肢もあり得る。しかし国際社会の中で無責任な行動を取ることは、信頼を損なうことにもなろう。
 参加国からも、今年中での交渉終結の政治的意志を「日本も共有していると確信している」(バスケス氏)とくぎを刺されている。今さら引き返すことは不可能なのだ。
 関税撤廃となれば農林水産業所得は約12%、人口は146万人減るとの試算もある。譲れない「聖域」の確保に向け日本はどう切り込み、いかに巻き返しを図るのか。
 国内産業が崩壊しないための交渉戦略を、国は今こそ国民の前に提示すべきだ。

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