水説:中国台頭の終焉=潮田道夫

毎日新聞 2013年02月06日 東京朝刊

 <sui−setsu>

 中国大使を務めた外交官が「経済産業省出身の中国ウオッチャーとして最優秀」とべた褒めなのが津上俊哉さんである。その津上さんが「中国台頭の終焉(しゅうえん)」(日本経済新聞出版社)という刺激的なタイトルの本を出版した。

 書名どおりの内容。世間では経済規模で早晩中国は米国を追い抜くということになっているが「それはない」と論じたものだ。条理尽くして説得的である。

 経済協力開発機構(OECD)は昨年、米中逆転は3年後の16年という推計を発表した。17年説や20年説などもある。世間はこれを当然視する。だが、津上氏はそれを敢然と退ける。なぜか。

 ひとつは人口動態である。中国の合計特殊出生率は最近の調査で1・18であることが明らかになった。日本でさえ1・39(11年)だから、これは異常に低い。専門家には衝撃的な数字だったようだ。

 中国の少子高齢化は想定以上に早く到来し、生産年齢人口(15〜64歳)は13年をピークに減少に転じる。今後は00年代の中国経済の「ラストスパート」を支えた人口構成が逆の効果をうみ、成長引き下げ圧力が増大する。

 これをハネのけるには生産性を上昇させる構造改革が必須だが、津上氏はその点、悲観的である。国営企業が市場を占拠し民間企業が育たない「国進民退」現象が進行している。それと企業化した地方自治体の横暴。これらが利権の巣窟となり非効率が温存・拡大しつつある。ここにメスを入れるのは難しい。

 津上さんは中国の潜在成長率は5%台に低下しており、他方の米国が2%とすると、20年に至っても米国の3分の2になるだけで、その後も人口動態から見てついに米国を追い抜けない、と説く。

 中国が経済規模で米国を追い抜くかどうか。それはどうでもいいことに見えるかもしれないが、そうではない。そのことが地域の外交・安全保障に大きな影響を与えたからである。わたしもまったく同意見だ。

 中国ではそれを背景に対外強硬論が噴出し、周辺国も身構えるようになった。日本の保守派・強硬派の心理の底にあるのは「中国がどこまで強大になるか底が知れない」という不安感である。

 だが、実際は「中国が米国を抜くことはない」ということであれば、緊張と対立の前提が崩れるであろう。津上さんが「中国台頭の終焉」を書いたのはそれを期待したからだそうである。

 中国は都市化でもっと成長するなどの楽観論もことごとく論破している。近ごろ、必読の1冊。(専門編集委員)

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