住民訴訟、勝訴しましたが・・

寝耳に水、ということはこのこと。3年前の5月、武雄市民病院の民間移譲に関し武雄市を被告とする住民訴訟が提訴されました。その額、なんと、21億円。

裁判は2年10か月に及ぶ審理を経て本年3月29日に判決が言い渡されました。判決は原告の主張を退け、市民病院の民間移譲に関する市の事務処理に違法性等は認められないとする内容。そして本日(4月13日)の新聞報道によれば、原告は控訴を断念したとのことです。

この裁判を振り返るとき、住民訴訟制度の問題点を2つ感じたので、述べたいと思います。

ひとつは、「濫訴」という問題です。裁判を起こすには、通常、費用がかかるものです。今回の住民訴訟で原告は、裁判所に手数料を納付しています。民事裁判を起こそうとする場合は、損害賠償請求額に応じた手数料を納付しなければなりません。しかし、住民訴訟においては、損害賠償の請求額に関わらず手数料は一律1万3千円とされています。原告は訴状において、武雄市は21億6121万531円の損害賠償額を市長(私)に請求するよう求めていました。仮にこの訴えが民事訴訟による提訴であれば、535万円の手数料が必要となるのですが、原告は1万3千円の手数料を納付するだけで提訴することができたのです。住民訴訟は、一般の民事訴訟と比較し提訴しやすいといわれます。この「提訴しやすい」ことが、根拠のない多額の損害賠償額を請求する今回のような住民訴訟を提訴させる誘因になったのではないかということです。

ふたつには、勝っても弁護士費用の請求ができないことです。市は提訴を受け、応訴のため訴訟代理人として弁護士を立てました。弁護士には着手金を支払わなければなりません。弁護士費用は、原告が訴状で求めた損害賠償請求額をもとに市と弁護士との間で協議のうえ決定しました。目安となる基準より大幅に減額していただきましたが、市は着手金として1260万円を支払いました。財源は市民が納めた税金です。裁判では、原告が敗訴し市が勝訴したものの、市が支払った弁護士費用を原告に請求することはできないとのことです。裁判には勝ったものの、市民は損をしただけで終わったようなものです。さらに、着手金しかお支払いしていませんが、今後、裁判全般に要する経費等をお支払いしますが、これもまた、市民皆さんの税金からとなります。

住民訴訟の制度は地方自治法第242条の2に規定され、住民に地方公共団体の機関または職員の違法な行為を是正したり、地方自治体に損害を与えたものに対し損害賠償を請求するように当該自治体の機関に請求する権利を認めているものです。いわば、地方自治体の行政機関が行う事務の執行について、監査請求の棄却等を前置の条件としながらも、住民が裁判を提起する権利を法をもって保障したものといえます。

地方自治法の趣旨は理解できるものの、今回のように根拠のない損害賠償額を請求する住民訴訟が起こされ、長い期間応訴の対応を余儀なくされる行政事務の負担と弁護士費用の負担は、取り戻すことのできない市民の負担となってしまった現実があります。いったい誰のための住民訴訟制度なのか、法の趣旨が正当に実現されるためには、この際、制度の見直しが必要なのではないかと思います。あえて書きたいと思いますが、市民病院の民間委譲など極めて困難な行政課題に、首長は接することが少なからずあるんだけど、ほとんどの首長は、この住民訴訟を恐れ、尻込みします。もちろん、首長は結果に対する責任を負う必要がありますが、あくまでも結果。今回で言えば、結果が出る前の、住民訴訟による首長の吊し上げと思いますよ、本当に。

さらに今回の住民訴訟で看過できないことがあります。それは、日本共産党の武雄市議会議員2名(平野邦夫氏、江原一雄氏)が、積極的に原告を支援してきたことです。原告が開いた提訴の記者会見に同席するなど、2名の市議は前面に出た支援をしてきたのです。自らも議決の場に参加しながら、守らなければならない市議会の議決事項を無視した議員の行動は、結果として市と市民に多額の負担を与える結果に終わったのです。両市議の責任ははかりしれなく重いといわざるを得ません。彼ら2人には辞職を求めたいと思います。行為には責任が伴います。政治家だったら尚更そうです。

また、社団法人武雄杵島地区医師会の責任も重い。市民病院の民間委譲に際して、リコールは巻き起こすわ、出直し選挙に際しては、医療行為をほっぽらかして、看護師を引き連れ、マイクを握り、あることないこと、デタラメ言う。しかし、誰も責任を取らない。当時も今の医師会長の古賀さんは、「武雄市長が、池友会に民間委譲するのであれば、共産党と組んでもリコールを起こす。」と僕に明言されていました。もっと、責任が重いのは、新聞の折り込みちらしに、私が市民病院の民間委譲をするのであれば、小学校での予防接種、問診等を止めるという重大な決意を掲げ、市民を不安に落とし込めたこと。子どもたちを人質に取るのは、テロリストと同等だ。これを主導した中島医師がどうなっているのか知らないし、興味もありませんが、少なくとも、古賀医師会長の辞任を求めます。行為には責任が伴います。トップは尚更そうです。

次にマスコミ。そりゃまあ、佐賀新聞を中心にひどい報道でしたよ。朝日新聞も酷かった。佐賀新聞にいたっては、新武雄病院の開所式で、来賓の中尾社長から、市民病院の民間委譲のプロセスで、公衆の面前で罵倒された。これを機に、謝罪してほしい。ちなみに、両論併記を心がけてくれたのは、西日本新聞。西日本新聞は僕にも厳しかったが、医師会にも厳しかった。

佐賀新聞は、担当記者もデスクも不勉強の上に、取材が浅い。両論併記もしてくれなかった。まあ、マスコミはそんなものでしょうから、今回は住民訴訟はある意味節目になるので、解説記事をちゃんと書いてほしい。お願いしますよ。僕が全部正しいことをしたとも思えないし、それは、首長パンチにも書いています。

最後に、武雄市民の皆さんへ。まずお詫びします。市民病院問題が勃発して7年が経たんとしています。ご不安・ご心配を与えた責任は、市政を預かる私にあります。その中で、新武雄病院は、いろいろ課題がありながら、一つ一つ丁寧に解決し、今では、武雄市のみならず近隣自治体にとって、無くてはならないものになっています。今までは助からなかった命が、多く助かっています。また、赤字垂れ流しの市民病院から、黒字に転化し、その黒字分を、福祉や子育て関係の政策にまわしています。雇用も、旧市民病院時代は100人だったのが、看護・リハビリの学生を含めると600人近くにふくれあがっています。多くは武雄市にお住まいになっています。感謝します。

結局、この住民訴訟で、勝者は誰もいない。これが僕の結論ですが、これまでも、これからも武雄市民福祉の維持向上を考え、行動して参ります。
by fromhotelhibiscus | 2013-04-13 10:30 | Trackback | Comments(0)
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